開戦
三十三話
町の人々が寝静った真夜中、ウィル達四人は、指揮官のいる北東部の駐屯所に来ていた。
「私が指揮官を問い詰めるから、あなた達は外で見張りをお願い。交戦になった場合は指揮官を捕獲する。ただし、ピエロの売人が現れたら、そちらを優先。いい?」
「わかった」
「承知しました」
「はい」
ウィルとメイド、執事が応える。
リビアは周りに誰もいないことを確認すると、駐屯所に入っていった。
「入口を見ててくれ、オレは駐屯所の周りを見てくる」
ウィルはメイドと執事にその場を預けると、駐屯所の裏手へと回りながら、所々にある窓から中の様子を探っていく。
(おかしい)
ウィルはすぐに異変に気付いた。駐屯所の中に誰もいないのだ。
(ピエロの仕業か?)
メイド達に知らせるため、戻ろうとした時だった。
ドン!!
駐屯所内から爆発音が聞こえた。
「始まったか!」
ウィルは入口へと走る。到着した時、メイドと執事はすでに戦闘を始めていた。
「まったく、爆弾まで使うなんて。隠す気はないってことかしら」
指揮官の部屋には土煙がまっている。リビアが部屋のノブを回した瞬間、爆発したのだ。部屋一つが吹き飛ぶ爆風をもろにうけたが、リビアはアイテムで水の盾を展開し、軽々と防いでいた。
「…そこ!」
後方に水を高圧で飛ばす。水を受けた相手は吹き飛んで、壁にぶつかった。
「…おやおや?、手加減でもしたのですか、ぬるい攻撃ですね」
起き上がりながら話すのは、トランプを片手に持つピエロだ。
「あなたがジャックの言っていた黒幕ね。大人しく捕まってもらうわ」
リビアの周りに、水の槍が複数浮かぶ。
「ジャック、はてどなたでしょうか? しかし、まさかウィザードのリビア様がいらっしゃるとは。これは、手厚くおもてなしをしなくてはいけませんね」
ピエロはトランプを取り出すと頭上に掲げた。
「申し遅れました。私、名をダイヤと申します。以後お見知りおきおきを」
「あなたと話す気は無いわ。とっとと、指揮官を出しなさい」
リビアは展開させた無数の槍を、ダイヤに向かって飛ばす。槍の一つ一つが、高圧で圧縮された水の塊だ。一発でも命中すれば、意識をもっていかる。
槍が命中する寸前、ダイヤはトランプを前方に投げ捨てた。
「霊長の四盾」
投げ捨てたトランプが、青い光を纏った盾に変化する。盾はリビアの槍を全て弾きかえした。
「最高位魔術! それも一人で発動するなんて。あなた、まさかウィザード?」
リビアは更に槍を精製し、警戒する。数は先ほどの倍はある。
「いえいえ、私はただの魔術士で薬の売人です。確かに普通の人間に比べると、多少の差異はありますが。それと、先ほどの要求ですが、あいにくビーンズ様は、すでにお亡くなりました。面会はかないません」
ダイヤは笑いながらもう一枚、トランプを取り出した。
三十四話
ウィル達は入口を守るように戦っていた。相手はこの駐屯所の兵士だが、様子がおかしい。
「彼ら、まるで意志が無いように思えます」
メイドが使う武器はチャクラム型のアイテムだ。ウィルと同じように、アイテムに属性を乗せて戦うタイプで、メイドは常に炎をまとわせている。
「動きが単調です。おそらく捕まえた者と同じように、操られているのでしょう」
老執事が持つのは、ナックル型のアイテムだ。使っているのは硬化の魔術だけだが、自前の格闘技で次々と敵を無力化していく。
兵士達を倒すのは簡単だったが、数が多い。
「キリがないな。オレがリビアの加勢にいこう。ピエロを倒せば、こいつらも止まるだろう」
ウィルは二人に提案する。
「わかりました、リビア様を頼みます」
老執事もメイドも異論は無いようだ。
「入口は任せたぞ」
ウィルは駐屯所の中に入っていく。
建物内はリビアの魔術による轟音が響いていた。お蔭で、方向がわかる。迷わずにたどり着けそうだ。
「さて、問題はここからだな」
ウィルは音のする方へと、通路を走っていった。




