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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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ルージュ、面接を受ける

お盆期間(11日~15日)は毎日更新します!

楽しんで貰えれば幸いです♪

 私の名前はルージュ=ハワード。貴族である子爵家の三男であり、今年で十五歳となったLv15の剣士でもある。


 貴族として家を継ぐのは長男のみ。その為、私は十三歳から剣の腕を磨き、今は騎士を目指している。いずれは武勲を重ね、自らの家を持つのが夢である。


 そんな私であるが、幸運に恵まれているらしい。剣士ギルドからあるクランを勧められたのだ。


 そのギルドは新設ながらにシルバー級。新人である私でも応募可能との事であった。


 しかも、立ち上げたリーダーは、かの有名な賢者様の孫との事だ。だからこそ、ギルドマスターは私を推薦したのだろうし、私自身も運命を感じずにはいられなかった。


 それというのも、我がハワード家は、私の祖父が立ち上げた家なのである。数々の武勲を重ね、その功績が認められて、貴族としての爵位を賜った。


 そんな祖父が武勲を上げられたのは、全て賢者様のお陰である。祖父は賢者様のパーティーに迎えられ、鍛えられた事で、『盾の騎士』と呼ばれるまでになった。世に伝わる伝説は、如何に祖父が賢者様のお役に立っていたかという物なのである。


 ハワード家の人間が、再び賢者様の孫と仲間になる。何とも胸の熱くなる話ではないだろうか? 誰もが新たな伝説を期待する事だろう。


 そして、私は即決で応募を依頼した。結果はすぐに届き、人柄を見る為に会いたいとの事だった。私はすぐに快諾し、面接を行う運びとなった。




 面接の当日がやって来た。私はクラン事務局の女性職員に案内され、とある屋敷へ到着する。


 その屋敷は平民街ではあまり見ない、非常に立派な造りをしていた。


「こちらは、『白の叡智』が所有するクランハウスとなります。ルージュ様が正式にクランへ加入となりましたら、この屋敷の一角に部屋が用意される事になります」


「ほう、この屋敷に……」


 実家のハワード家と遜色無い屋敷である。そこに部屋を貰えるのは素直に嬉しい。


 正直、冒険者となる時点で、以前の貴族らしい暮らしは望めない物と考えていたからだ。


「アレク様がお待ちです。こちらへどうぞ」


「わかりました」


 恐らくは、アレク殿が賢者様の孫なのだろう。私は名前すら確認しなかった事を反省しつつ、女性職員に続いて屋敷へ入る。


 屋敷を歩くが、中は非常に美しかった。清掃が行き届いているのは当然として、調度品も良い物が飾られている。


 それらは決して高級品ばかりという訳では無い。飾る者のセンスが優れているのだ。


 無骨な我が家と比較すると、どちらが貴族かわからなくなる程である……。


「ようこそ、いらっしゃいませ」


「ほう……」


 案内されたのは、ある一室の前である。そこで出迎えたメイドが、綺麗な姿勢で頭を下げる。その所作から、しっかりと教育された者とわかる。


 すっと顔を上げたメイドの顔を見る。歳は私と同じ程度だろう。まだ僅かな幼さを残す顔で、彼女は優雅に微笑む。


「ご主人様がお待ちしております。どうぞ、お入り下さい」


「ふむ、ご主人様か……」


 彼女はアレク殿が雇うメイドなのだろう。短い言葉だったが、非常に厚い忠義心が感じ取れる。


 長く仕えているのか、それともアレク殿のカリスマか……。


 私はワクワクする気持ちを抑え、開かれた扉をくぐる。そこで待っていたのは、二人の青年と少女の三人だった。


「アレク様、ルージュ様をお連れしました」


「ご苦労様です。ルージュさん、お座り下さい」


 アレクと呼ばれた青年が爽やかに微笑む。


 すると、女性職員はすっと頭を下げて、扉の側へと移動する。先程のメイドも同じく扉の側に控えていた。


 私は勧められた席へと進む。しかし、席には着かずに、まずは挨拶を行う。


「初めまして、アレク殿。私はルージュ=ハワードと申します。本日はお時間を頂き、ありがとうございます」


 私の挨拶を聞き、アレク殿はニコリと微笑む。


 そして、自らも席から立ち、こちらへ挨拶を返す。


「これはご丁寧に。私はこのクランでリーダーを勤めるアレクです。本日はご足労頂き、ありがとうございます。さあ、改めてお座り下さい」


 二度目の勧めで席に着く。流石に二度目の勧めに従わないのは失礼だし、断る理由も無い。


 アレク殿も私の着席に合わせて席に座り直した。


 ……なお、先程の挨拶で、いくつかわかった事がある。


 アレク殿は礼儀を知らない無作法者では無い。貴族の流儀は知らなさそうだが、商人が使いそうな作法は知っているらしい。


 更には家名を名乗らなかった。もしやと思っていたが、賢者ゲイル様は貴族では無いらしい。


 前国王からの話を断ったという噂は、本当である可能性が高くなった。


 そして、先に挨拶をせず、私からの挨拶を当然の事と受け止めた。


 その事から、私が貴族家の出自であっても、クラン内では私の上に立つつもりらしい。


 これは、賢者様の孫だから許される事だ。本来なら貴族の家名を軽んじれば、名誉を汚されたと実家が動く事もある。


 しかし、この国、特にこの街では、賢者様の名は非常に重みを持つ。下手に実家が動けば、周囲から我が家へ激しい非難が飛んで来る事だろう。


「さて、まずはこちらのメンバーから紹介しますね」


「はい。宜しくお願いします」


 こちらが情報を整理していると、アレク殿から動いてくれた。あちらを上位に扱うなら、相手に合わせるのが無難なので問題無いだろう。


「隣の彼はギリーです。Lv50の狩人であり、ボクの乳兄弟でもあります。彼にはクランのサブリーダーを任せるつもりです」


「宜しく頼む……」


「こちらこそ、宜しくお願いします」


 アレク殿は右隣に座る青年を紹介してくれる。そして、私はギリー殿の挨拶に対し、優雅に返せたと思う。


 ……しかし、内心では混乱していた。短い紹介の中に、様々な情報が混ざっている為である。


 ギリー殿は既に上級職に着けるレベルだと? 私と変わらない年齢に見えるが、本当にそれ程のレベルに達しているのか?


 いや、漂う空気から、只者では無いと感じられるのだが……。


 それに、乳兄弟という事は、アレク殿は乳母に育てられた? アレク殿は母を亡くしているのか?


 それとも、やはりアレク殿は貴族として育ったのか……?


 質問はしたいが、まだ紹介は終わっていない。それに、優雅に見せる為にも、もう少し情報を集めてから質問を行いたい所だ……。


「こちらは妹のアンナです。年齢は七歳とまだ幼いですが、これでもLv15の黒魔術師です。実践で鍛えたので、戦力としては問題ありません」


「宜しく……」


「お嬢さん、こちらこそ宜しくお願いします」


 ……意味がわからない。


 七歳でLv15とはどういう事だ? 五歳から鍛え始めたのか? そんな年齢で実践に耐えられるのか?


 そもそも、そんな年齢から職に着いた者等、聞いた事も無い……。


「ああ、そういえば、私について説明がまだでしたね。私は戦闘面では賢者として立ち回ります。しかし、錬金術師も習得しています。ですので、集めた素材の大半は、私がマジックアイテムにして販売する事になります」


「賢者に、錬金術師……」


 思わず呟いてしまう。感情を表に出す等、貴族としては恥ずべき行為だ。


 しかしながら、この驚愕を内に留める事など、誰にも出来ない事だろう。


 何故なら、成人と同時に上級職に成れる者は存在する。しかし、それはほんの一握りの人間だけだからだ。


 私の知る例だと、騎士団長を輩出し続ける、上級の貴族家である。


 彼等の子息は十二歳から家庭教師が付き、成人までの三年間をただ訓練にのみ費やす。そうして、ようやく成人と同時に騎士と成れるのである。


 しかし、アレク殿はその上級職を既に二つ習得している。前提となる黒魔術師はLv30で重なる為、多少は楽かもしれない。


 しかし、そもそもの話として、真っ当な親はそんな苦行を子にさせない。余程の使命でも持たない限りは……。


「こちらの自己紹介は以上です。次はルージュさんの話に移って良いですか?」


「ま、待って欲しい……! その、アレク殿達は、どうやってそのレベルに……?」


 私の質問に微妙な空気が流れる。アレク殿は苦笑し、ギリー殿とアンナ殿が苦い表情となる。


 アレク殿は言葉を選びながら説明する。


「えっと、まず私は祖父に基礎を習い、実践をリリーエンタル師匠に教わりました」


「リリーエンタル、師匠……!?」


 賢者様の仲間で、精霊魔法の使い手がいると聞いている。賢者様と張り合う様に腕を磨き、攻撃能力は賢者様を越えるとも。


 その様な英雄に育てられたというのか……。


「ギリーの師匠は父親であるウィリアムさんです。ただ、実践訓練はリリーエンタルさんにも見て貰っています」


「な、なるほど……」


 彼も英雄の指導を受けた人間という事か。それはつまり、私も祖父に手解きを受けていれば、同じ領域に立てた可能性を示唆している。


 私は胸裏に苦い感情が滲むのを感じた。


「アンナは私が直々に鍛えました。……ええっと、私に過去の経験があったので、Lv15まで半年は掛かって無い位ですかね……」


「たったの半年で……」


 アレク殿の説明に私は驚嘆する。しかし、何故かアレク殿の両隣の二人も、驚いた表情でアレク殿を見ている。


 もしかしたら、半年という数字は、多少の誇張があるのかもしれない。


 私はほうっと息を吐く。聞かされた説明は驚くべき物であった。


 しかし、聞けば納得出来る内容でもあった。彼等の教師はいずれも特級。騎士団長を目指す貴族達ですら、追い付けない程の指導を受けて来たのだろう。


 このクランに入れば、或いは私も同じ様に成長出来るのでは……?


 そう思うと、ついつい胸が熱くなってしまう。


「さて、それでは話を続けても宜しいでしょうか?」


「ええ、問題ありません。どうぞ、続けて下さい」


 私の回答にアレク殿が頷く。どこかホッとした表情をしているのは何故だろう?


 少し気にはなったが、アレク殿は急ぐように話を続けた。


「ルージュさんのスキル構成は、事前に確認させて頂きました。これは祖父である、カイン=ハワードさんと同じと考えて良いのでしょうか?」


「はい、その通りです。私は祖父と同じく騎士となり、盾を極めたいと考えております」


 そう、私の祖父は盾の騎士という異名を持つ。ハワード家の人間はそれに倣い、剣よりも盾のスキルを優先して取得している。


 私もいつかは祖父と同じく、この盾で仲間のピンチを救いたいものである。


 しかし、私の思いと裏腹に、アレク殿は微妙な表情をしている。理由はわからないが、何か想定していた回答と違ったのだろう。


 そして、探るような視線で問いかけて来る。


「……騎士になるのですか?」


「は……? 勿論、そのつもりですが……」


 この国の剣士は大半が騎士を目指す。その事を伝えて残念そうに見られたのは初めてだった。


 アレク殿は眉間を押さえて悩むような姿勢を取る。


「えっと……。何故、盾を極めるのに騎士なのでしょう? 盾を極めるなら、守護者ガーディアンを選ぶべきでは無いですか?」


「ガ、ガーディアン……?」


 初めて聞く名前に戸惑う。しかし、私の様子にアレク殿も戸惑っていた。


 そして、苦虫を噛み潰した様に表情を歪める。


「もしかして、ガーディアンは一般的に知られた職業では無いのですか……?」


「え、ええ……。少なくとも、私は初耳となりますが……」


 何故かアレク殿が扉の方を睨む。そこには女性職員とメイドしかいないはずだが……。


 もしかしたら、その先の全然別の人間を頭に浮かべていたのかもしれないな。


 アレク殿は少しして、明らかに気落ちした様子となる。その様子に、私は内心で冷や汗を流す。


 この流れはもしや、私のクラン加入に影響を及ぼす事にならないだろうか……?


「む、無学で申し訳ないのだが、アレク殿の知るガーディアンとは一体……? もしや、祖父は騎士では無く、そのガーディアンだったのでしょうか……?」


 盾の騎士と呼ばれる祖父が、騎士では無い等と考えた事も無かった。それも当然の事で、この街の誰にその事を話しても鼻で笑われる事だろう。


 かの有名なカイン=ハワードが騎士では無かったなど……。


 しかし、それを話すのが賢者様の孫となると話は変わる。


 我が祖父を剣士から育てたのは賢者様だと世間に知られている。そして、その強さが通常の騎士を超越しているという事も。


 ならば、その秘密を賢者様の一族なら、何か知っているのではと皆が考える事だろう。


 私は期待に喉を鳴らす。誰も知らない秘密を、ここで知れるのかもしれないと期待して。


 そして、アレク殿はゆっくりと口を開く。


「盾の騎士の噂は私も聞きました。無数の敵を前に一歩も引かず、魔神の一撃も耐えてみせたと……。更には戦う際は光に包まれ、常人を超える力を発揮したとも……」


「ええ、祖父に関する有名な逸話ですね」


 その辺りは眉唾だと言われる事も多い。しかし、吟遊詩人ですら歌う、祖父の有名な話である。私も子供の頃から聞かされ続けて来た。


 アレク殿はゆっくりと頷き、説明を続ける。


「騎士にその様な真似は出来ません。騎士の覚える盾のスキルは、それ程強力な守りの力を持ちませんので。それに、光を纏うという事は、オーラスキルを使っている証拠です」


「オーラですか……?」


 オーラスキル自体は有名なスキルだ。


 オーラとは武道家の気に近い概念だ。剣士がLv30になると覚えられるスキルで、オーラ修練、オーラウェポン、オーラアーマー、オーラシールドの4つが存在する。


 しかし、実際に覚える者は少ない。覚えるまでの道のりが長い割には、そこまで強いスキルでは無いからだ。


 しかし、アレク殿は私の態度に何かを感じ取ったらしい。ゆっくりと首を振って説明する。


「剣士のオーラスキルは、オーラ系の初歩です。オーラスキルが真価を発揮するのは、ガーディアンとなってからなのです。むしろガーディアンは、オーラを極めた戦士と言っても過言ではありません」


「その様な職業があるのですか……」


 まだピンとは来ない。しかし、アレク殿言葉を信じるなら、これが祖父の秘密という事になる。


 もう少し、ガーディアンに対する情報が欲しい所だな……。


 しかし、私が質問を続ける前に、アレク殿からの質問が飛ぶ。


「……ルージュさんは、祖父や父親から聞いていないのですか? カインさんがガーディアンだった事を?」


「祖父は早くに他界しております。父が成人するよりも前に、病気で倒れました……」


「ああ、なるほど……」


 そう、祖父の早い他界が、ハワード家の凋落を引き起こした……。


 盾の騎士としての力を引き継げなかったハワード家は、期待された役目を果たせていないのだ。


 表立っての批判こそ無い物の、裏ではかなりの嫌がらせを受けている。父も二人の兄上も、それを何とかしようと必死に努力をなさっている。


 だからこそ、私も家の為に何かをしなければならない。祖父の名誉を守り、我が家の誇りを取り戻す為に……。


「その……。オーラスキルを覚えると、先程の話にあった無数の敵や、魔神の攻撃にも耐えられるという事でしょうか……?」


「ええ、熟練のガーディアンが居れば、魔神だろうとドラゴンだろうと、全ての攻撃を防いでくれる事でしょう。ガーディアンはオーラの力で、仲間を守る事に特化した職業ですので」


 魔神やドラゴンを相手に出来るというのは誇張だろう。


 それらは人の領域を超えた存在である。そんな物は天災と変わらず、出会えば頭を抱えて、過ぎ去るのを待つしか無い。人が手に負える相手では無いのだ。


 しかし、アレク殿はそれを当然の様に話している。もし、この話が本当の事であれば、私は祖父と同じ武勲を重ねる事が出来るのでは無いだろうか?


「その、ガーディアンには、私でも成れる物なのでしょうか?」


「ええ、剣士がLv50になれば転職は可能です。私が転職の為の場所も、転職に必要なアイテムも記憶していますので」


「おお……! それでは、私もそのガーディアンに……!」


 私が興奮して立ち上がると、アレク殿が手を掲げて制止する。


 そして、ピリリとした空気を纏って、私に対して問いかけて来る。


「簡単に決めてしまって良いのですか……?」


「どういう意味でしょうか……?」


 私は腰を浮かせた姿勢で固まる。そして、アレク殿の真意を探る為、その言葉に耳を傾ける。


「先程も言いましたが、ガーディアンは仲間を守る事に特化した職業です。逆を言えば、攻撃能力を捨てた先に習得可能な力とも言えます。つまり、ガーディアンはパーティーでのみ生きられる職業です。攻撃を行ってくれる仲間がいなければ、全く役に立たない職業でもあるのです」


「それは……」


 魔術師やアーチャーの様な、後衛職と組む事で真価を発揮すると言う事か。逆を言えば、一人ではレベルを上げる事すら困難なのだろう。


 そして、その苦労はこの二年間で良く理解している。ハワード家は騎士の家系と言いながらも、攻撃能力の低さから、どうしてもレベルの上りが遅いのである。


 父や兄上は、その事で良く愚痴を零していたな……。


 だが、それはハワード家の宿命なのだろう。祖父によって起こされた家であり、王国の守護者としての役割を期待されて貴族となった。


 ならば、私がその役目を担うのは、決められた定めとも言える。


 そして、このクランには幸いな事に、十分な後衛職が揃っている。


 賢者であるアレク殿。Lv50の狩人であるギリー殿。そして、私と同レベルの黒魔術師であるアンナ殿である。


 私がその役目を果たすのに、これ程の環境は存在しないだろう。


 私は中途半端な姿勢を正し、アレク殿に向かって胸を張って見せる。


 そして、頭を垂れて、その場で床に膝を着く。


「こうなる事は、運命だとしか思えません。私の盾をアレク殿に捧げましょう。どうか私の事を導いて下さい」


 騎士が捧げるのが剣であるなら、私が捧げるのは盾であるべきだ。


 きっと祖父もそうしたのだろう。私はこうする事が当然の事に思えた。


 そして、アレク殿からの声が届くまで、少しの間が空いた。私の誓いを受けるべきが、じっくりと吟味していたのだろう。


「……わかりました。私が責任を持って、ルージュさんをガーディアンへと転職させましょう。そして、必ずルージュさんに相応しい活躍の場も用意します」


「ありがとう御座います。必ずアレク殿のお役に立ってみせます」


 アレク殿に受け入れられてホッとする。ハワード家の人間が賢者様の孫に拒否される等、取り返しのつかない程の汚名となってしまう。


 その事を思うと、今になってドッと精神的疲労が押し寄せて来る。


 しかし、その様な事を気にしている場合では無い。私は顔を上げて、アレク殿に無様な態度を見られない様にした。


 私はアレク殿に役立つと思われ続けねばならないのだ。


 ――何故なら、私とアレク殿の主従の誓いは成し遂げられたのだから。

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