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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第九章 ヴァーム砦防衛戦編

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アレク、歓迎される

 ボク達は砦に到着すると、防衛の隊長に出迎えられる。そして、皆が待っていると、すぐに広々とした訓練スペースへと案内された。


そこでは、千名にもなる兵士が、一切の乱れなく整列していた。ボクの到着を事前に知り、この場に集まって待っていたらしい。


「それでは、アレク様。皆への言葉をお願いします!」


「は、はあ……。まあ、良いのですが……」


 隊長に案内され、ボクは兵士達の前に立つ。一服する暇も無く、忙しない事である……。


 しかし、ボクを待つ兵士達の目を見て、その理由に察しがついた。彼等全ての目が、キラキラと輝きながら、ボクの事を見つめていたのだ。


 ボクは苦笑を浮かべ、ここに並ぶ兵隊達に視線を這わせる。そして、彼等の期待に応えるべく、ボクはスピーチを開始する。


「どうやら、お待たせしたみたいですね? ヴァーム砦の皆さん、初めまして。ボクが『白の叡智』のアレクです」


「「「…………」」」


 誰も言葉を発したりしない。しかし、それはボクの言葉を無視した訳では無い。


 誰もが、ボクの言葉に耳を傾けているのだ。ボクの言葉を、一切聞き漏らすまいと。


「領主であるユリウスさんから、皆さんの事は聞いています。このヴォルクス……そして、このペンドラゴン王国を、カーズ帝国から守る勇敢な戦士達だと」


「「「…………」」」


 彼等は言葉を発しない。しかし、その感情は良くわかる。


 瞳には熱が籠り、その手は強く握られている。彼等は自らの感情を、内側に押し留めているのだ。


「私は冒険者として、ヴォルクスの街を守っています。相手は魔物等となりますが、ヴォルクスの街に住む人々を守る……その点に関しては、皆さんと同じ立場だと思っています」


 数人の肩が、ブルリと震える。更に幾人かは、呼吸が荒くなっている。


 彼等の内側は、相当の熱量を蓄えている事だろう。今にも吹き出しそうになりながら……。


「倒すべき敵が、人か魔物か……。立ち位置は確かに違います。それでも私は、皆さんの事を同士だと思っています。大切な人達を守る為に、武器を手にした勇者なのだと思っています」


 見れば、目に涙を溜める者までいた。ボクの言葉に、感銘を受けてくれているのだろう。


 ……あまり我慢させても悪い。そろそろ、話を終わらせる事にしよう。


「皆さんはヴォルクスの誇りです! ペンドラゴン王国を守る英雄です! だからこそ、必ず勝って下さい! この国と、この国に住まう、全ての人々の為に!」


「「「うおおおおおぉぉぉぉぉ……!!!」」」


 内に秘めた熱が噴き出す。彼等の全てが雄たけびを上げる。


 そして、口々に内なる思いを、ボクへとぶつける。


「ヴォルクスを、家族を守ってくれて、ありがとう……!」


「伝説の悪魔を倒せたのは、アレク様が居たお陰だ……!」


「一緒に戦えなかったけど、オレ達は仲間だからな……!」


「今度はオレ達が、ヴォルクスの人々を守るんだ……!」


 天竜祭での戦いで、彼等は共に戦え無かった。この砦で、国を守る役目があったが為に……。


 彼等は国と家族を思い、兵士となった者達。街の危機に、内心では不安を感じていた事だろう……。


 だからこそ、ボクに対して特別な思いがある。その思いを伝える機会を、ずっと待っていたのだ……。


 だから、ボクはもう少しだけ、彼等の気持ちに付き合う事にした。


 マジック・バッグから杖を出し、その杖を彼等に掲げて見せた。


「我らに勝利を……!」


「「「我らに勝利を……!! 我らに勝利を……!!」」」


「「「アレク様、万歳……!! アレク様、万歳……!!」」


 彼等は腰から剣を抜き、全員が手の剣を掲げる。


 そして、口々に叫ぶ。皆の勝利を祈り、ボクへの感謝を伝える為に……。


 ボクは杖をバッグへ戻す。そして、彼等に背を向け、隊長さんの元へと向かう。


「どうでしょうか? 役目は果たせましたか?」


「ええ、勿論です……。ここまでして頂け、私も感謝で胸が一杯です……!」


 隊長さんは、手をグッと握り、ボクに笑みを向ける。その顔は、本当に嬉しそうだった。


 ボクは満足して、隊長さんへ微笑みを返す。


 そして、ボクは隊長さんの背後に視線を向ける。そこでは、ユリウスさんと、ボクの仲間達が待っていた。


「……流石というべきかな? 英雄が板について来たみたいだな」


「はははっ! ヴォルクスの皆は、こういうノリが好きですからね!」


 ユリウスさんへ、ボクは笑ってみせる。その返答に、ユリウスさんは苦笑を浮かべていた。


 そして、ギリーとギルも、ボクの元へと歩み寄って来る。


「熱い言葉だったな……。皆が勇気を貰った事だろう……」


「実に素晴らしかったです……。私も感動致しました……」


 ギリーとギルも、顔に笑みを浮かべていた。二人にとっても、満足の行く出来だったみたいだ。


 ボクは二人に頷いて見せる。そして、未だ盛り上がる兵士達に視線を向ける。


「さっきの言葉は、ボクの本心でもある。彼等には、本当に頑張って欲しいね……」


 ボクは、仲間達の為に戦っている。仲間が安心して暮らせる様に、ヴォルクスを守っている。


 それは、この場にいる兵士達も同じなのだ。彼等だって、大切な人の為に戦っているはずなのだ。


 ……出来る事なら、一人も欠けずに、カーズ帝国を退けて欲しいものだ。


「さあ、それでは、客間へ案内させて頂きます」


「……ええ、お願いします」


 ボク達は隊長さんに案内され、ヴァーム砦の中へと進む。そして、ボクは歩みを進めながら、密かに祈る。


 どうか、彼等に神の加護があります様にと……。

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