表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/348

アレク、ヴォルクスを巡る

 商業都市ヴォルクスは、ペンドラゴン王国で王都ブランに次ぎ、二番目に栄えた都市だ。


 国内で最大の港を持ち、他国との交易を一手に担っている為である。住民の数も十万人を超えるらしい。


 近隣にはいくつもの小島が存在し、その中にはダンジョンも存在する。


 海の魔物は雷属性に弱く、専用装備で効率的な狩りが行えるのが特徴だ。冒険者には中々に美味しい狩り場と言える。


 また、ヴォルクスはカーズ帝国と隣接する領地でもある。今は停戦状態らしいが、ヴォルクスは戦争になると、国の盾役を担う事になる。


 その為、この都市は巨大な城壁に覆われた、堅牢な作りとなっている。


「うわぁ……。ここが街なんだ……」


 初めて見る都会に、アンナは目を輝かせていた。


 この世界の村人は、殆どが村の中だけで人生を終える。なので、アンナの様に都市へ入った事が無い者が多い。


 見ればギリーも平静を装っているが、その目はキョロキョロと落ち着き無い。


 大人げないので、その事を指摘したり、からかったりはしないけどね!


「さあ、後ろが詰まってるから、早く中に入ろうか?」


「は、はい……!」


 ボクの言葉に、アンナは慌てて前へ進む。


 背後に目をやると、門の側に立つ兵士が苦笑していた。彼は肩を竦めると、何を言うでも無く次の人の手続きに移った。


 ここはヴォルクスへ入る西門である。中に入るには兵士へ目的を告げ、安くない通行税を払う必要がある。


 その金額は、某テーマパークよりも高い位の金額だ……。


 ちなみに、街の住人とギルド所属の冒険者は、通行税が不要である。住民税を払っている事もあるが、街の経済が停滞しないのが目的だ。


 ……ボクも早くギルドに加入しないとな。


「あ、あの……。今からどこに向かうの……!」


 アンナがソワソワしながら質問する。そして、質問しながらも、目は落ち着き無く、周囲へと動き回っている。


「目的地はギルド通りだけど……少し街を案内しようか?」


「い、いいの……!?」


 アンナは嬉しそうに悲鳴を上げる。その様子にボクは、大きく頷いた。


「わあい、やったぁ……!」


 七歳の少女らしく、アンナはその場で跳ねる様に喜ぶ。


 しかし、そこでギリーが眉を寄せた。


「何故、アレクは街を案内出来る……?」


「ハンスさんに、色々と教えて貰ったからね」


「……ふむ、そうか」


 一応、ギリーは納得する。そんな物かと思ったのか、ボクならあり得ると思ったかのどちらかだろう。


 しかし、ハンスさんに聞いたというのは嘘だ。


 村で唯一の商人であったハンスさんは、ヴォルクスの街並みに詳しくなかった。それはお金が無くて、街で長期滞在したり、遊んだり出来なかったからである。


 ボクがヴォルクスを良く知るのは、ゲーム内で散々歩き回ったからだ。


 細かな情報は異なるだろうが、港やギルドの位置が大きく変わると思えない。目的地を探すには困らないだろう。


「じゃあ、まずは今いる場所だね。ここは露天通り。店を持たない商人が、商品を売る為の場所だよ」


「へえ……」


 門から中央に向けて大通りが伸びている。そして、大通りの両端にはチラホラと商品を広げた商人の姿が見られる。


 ゲームでは見慣れた光景なのだが……。その人数は圧倒的に少ない。まるで過疎化したサーバーの様だ。


 それと、ざっと見渡した限りでは、まともな商品が少ない。ゲーム内ではレアアイテムや、委託販売の武具等が並んでいた。


 しかし、プレイヤーが存在しない為か、並ぶのは怪しい格安アイテムばかりだ。


「……じっくり見るのは今度にしよう。まずは港に向かおうか」


「港……?」


 アンナは馴染みが無い為にピンと来て無い様だ。ボクは苦笑しながら東に向けて足を進める。


「ここは海に面した街だから、当然ながら船が停泊してるんだよ。アンナは海も船も見た事無いよね?」


「うん、見た事無いよ!」


 アンナは手を上げて返事する。その目はキラキラと輝いていた。


「じゃあ、せっかくだし見て行こう。今後は船に乗って移動する事もあるしね」


「うわぁ、楽しみ……!」


 ボク達は北の住宅通りを経由して、東の港エリアに向かう。最終目的地は南のギルド通りだが、せっかくなのでグルッと一周するのも有りだろう。


 ……正直、ボクも実物の街には興味あるしね。


 ちなみに、街の中央は城壁に覆われている。中は貴族達の屋敷が建ち並び、中心地には領主の城がある。


 ボク達は許可無く入れないので、遠目に城を眺めるだけだ。


「ほら、ここが港だよ」


「うわぁ……。これが海なんだ……」


 徐々に見え始めた景色に、アンナの足が僅かに早くなる。


 広がる景色は一面が青。その中にポツポツと浮かぶ大小の船。その全てが、アンナには初めて見る物だ。


「あ、あの! 急いで見に行こうよ!」


 アンナは上気した顔で、駆け出して行く。初めての感動で、抑えが効かないのだろう。


 実に子供らしくて可愛いと思う。


 ボクがほっこりしながら歩いていると、すっとボクを追い越す影があった。


「ふっ……。アンナは仕方がないな……」


 ……すっかり存在を忘れていた。ここにも浮かれた仲間がいたんだった。


 ギリーは保護者の様なすまし顔で、早足にアンナを追いかけて行く。


 本人は落ち着いているつもりだろうが、その目からは好奇心が溢れだしている。


 ボクは肩を竦めると、ヘイストを使って二人を追う。急いで向かったお陰で、港にはすぐに到着する事が出来た。


 二人は楽しくて仕方ないらしく、周囲をキョロキョロと見回していた。


「広いよ……! それに大きい……!?」


 港には大型船が数隻と、中型や小型の船が複数停泊していた。それらは荷物の運び入れをする物や、乗客の乗り降りする物が入り交じる。


 興奮するアンナに向けて、ボクは説明を行う。


「大型船は外の国に向かう船だね。それ以外は、ペンドラゴン王国内の街や島に向かう船だよ」


「へえ……。そうなんだ……!」


 アンナは目を輝かせて色々な船を見比べる。クランで依頼を受ける様になると、船に乗る機会は嫌でも増える。


 もっとも、国外に出る事は当面無いので、大型船には乗らないだろうけど。


 それから、二人が落ち着くまでしばし散策する。屋台があったので、ついでに魚介類の串焼きを買って昼食代わりにする。


「わぁ……! 味が強くて美味しいね!」


 アンナはホタテっぽい、貝の串焼きが気に入ったらしい。ギリーはエビっぽいのが好みの様だ。


 ボクは醤油が無いのが不満である。塩味でも美味しいけど、元日本人としては物足りない……。


「じゃあ、そろそろギルドに向かうよ」


「うう……。もう、お腹一杯だよ……」


「はは、食べ過ぎたね」


 干物でない魚介類は珍しい為、ついつい食べ過ぎる気持ちはわかる。可哀想だが消化されるまで、苦しいのを我慢して貰うしかない。


 ちなみに、ギリーはまだ食べ足りないのか、視線がお店に向いている。とはいえ、宿も確保しないといけないので、ここは我慢して貰おう。


 ボク達は街の南に向かう。そこはギルド通りと呼ばれ、様々なギルドが集まる場所だ。それに、クラン事務局も存在する。


 今日中にギルド加入と、クラン結成は終わらせたい。可能なら、クランハウスも今日から使えると良いのだが……。


 アンナに合わせてゆっくり歩いていると、程なくしてギルド通りに到着する。街並みは綺麗に整っており、様々な看板の付いた建物が並んでいた。


「まずは魔術師ギルドだね」


 ボクはすっと、ある看板を指差す。そこには二本の杖が交差した絵が描かれていた。そして、ボク達は真っ直ぐにその建物に向かう。


「次の予定もあるから、さっと登録してしまおう」


「う、うん……。ちょっと緊張するね……」


 初めてのギルドにアンナは緊張していた。


 ボクは彼女に微笑むと、先陣を切ってギルドへ踏み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ