決闘して
勇者様はクラス選定具に手を掛けています。
勇者様の頭上には【ステータス】と同じように青い光に白い文字で沢山のクラス名が書かれています。
通常は一人につき一つか二つのクラスが書かれている筈なのですが、さすが主に選ばれたことはあるということでしょうか?
さてクラスという物は加護や称号とは違いの一つは一人につき一つのクラスしか選定出来ない事。
殆どの場合は産まれてから次の日までにクラス選定をします。
そうするとレベルが上がる度にクラスボーナスが入るからです。
なのでレベルが0の時にクラスを決めておくのです。
また初めのクラスはその人の才能やスキル、役目に合ったクラスがクラス選定具に表示されます。
剣のスキルがあれば『戦士』、そしてレベルが上がれば『剣士』へと変わります。
料理のスキルがあれば『料理人見習い』、そして『料理人』へとなるのです。
王族として産まれれば『王』というクラスも表示されます。
何もスキルが無くても『村人』が表示されます。
そしてクラスはその人の経験や環境によって変わっていきます。
偶然にも加護や称号と関係したクラスに変化する場合もあるのです。
さて勇者様のクラスについてですがあちらの世界でやってきた事が反映されていると考えれば妥当なのかもしれません。
それでも18でここまでのクラスを表示出来るなんて。
やはり勇者様は多才なようです。
さてどのようなクラスが書かれているのでしょうか?
「・・・っえ!?」
何ですか、これ!?
『魔王』
『廃人』
『破壊者』
『神の使者』
『アイドル』
『狙撃手』
『怪物』
『放火魔』
『殺人鬼』
『聖者』
『奇跡の子』
『救世主』
『世界を知る者』
『鬼』
『歌舞伎者』
『独裁者』
『頭首』
『強盗』
『製作者』
『科学者の卵』
『狂者』
『将軍 』
『女王』
『星を砕く者』
『理を歪める者』
『外道』
など
戦士系も魔法使いも見習いも無いですね。
全て特殊系・・・ですか。
しかも『魔王』や『怪物』、『外道』とか勇者様が持っているのはおかしいと思うのですが。
確かにこれだけのクラスが表示されるのですから召喚しただけはあると言えなくも無いですが少し危険ではありませんかね。
もしかしたらあちらで極悪人だったのかもしれませんね。
いえ、それより『勇者』のクラスを見つけなくてはいけませんね。
・・・勇者様、あちらの世界で何をやってきたのですか?
クラスが1000を超えるなんて想像もしてませんでしたよ。
基本能力は低いのにどんな経験をしてきたのですか?
『勇者』のクラスも最後の最後に書いてありましたから時間が掛かりました。
『勇者』より強力なクラスが無いことを祈りますよ、本当に。
「では勇者様、クラスを『勇者』に選定しますよ。
またクラスは違うクラスに選定し直せますが勇者様はあまり変えない方が良いですよ。
『勇者』のクラスはその人が勇者、ルクマス様の力を受けた本物の勇者の証でもありますから。
成長すれば『◯◯の勇者』になりますから気にしなくてもいいのですが。」
【クラスが『勇者』になりました。】
【勇者の加護を受けました。】
【勇者の加護を受けました。】
【勇者の加護を受けました。】
【勇者の加護を受けました。】
【勇者の加護を受けました。】
「「「「「え?」」」」」
嘘!?
勇者様が加護を!?
五回、世界の声が出たという事はこの子達と私が加護を受けたと考えて良いのでしょうが勇者様強くありませんよね!?
・・・これが異世界から来た人の力なのでしょうか?
もしかしたら私達とは何処か違うのかも知れませんね。
「ロニー様、【ステータス】が使えると言っていましたよね。
ロニー様の勇者の加護を視てくれませんか?」
「は、はい!」
【ステータス】
ロニー様が自分に【ステータス】を掛け目を閉じます。
そう本来の【ステータス】は今のように外に何も出ません。
視界に出てくるといいますか。
何もない所から自分の情報が書かれた青い光が出てくるのです。
それも本人にしか見えない形で。
なので見えるものが二重になって青い光に何が書いてあるのか視えにくいのでロニー様のように目を閉じるのです。
すると外の景色がなくなりはっきりと視えるようになるのです。
「ロニー様、勇者の加護の効果が視えたら教えて下さい。」
「はい。
・・・よし、視えた。
あの、では、いいますね。
勇者の加護の効果は・・・。」
〜 〜 〜 〜 〜
私達が離れから出た時ブラナ卿と一人の騎士がこちらを見ていました。
どうやら私達が出てくるのを待っていたようです。
「あのー、ブラナ卿、この子が勇者なのですか?」
「ムフ、そうらしいぞ、アグ二。
手加減せずにやってしまうがいいぞ」
アグニ様。
確かブラナ卿の騎士団の団長の方だった筈。
剣の技術が高い方ですからスキル無しでも剣での攻撃は勇者様にとって危険ですね。
「いや、あのですね、ブラナ卿。
【封技結界】や【不痛結界】、【同格結界】を張るとしても勝負が見えているといいますか。
魔力の波動もあまり感じられませんしはっきり言って弱いですよ、あの子。」
「なら勝てば良いのだ。」
「か弱い女の子に勝っても不評しかありませんよ。」
「何を言う?
さっきまで勇者と闘えると嬉しそうだっただろう?
何故今更になって止めたがるのだ?」
「ムキムキの大男を想像してたんです!
異世界から来た強者だと思ってたんですよ!
」
勇者様を女の子と誤解しているようですね。
ブラナ卿には男の子だと伝えた筈なのですが忘れてしまったのでしょうか。
「第一、勇者は男だぞ。」
忘れていなかったのですね。
「尚更闘いたくありませんよ!」
「あら、ブラナ卿。
その人は嫌がっているではありませんか?
こちらも勇者様を鍛えなければなりませんので決闘を止めにしますか?」
「ムフ、少し待って下され、口伝之巫女サマタ様。
さぁ、やるんだアグニ!
でなければ勇者から逃げた事になるぞ!」
「あーもー、やればいいんでしょう。
ちっくしょう!」
自棄にならないで抵抗してくださいよ。
「・・・では結界を張る。
ルールはどちらかを結界から出す、気絶させる、参ったと言うまで続ける。
制限時間の30分になったときは引き分けとする。」
「おぉ、少しお待ちくだされ。
周りの騎士達を静かにして中央で決闘をしましょうぞ。
おい、試合や訓練をしている者達を止めろ!
今から勇者の闘いが始まると伝えろ!」
ブラナ卿が近くの騎士に伝えすぐに周りが静かになりました。
そして私達は訓練所の中央に向かいます。
騎士達が勇者様を探しています。
私の後ろにいる方ですよ、皆さん。
「では結界を張る。
両者、準備はいいか!」
「・・・」
「さっさと張ってくれ。」
【封技結界】
【不痛結界】
【同格結界】
バーシャンク様は二人を見て結界を張っていきます。
「ゆ、勇者様、頑張って《勝って下さい》!
応援してます!」
ロニー様がそう勇者様に叫んでいます。
頼みますよ、勇者様。
負けたら面倒な事になりますからね。
・ ・ ・ ・ ・
そして私達を除いた皆さんは敗者が倒れるその瞬間まで信じられない思いで見ていました。
始まってから瞬き一つすらできない一瞬の出来事が起きたのです。
その敗者の名前は、
「ア、アグニ!
立つのだ、アグニ!
くそ、何故だ。
何が起こったのだ!?」
スキルレベル
スキルの熟練度を示す数値。
スキルレベルは1から10までである。
スキルレベルを上げると新たなスキルや上位スキルを覚える事がある。




