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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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ハスティール、ゴブリン島の戦い(前編)

クラン加入メンバー視点。

 五日間の海底洞窟巡りを三周し、オレはLv28まで上がっていた。


 オレ達のレベルも上がって来た為、これからはクランの依頼を中心に受けて行くらしい。


「今日はゴブリン島へ行き、ゴブリン狩りを行います。ノルマは二十匹なので、頑張って狩りましょう」


「ゴブリンか……」


 正直、今さらゴブリンと思わなくは無い。


 今ではオレ達も中堅を名乗れる冒険者である。ゴブリンの様な弱い魔物は、初級冒険者に譲るのがマナーだと思う。


 しかも、クランの説明では、この依頼は不人気なのだそうだ。オレと同じく今さらと思う者は多い。報酬も少ないのに、往復の船賃は自腹。


 手の空いたブロンズ級が、ポイント稼ぎで受けるだけの依頼の様だ。


 ただ、リーダーが依頼を受けた事で、クラン事務局の職員は喜んでいた。


 このゴブリン島は金の取れる鉱山があり、定期的なゴブリンの間引きが必要なのだそうだ。


 最近は依頼を受けるクランが無く、島民からの苦情が入っていたらしい。


「基本は海底洞窟と同じです。ただし、ノーマルゴブリンは、ロレーヌさんが倒してしまって構いません」


 クランの情報では、生息するゴブリンは四種類らしい。


 最弱のノーマルゴブリン。弓矢を使うゴブリンアーチャー。魔法を使うゴブリンシャーマン。指揮官であるゴブリンリーダー。


 警戒が必要だとすると、希に出現するゴブリンリーダーだけである。


 なお、このゴブリン島には二つの村が存在している。一つは海辺にある漁師の村だ。こちらには船着き場があり、オレ達の現在地でもある。


 もう一つは鉱山の村である。採掘作業者が暮らす為の村であり、島の中心に近い場所に存在している。


「まずは、鉱山の村を目指しましょう。奥に進む程、ゴブリンの数も増えるはずです」


 リーダーの指示に従い、島の中心に向かう。村と村の間には道があるが、整備はろくにされていない。


 獣道に近い道を、ロレーヌを先頭に進んで行く。


 道中は殆ど森の中を歩く様な状況だった。周囲は鬱蒼とした木々に覆われる、道が無ければ迷いかねない。


 しかし、魔物は余りいないみたいだ。時々見かけるノーマルゴブリン以外に、魔物の姿を目にしない。


 ここは本当に、ゴブリンの為の島なのだろう。


 オレ達は順調に森を進む。途中に現れたゴブリンは、全てロレーヌが仕留めていた。


 討伐証明の右耳を削ぎ落とし、リーダーが回収する。本日だけで十匹のゴブリンを討伐していた。




 そして、村には日暮れ前に到着する。鉱山の麓に有り、木製のログハウスを寄せ集めた村である。


 ガタイの良い男達が、山から沢山下りて来ていた。恐らくは仕事帰りなのだろう。


「今日はここで泊まって行きましょう」


 リーダーは近くの男を捕まえ、村長の元へと案内して貰う。そして、村長と交渉し、タダで空き小屋を貸して貰った。


 借りた部屋はボロボロだった。中には家具が一切無く、雨風を凌げるだけマシという程度だ。


 しかし、リーダーは気にしない。寝袋を人数分用意し、食事の準備を始めてしまう。


「リーダーが食事を用意するんですか?」


「ええ、味は保証します。ご安心下さい」


 そういう意味で質問した訳では無い。貴族であるリーダーに、夕食を用意させて良い良いのかと躊躇ったのだ。


 しかし、リーダーの手際は非常に良かった。手慣れた様子で、テキパキと準備を済ませてしまう。


「さあ、準備が出来ましたよ」


 出された夕食は非常に美味しかった。簡単な調理器具で作られたと思え無い程に。


 貴族なのに料理も出来るなんて、リーダーは本当に何でもアリだな……。


 夕食が終わると、次にリーダーは魔法で湯を沸かす。そして、メンバー全員に綺麗な布を配った。汗だくだったので、体を拭えてすっきりした。


 更にリーダーは夜警の当番を決める。女性がいるので、見張りが必要とリーダーが主張したのだ。女性陣はゆっくり休み、男性陣が見張る事になった。




 そして、翌朝に目覚めると、朝食が出来ていた。リーダーが最後の当番を選んだのは、この為だったらしい。


 ……致れり尽くせりである。細やかな気配りに、もはや誰も頭が上がらない。


「今日は山沿いに進みましょう。ただし、夜には村に戻るつもりです」


「まだ進むんですか? 残りノルマを考えると、戻っても良いと思うのですが……」


 この村より海辺の村の方が、宿屋もあって環境が良い。数が足りなくても、海辺の村で一泊すれば良いだろう。


 しかし、リーダーは肩を竦める。そして、ニコリと微笑み、オレ達に説明する。


「ただ数を減らすだけなら、ブロンズ級でも出来る事です。しかし、ボク達はシルバー級ですよね? ならば、それに相応しい成果が必要じゃないですか?」


「シルバー級に相応しい……?」


 オレの疑問にリーダーは答えない。ただ、優しげに微笑むだけだ。


 ……ああ、これは危険なパターンだ。一同は諦めた顔で村を発つ。




 そして、山沿いの森を進んで行った。少し進むと、程なくしてゴブリンと遭遇する。


「あれがゴブリンリーダーか?」


 初めて見るゴブリンは、青みがかった肌をしている。体格もノーマルより大きめで筋肉質だ。武器も棍棒では無く、剣と盾を持っている。


 更に通常と違うのは、パーティーを組んでいる事だろう。ゴブリンリーダーの近くには、ノーマルとアーチャーも控えていた。


「ルージュは前で足止め。ロレーヌは回り込んでアーチャー。アンナはリーダーを優先」


 こちらのリーダーが短く指示を出す。三人は即座に動き出す。海底洞窟で慣れている為、相手が変わっても迷いは無い。


 そして、アッサリとゴブリン達を仕留めてしまう。余りの早さに、石を投げる暇さえ無かった……。


「うん、問題無いね。このまま進むとしましょう」


 オレ達は確かな手応えに満足し、再び森の奥へと歩を進める。


 先程の相手は、明らかに初級冒険者が相手出来る物では無かった。それにも関わらず、このパーティーは苦も無く処理出来た。


 それは、このパーティーの実力を十分に証明するものである。


 それからも、ゴブリンリーダーが再び現れる。結果は先程と同様。オレ達は軽い足取りで森の探索を続けた。




 しかし、それからしばらく歩くも、ゴブリンとは遭遇しなかった。不思議に思っていると、リーダーの指示で休息を取る事になる。


 オレは水筒に口を付けてリーダーを見る。そして、その表情に違和感を感じる。


「リーダーは、どうして楽しそうなんですか?」


「さあ、どうしてだと思います?」


 こちらの質問に、リーダーは楽しそうに答える。しばらくじっと見つめるが、答えをくれそうには無かった。


 ……きっとリーダーは、オレ達の知らない何かを知っている。


 しかし、それを教えるつもりは無いのだろう。その方が、リーダーにとって楽しい結果になるからだ。


 勿論、それがオレ達にとっても、楽しい結果とは限らない訳なのだが……。




 探索を再開してすぐ、その場所は見つかった。


「あれは……まさか……!?」


 オレの目の前には村があった。ゴブリン達が生活する村である。ゴブリン島にゴブリンの村があるなんて、これまでに聞いた事が無い。


 しかし、実際に目の前に数十匹のゴブリン達が存在している。


「ふむ、気付かれましたか……」


 リーダーの声にハッと気付く。村の一角で複数のゴブリンリーダーが叫んでいる。


 そして、供となるゴブリンを率いて、こちらへと向かっている所だった。


「リーダー……!」


 慌ててリーダーへ指示を求める。しかし、オレが見たリーダーの表情は、これまでに見た事の無いものだった。


 それは、獲物を見つけた狩人の目だ。薄っすらと笑みを浮かべるが、その目はギラギラと輝いていた。


「さあ、狩りの始まりです……」


 リーダーの呟きに、思わず喉を鳴らす。


 そして、迫り来るゴブリンの群れに視線を移し、オレは震える拳を握りしめた。

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