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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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アレク、魔術師ギルドに加入する

 ギルドは同じ職業の者達が、自分達の権利を守る為に結成する労働組合である。


 そして、ギルド加入メンバーが多く、街への貢献度が高ければ、それだけ領主に対しても嘆願が通りやすくなる。大きな組織である程、それだけ街での権力に繋がる。


 なお、ペンドラゴン王国は騎士の国である為、最も力を持つのは剣士ギルドである。国の防衛には騎士が重宝され、騎士を目指す剣士も非常に多い。


 そして、次に大きな力を持つのが魔術師ギルドである。戦闘面での攻撃魔法を始め、回復魔法は生活でも必要とされる。


 更には錬金術師の作るマジックアイテムも重要な要素だ。魔法は戦闘面でも、生活面でも、無くてはならない存在とされているのだ。


 その為、ボク達の訪れた魔術師ギルドは、かなり大きな建物となっている。建物内には様々な黒魔術師や白魔術師らしき人達が活動を行っていた。


「こんにちは。ご用件は何でしょうか?」


 カウンターへ訪れたボク達に、おっとりしたとした女性職員が声を掛ける。


 彼女は丸眼鏡にお下げ髪、更には黒ローブと地味目な格好である。年齢は三十後半で、ギリギリお姉さんと呼べる感じだ。


 今はボク達三人を微笑ましく眺めている。


 ボクはお姉さんにニコリと微笑む。そして、アンナを指差して要件を告げる。


「ボクと彼女の登録手続きをお願いします」


「えっと……。そちらのお嬢さんも……?」


 アンナを指差すボクに、彼女は目を丸くする。


 一応、今のアンナは若草色のローブに、初心者用の杖を手にしている。見た目は完全に初級黒魔術師だ。


 しかし、この国では職業に着くのは十三~十五歳であり、七歳という圧倒的な低年齢が信じられないのだろう。


 ボクはアンナの肩に手を置くと、お姉さんに頷いてみせた。


「ええ、信じられないでしょうが、アンナは既に黒魔術と白魔術を使えます。確かギルド加入には年齢制限は無いはずですが、彼女の登録は問題無いですよね?」


「え、ええ……。魔法が使えるなら、ギルド加入は可能よ……。でも、本当にお嬢さんが……?」


 お姉さんは疑わしそうに表情を歪める。疑われている当のアンナは、どうして良いかわからずアワアワしていた。


 ボクは落ち着かせる為に、アンナの頭を撫でてあげる。そして、お姉さんに向かって軽く微笑む。


「本当かどうかは、ギルドカードを作ればわかりますよね?」


「……そうね。それじゃあ、早速……って、ちょっと待って」


 お姉さんは席を立ちかけ、前屈みの状態で固まる。そして、ぐっと身を乗り出して、ボクの姿を凝視しだした。


「えっと、何か……?」


 お姉さんはしばらく、ボクの全身を無遠慮に確認する。そして、眉を寄せて尋ねて来た。


「そのローブとマント、それにカバンもですね。それは一体どこで……?」


「ああ、ボクの装備品ですか? これらは祖父から譲り受けた物です」


 ニッコリと微笑むボクに、お姉さんは軽く目を見開く。


 しかし、納得出来る答えだったのか、小さく頷いた。


「なるほど、そういう事でしたか……。それではお坊ちゃま、お嬢様、少々お待ち下さいませ」


「は……?」


「え……?」


 お姉さんはニコニコと愛想笑いを浮かべると、ペコリと頭を下げる。そして、席を立つと奥の戸棚へ何かを取りに行った。


 急に腰が低くなったけど、どういう事だ? まさか、お金持ちの子供とでも思われたのだろうか?


 まあ、装備を譲って貰ったのは本当の事だし、後々誤解が解けたとしても問題になる事は無いだろう。


 誤解させてた方が話しが早そうだし、今の所はこのままにしておこう。


「お待たせしました。こちらがギルドカードとなります」


「これがですか? ただの鉄の板みたいですね?」


 ボクの目の前に並べられたのは、銀色に輝く二枚の金属板である。サイズは名刺程の大きさで、表面には何も記載がされていない。


 ゲーム内では実際に手にする事が無いアイテムなので、これがゲームの設定と同じなのかは不明である。


 お姉さんはニコニコと微笑みながら、優しくボク達に説明してくれた。


「こちらは鉄と少々のミスリルを混ぜた金属板となっております。そして、裏には魔法陣が描かれており、こちらに触れる事で持ち主としての登録が行われます」


 お姉さんはいつの間にか、白い手袋を着けていた。そして、その手でカードを裏返すと、確かに魔法陣らしき物が刻まれている。


「ミスリルの量は微量とはいえ、このカード自体は500G程の値段となります。初回登録時は無料となりますが、再発行時はお金が掛かりますのでご注意下さい」


「は、はい! わかりました!」


 500Gという金額に、アンナが緊張した様に答えた。ボクが静かに頷いたのを見て、お姉さんは説明を続ける。


「裏の魔法陣に触れていると、数十秒程で持ち主の情報が登録されます。また、カードを身に着けておけば、レベルが上がった際にも自動で情報の更新が行われます」


「なるほど。それは便利ですね」


 お姉さんがボクとアンナにカードを差し出して来る。ボクは落ち着いて、アンナは震える手でそれを受け取った。


「登録が終われば、持ち主の名前、職業及びレベルが表示されます。ギルドでは初回登録時に情報を控えさせて頂きますので、登録後はこちらにて拝見させて頂きます。また、定期的に情報の更新を行って頂ければ、適正な仕事を依頼させて頂きます。レベルが上がった際は、可能な限り小まめな情報提供をお願いします」


「はい。わかりました」


 カードの裏に触れながら、お姉さんの話しを聞き続ける。その間にカードは情報を収集し終えた様で、表に文字が浮かび上がって来た。


 ……そして、カードに浮かんだ文字はこんな感じだ。


==============

アレク(黒峰 徹)

所属:ヴォルクス魔術師ギルド

黒魔術師Lv50

白魔術師Lv33

薬師Lv35

賢者Lv28

錬金術師Lv23

==============


 ……何故、転生前の名前まで表示されている!?


 というか、転生前の名前だけ日本語だけど、これってどうなってるの!? お姉さんに見せても大丈夫なの!?


「あ、あの、終わりました!」


 ボクが茫然としている間に、アンナの登録も完了した様だ。チラッと確認したが、アンナの表示はこうなっていた。


==============

アンナ

所属:ヴォルクス魔術師ギルド

白魔術師Lv5

黒魔術師Lv15

==============


 ……うん、こちらは特に問題らしき表記は無い。というか、ちょっとした発見だけど、表示される職業は習得順になるんだ。


 ボクが別の職を次に取ったら、基本職でも最後に表示されるのかな?


 ボクが軽く現実逃避していると、お姉さんがアンナからカードを受け取っていた。


 そして、カードを見て、目を大きく見開く。


「黒魔術師がLv15……! 私よりも上なんだけど……!?」


「え、え……?」


 お姉さんが突然叫んだ為、アンナがオロオロとし始める。更には関係の無いギャラリーまで、何事かと集まり始める。


 ……これはお約束のアレでは無いだろうか?


 そして、周囲の状況に気付いた様で、お姉さんはハッと口元を抑える。


「も、申し訳ありません! 個人の情報を漏らす様な真似をしてしまい……!」


「あ、うん……。とりあえず、やっちゃった物は仕方ないかな?」


 ボクは曖昧に笑って、お姉さんの事を許す。お姉さんはボク達が怒っていない事が判り、明らかに安堵した様子だった。


 お姉さんは手元の書類にアンナの情報を書き込んでいく。そして、上目使いにボクの様子を伺っていた。


「そ、それで、お坊ちゃまの登録は如何でしょうか? 登録が済んでいる様でしたら、拝見させて頂きたいのですが……」


 これは見せない訳にはいかないよな。


 というか、見せても大丈夫なのだろうか? 見せるにしても、しっかりと釘を刺しておかないとな……。


「えっと、見せるのは良いのですが、驚かないで……ってのは無理か。カードをお預けしますので、人目のつかない別の部屋で確認して貰えますか?」


「は、はあ……?」


 ボクはカードを裏返してお姉さんに渡す。お姉さんは不思議そうな表情ではあったが、ボクの言葉に従ってくれるらしい。


 カードを裏返したまま奥の扉へと向かって行った。


「多分、テンプレは回避出来ないんだろうな……」


「テンプレ……?」


 ボクの呟きが聞こえた様で、アンナは不思議そうにボクを見上げていた。


 そして、ボクが力なく頭を振ると、奥の部屋から悲鳴が聞こえて来る。


「何事だ……?」


 これまで静かにしていたギリーが、警戒する様に扉を睨む。


 しかし、扉は開く事なく、走って行く足音だけが聞こえて来た。


 周囲には十分なギャラリーが集まっている。彼らは何が始まるのかと、興味深そうに様子を伺っていた。


 そして、奥の扉が勢い良く開かれる。


「どこじゃ! 天才少年とやらは……!?」


 奥からやって来たのは、白い髭を蓄えた老人だった。そして、それに続いてやって来るお姉さん。


「ギルドマスター、あちらです……!」


 お姉さんはボクを指刺す。どうやら、連れて来たのはギルドマスターらしい。二人は揃って、ボクの方へと駆けよって来る。


「お主がアレクかっ! あのレベルは一体……!?」


「えっと、ボクは賢者ゲイルの孫なのですが……」


 これで通じるだろうか……?


 爺ちゃんも恐らくは、魔術師ギルドに所属していたと思うのだ。通じてくれると良いのだが……。


「賢者ゲイルの孫……?」


 ボクの願いが通じたのだろう。ギルドマスターは途端に疲れた顔になる。


 そして、ガックリと肩を落として呟いた。


「子供を拾ったとは聞いておったが、後継者にするとは聞いておらんぞ……。まったく、これだから兄上は……」


「……あ、兄上!?」


 ギルドマスターの衝撃発言に、逆にこちらが驚かされる。


 ボクも爺ちゃんから聞いていない。ボクの親戚が、ヴォルクスでギルドマスターをしているなんて……。


 ボクがゆっくり視線を移すと、ギリーも同じ様に驚いていた。やはり、ギリーも知らなかったらしい。


 アンナは不思議そうに首を傾げている。爺ちゃんはアンナが三歳の時に亡くなっている。


 その為、アンナには爺ちゃんの記憶が殆ど無い為だろう。


 そして、周囲を見回して見ると、ギャラリーも同じ様に驚いていた。突然現れたギルドマスターの甥っ子なので当然だろう。


 ヴォルクス到着初日から、ボクは衝撃のデビューを果たす事が出来た様だ……。

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