ロレーヌ、海底洞窟(B1F)へ潜る
クラン加入メンバー視点。
暫くの間、更新が月、水、土の週三日を予定。
休息日が終わり、今日は三日目の海底洞窟だ。あたしは盗賊Lv19となり、急所攻撃がLv5まであがっている。
……そして、何故か鑑定Lv3を習得してた。ボスの説明では、素材や魔物の知識が増えたかららしい。
ちなみに、急所攻撃、素材回収、盗むのスキルに、僅かながら成功補正が掛かるとか。
良くわからないけど、便利なので深く考え無い事にした。
「ロレーヌさん、ちょっと良いですか?」
「何かな、ボス……?」
朝の船内で、ボスが改まって話し掛けて来た。何となく嫌な予感がする……。
「そろそろ、狩りにも慣れましたよね? 短剣修練と回避のスキルを伸ばしませんか?」
「え、それって……」
盗賊の基本スキルだ。前衛として戦う為に、多くの盗賊が真っ先に習得する。
戦闘が嫌で取って無かったけど、今更取る様に言われるなんて……。
あたしがショックを受けていると、ボスが軽く微笑んだ。
「安心して下さい。ロレーヌさんを前衛にするつもりはありません。ルージュさんも居ますしね」
「へ……? それじゃあ、どうして……?」
前衛として戦わないなら、必要無いと思うんだけど……?
あたしが首を傾げると、ボスは真剣な眼差しで説明を始めた。
「ロレーヌさん、アサシンを目指しませんか?」
「ア、アサシン……?」
それって、暗殺とかするやつだよね……?
あたしに向いてるとは思えないんだけど……。
しかし、ボスは真っ直ぐに、あたしの目を見つめていた。
「ロレーヌさんは、正面から相手をするには不向きです。だからこそ、相手の背後に忍び寄り、気付かれる前に倒すスタイルが良いと考えています」
「……えっと、それって卑怯じゃないのかな?」
「魔物相手に綺麗事は必要ありません。……それに、今までもずっと、不意討ちをしてましたよね?」
「あ、それもそっか」
うん、ずっと気配を消して攻撃してたね。魔物を怒らせる為で、倒すって考えが無かったけど。
「これからは、弱い魔物は倒せる様になって行きましょう。そして、不意討ちに失敗した時を考え、回避能力も伸ばしておきましょう」
「ああ、それで短剣修練と回避のスキルなんだね」
ボスの説明に納得する。正面切って戦わないなら、今までのスタイルの延長でしか無いからね。
とはいえ、生き物を殺すのは、少なからず抵抗がある。孤児院でも、盗賊になってからも、何かを殺した経験が無いからだ。
「……でも、逃げられないよね」
あたしはチラリと、ボスの背後に目を向ける。
そこにはアンナちゃんが控えていた。ボスとあたしの事を、バッチリと監視している。
……いや、今は監視の事はどうでも良い。良くは無いけど、今は考える時では無い。
あたしが気にしたのは、これまで誰が手を汚したかという事だ。
あたし達のパーティーで、魔物を倒す役割はアンナちゃんだ。彼女の魔法が、殆どの魔物を倒して来た。
七歳の子に手を汚させて、自分は嫌とかクズ過ぎる。流石にそれは出来無い。それをしたら、院長先生に胸を張って会えなくなってしまう。
……あたしは覚悟を決めた。これからは、あたしも魔物を倒すのだ。アンナちゃんだけに、汚れ仕事をさせる訳にはいかない。
「わかったよ。あたしはアサシンを目指すね!」
「ええ、期待しています。頑張って下さい」
ボスは満足気に頷く。そして、あたしはボスの言葉に嬉しくなる。期待してるって言われちゃったね!
――しかし、その直後に悪寒が走る。背中がゾクゾクっとした。
「…………っ!?」
気が付くと、アンナちゃんの目があたしを捉えていた。
いつもの無感情な表情では無い。恨みや妬みを感じさせる、ほの暗い表情であった。
「な、ななな……何かな!?」
「…………別に」
フイッと目を逸らすアンナちゃん。そして、フラリと船室から出て行ってしまう。
その様子に呆然とする。しかし、ボスは楽しそうに笑い出した。
「ははっ。アンナは少し嫉妬したみたいですね。まあ、ライバルがいた方が、アンナの成長にも良いでしょう」
「いやいやいや! ライバルとか、勘弁してよ……! あたしの身が危険なんですけど!?」
冗談では無い。アンナちゃんの恨みを買うとか洒落にならない。下手をすれば、魔物と一緒に焼かれかねない!
しかし、ボスは楽しげに首を振る。
「アンナは賢い子です。仲間を傷付ける事はありませんよ。安心して、切磋琢磨して下さい」
「本当ですか……? もし、危なくなったら、助けて下さいよ……? 絶対に助けて下さいよ……!」
「はははっ。ロレーヌさんは心配性ですね」
いやいや、笑い事じゃないんですけど……!
う~ん、不安だ。ボスは何だかんだでシスコンだし。アンナちゃんに攻撃されても、じゃれてるだけとか言われそうだ……。
はあ……。取り敢えず、アンナちゃんの行動には要注意って事だね……。
地下の魔物は強かった。まず、攻撃が利き辛い。鱗や殻が固すぎるのだ。その上で、柔らかい急所は咄嗟にガードしてくる。
しかも、反応速度が地上階とは段違いなのだ。一撃入れて逃げる前に、相手の反撃が必ず入る。
ボスの支援魔法が無ければ、今頃あたしは傷だらけである。
早く、短剣修練と回避のスキルを覚えないとな……。
「それにしても……」
あたしはアンナちゃんに目を向ける。魔物を倒し終えたばかりなのに、涼しい顔でボスを見ていた。
相変わらず冴え渡る魔法である。ボスの攻撃も凄いんだけど、印象としては柔らかな動きなのだ。それに対して、アンナちゃんは鋭い動きである。
何をするにも、ボスは余裕を感じさせる。アンナちゃんは一切の無駄を削ぎ落とし、計算通りに目標を達成させる。
結果は同じでも、受ける印象は正反対である。
「おや、待望の魔物が現れましたね……」
ボスが楽しげに指をさす。その先には、巨大なヤドカリが歩いていた。
「メタル・ハーミットクラブ……」
金属を含んだ貝殻で身を守る魔物だ。高い防御能力を持ち、魔法に対する耐性も高い。あたしやアンナちゃんでは厳しい相手である。
あたしはチラリとボスを見る。ボスはルージュを足止めに向かわせると、ハスティールに何かの説明を行っていた。
どうやら、当初の予定通りに、ハスティールがアレの相手をするらしい。初めての実践相手がアレって、本当に大丈夫なのかな……?
しばらく見ていると、ハスティールがいつもの踊りを始める。そして、その短い踊りを終えると、リーダーが叫び出した。
「ルージュさん! ハスティールさんの元へ!」
ボスの言葉にルージュは駆け出した。短い時間とはいえ、一人で必死に戦ってたからね。
あたしはちゃんと見てたよ。お疲れ、ルージュ!
そして、ルージュがハスティールの横を通りすぎる。次の瞬間、予想外の出来事が起きた。
――ズガン!!
まず、ハスティールの姿が消えたのだ。残像を残して、フッと消えてしまった。
それと同時に、メタル・ハーミットクラブが吹き飛んだ。貝殻を爆散させて、遥か彼方へと飛んで行った。
けど、その考えが間違いだとすぐに気付く。
飛んで行ったのは貝殻だけ。本体は元の場所を中心に、ぐちゃぐちゃに散らばっていたからだ。
「うへぇ……」
グロテスクな状況に顔が引きつる。流石にこれはアンナちゃんに見せられないよ……。
そして、近くにいたアンナちゃんに目を向ける。彼女は顔をしかめていた。
「チッ……あの威力は危険……」
「え……!?」
今、舌打ちしてたよね……?
ふっとアンナちゃんと目が合う。彼女は急に表情を消した。それこそ、先程の言葉が嘘だったかの様に。
……もしかして、ハスティールもライバル認定されちゃった?
ハスティールを見ると、何故か吐いていた。すっごい動きだったし酔ったのかな?
まあ、良くわからないので、それはどうでも良いや。ボスが見てるし、問題は無いでしょ。
何にしても、これでハスティールもライバル認定か……。
これは喜ぶべき事である。アンナちゃんの意識が彼に向けば、それだけあたしは安全となる。
あたしはニンマリ笑う。そして、こっそりとガッツポーズを取った。ハスティールには悪いけど、あたしの身の安全の方が重要だ。
アンナちゃんのヘイトを稼ぐ為にも、ハスティールには頑張って貰わないとね!
あたしは内心で、ハスティールを応援する事を決めたのだった。
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