表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサシン クロニクル  作者: キツネ
火に飛び入る砂漠の虫
38/46

考察

九話


ウィルとシズネは、手元の火の明かりを頼りに、地下道を歩いていた。

地下道は思っていたよりも広く、それほど廃れてもいないことから、日常的に利用していた物なのだろうと、ウィルは推察していた。事実、この地下道は猛暑への対策であり、この集落でもつい先日まで住民に利用されていた物だ。

「…まただぞシズネ」

「…まただねウィル」

明かりで前を照らしてうんざりする。もう何度目かわからない別れ道だ。

地下道は恐ろしいほどいりくんでいて、まるで蟻の巣のようだ。今までかなりの時間をかけて進んできたが、いまだに出口の気配はない。

「次はどっちに行く? 右か、左か」

「右」

迷わないように、シズネは選んだ道をメモしてから道を進む。

道を明かりで照らすが何も見えない。やはり道のりは長そうだ。

「…ここから出たとして、その後はどうする?」

「…」

歩きながらウィル達は考える。

そう、本来の目的は敵ウィザードの暗殺なのだ。しかし、今の状況は計画からかなり離れている。どうにかして、事態の立て直しが必要だった。

「まずは、この集落のことから整理しよ」

「と言うと、影鬼か」

「うん。ここはランドール帝国からかなり離れてる。影鬼がいるのは不自然」

影鬼については未だに不明な点が多い。しかし、帝国の領土でなければ活動できないのは確実とされていた。これは今までの経験と、帝国内からのリーク情報を照らし合わせた結果で、事実ウィル達も学校でわっているほど、確かな物とされている。

しかし、現実として影鬼はこの地での活動ができている。

「仮に領土外の活動が可能なら、もっと大きな戦いに出してくるはずだ。こんな辺境の地に出してくる意味もわからないな」

キーアと連合国からすれば、国境を決める大事な場所だが、帝国にとってはさほど重要でもない。砂漠ということもあり、土地的価値も低いだろう。

「となると…偽物か?」

「それはない」

シズネが即答する。声には確信に近い物が感じられた。

「あれは本物だった。間違いない」

「以前にも見たことがあるのか?」

「…」

珍しくシズネが黙りこむ。

(よほど聞かれたくないのか?)

「悪い。踏み言ったことを聞いた」

「?」

「どうした?」

「…ううん。そんなことで謝ると思わなかったから」

「そんなことって…」

言いかけてウィルは考える。

(待て。俺は何で謝ったんだ?)

さっきの問いかけは、シズネの発言に確信を持つために必要な事だ。言って当然で、ウィルに落ち度は無いはずだ。

「…フフ」

見ると、シズネが笑いをこらえている。

「…なんだよ」

「なんでもない」

「ないわけないだろ!」

逃げるシズネを、ウィルは半場やけになって追いかけた。



十話


「はぁ、つっかれたー」

赤髪の少女は上り始めた太陽を背に背伸びをする。目の前には、この集落の人々があつまっていた。皆、状況が飲み込めておらず、右往左往している。

「戦闘より、正直こっちをまとめる方がしんどいわね。少しは自分達で考えて行動してほしいわ」

愚痴をこぼしながら、朝食のパンをかじる。味はお世辞にも旨いとは言えない。

「はぁ、せめてチーズトーストにすれば…。って、言ってても仕方ないか」

少女は残りのパンを一気に食べると立ち上がり、集落の人々に向き直った。

「全員聞きなさい! 先程偵察の者が村を回って見たけど、影鬼の姿はなかったわ! 日中の活動が出来ないのは確かなようよ!」

人々から歓喜の声が上がる。

「しかし、状況は昨日と変わってはいない! 今夜も上手く凌げるとは限らない! そこで私たちは、この集落を放棄し連合国の町、シダに逃げることにする!」

今度は人々から困惑の声が上がる。

当然のことだ。それはつまり、少女らがこの集落の人々を見捨てると言っているのも、同然のことだからだ。

「そこで、あなた達にも選択指を提示する! 一つはこの村に残り、影鬼が去るのを待つ! 二つはキーアの国境まで自力で逃げる! 最後は私達と共にシダの町に来る! もちろんその場合は、亡命ということになるけどね」

人々はやはり混乱しているようだった。

一つ目の提案はあって無い様なものだ。例え凌げても、もうこの集落は機能しないからだ。

二つ目もやはり不可能。ここからキーアまではかなりの道のりだし、第一防衛ラインは影鬼によってめちゃくちゃになっている。とても難民を受け入れられる状況ではない。

「共に来るものは直ちに荷物を整えなさい! 今から二時間後にはここを発つ! 以上!」


言い終わると、少女は小屋へと入っていく。そこは、連合国の偵察部隊が集まっている場所だった。

「さすがです、候補生殿」

偵察隊の一人が近づいてくる。

「まさか集落の者の事まで考えているとは。大半の者は大人しく付いて来るでしょう」

「そんなんじゃ無いわよ」

少女は地図を見ながらぶっきらぼうに答えた。

「こちらの情報がキーアに漏れて欲しくないだけ。万が一にもキーアにたどり着かれたら、折角の情報をばらすことになる。それは私の進級に関わるから。わかったら早く下がりなさい」

隊員はあっけにとられたようだ。そのまま何も言わずに奥の方へ戻っていく。

(シダまで約半日。予定通りなら日没までに充分間に合う。ただ気がかりなのは…)

少女はその後も地図を睨み続けていた。



(おっかねぇ~!)

少女に声をかけた隊員は、部屋の端に座り朝食をたべていた。

(あれの下はきついだろな~。まったく、我らが隊長とは大違いだ)

「おいお前!」

「っ、はい!」

食べかけたパンをつまらせながら返事をする。

「集落の人数を調べておけ。今すぐにだ!」

「はい、わかりました!」

残りの朝食を諦め、外に出ていく。

(はぁ、何で僕がこんなことを)

何を隠そうこのしたっぱ隊員こそが、自称情報の神、マックスだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ