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13.無邪気な子?

 亜希とはもう三日も会ってない。風邪がまだ治らないみたいだ。

 こうも風邪が長引くとさすがに心配になる。今日も欠席してたらお見舞いに行こうかな。

「キーィちゃんっ」

「ひっ」

 登校してきて早々ハマちゃんに見つかってしまった。逃げようとした時、誰かの腕で羽交い締めにされて動けなくなる。

 私の背中にぴったり張り付いているのは吉野さんだ。またハマちゃんと手を組んでいたんだ!

「逃がさないよ?」

 ハマちゃんの無邪気でいて邪悪な笑みがにこりと覗き込んでくる。

 くすぐられる……!

「えい」

「っ、やっ……あはははははははっ! だめえええっ!」

 亜希が休むようになってから毎日こんなことが続いている。吉野さんに身動きできないようにされて、時間が許す限り容赦なくすぐられて……。

「もうだめなんだって! 本当にやめっ……んあっははははははっ!」

 指の先まで刺激が走る。神経が言うことを聞かなくなって力が入らない。

「誰か、助けて……」

 この日も予鈴が鳴るまでくすぐりは続いた。

 亜希は今日も欠席した。



 給食の時間が終わっていつまでも教室にいるとまた捕まってしまう。私はハマちゃんの目を盗んで教室を抜けだした。

 確かに私はMかもしれないけど、あんな仕打ちにはこれ以上耐えられる気がしない。

「ううっ……」

 腹筋がすごく痛い。休み時間のたびにくすぐられて大笑いしたせいでひどい筋肉痛だ。

 どうしたらやめてくれるんだろう。ハマちゃんは私が喜んでると思ってるから何を言ったって聞いてもらえないし、他のクラスメイトも面白がって止めてくれないし……困ったなぁ。

 亜希がいたならハマちゃんを止めてくれたのかな。便乗して一緒にくすぐってくるような気もするけど、こんな心細い思いはしなかっただろう。

 この昼休みは華宮先輩に会うことにした。先輩に思いっきり甘えて疲れを癒やすんだ。

 美術室まで来たものの、鍵が掛かっていて扉が開かない。たまに来る時はいつも居たから、てっきり今日も美術室で絵を描いてると思ったのに。

 教室にいるかもしれない。どのクラスにいるのかは知らないので、二年生の教室を一つ一つ探して回ることにする。

 華宮先輩はあっさり見つかった。

「先輩!」

「あら、キィちゃん」

 先輩は机にスケッチブックを広げていた。覗いてみると教室の様子が鉛筆で簡単に描かれてある。先輩は何でも描くんだなぁ。

「一人で来たの? 亜希ちゃんと一緒じゃないなんて珍しいわね」

「亜希は風邪で、もうずっと休んでるんです。休みが明けてから一度も会ってないし……」

 すると何を思ったのか、先輩は私の頭に手を置いて優しく撫でてくれた。

「寂しかったのね。よしよし」

「子供扱いしないでくださいっ」

 口では嫌がってるように言ってしまったけど、本当は自分でもびっくりするほど嬉しかった。胸に温かいものがじんわりと広がっていく。

 来て良かった。



 放課後もなんとかハマちゃん達の目を盗んで教室を抜けだした。今日は亜希のお見舞いに行くんだから、捕まってたまるもんか。

 途中でスーパーへ寄ってりんごとバナナを買っていった。いっぱい食べさせて元気と栄養をつけてもらおう。

 学校から大して遠くない場所に亜希の住んでいるマンションはある。なかなか古いマンションで、エレベーターなんか今にも壊れそうで乗っていて不安になる。

 扉の前まで来てすぐにインターホンを押す。だけど返事がなければ誰かが出てくる様子もない。もう一度インターホンで呼び出してみても同じだった。

 どうやら留守にしているみたい。家にいないとすると、病院にでも行っているのかな。

 せっかく来たんだからちょっとだけでも亜希に会いたい。帰ってくるのをしばらく待ってみるけど、夕方になっても姿が見えない。

 ……もう帰ろう。

 せっかく買ったんだし、果物だけでも置いて帰ろう。カラスに見つからないようにレジ袋の口を固く結び、ドアの取っ手にひっかけておく。袋にはサインペンで「お見舞いです。キィより」と書いておく。早く風邪を治してくれますように。

 明日こそは亜希に会えることを願いながら自宅へ向かって歩き始める。マンションを出たあたりで手元にちょっとした違和感を感じた。

 どおりで身軽だと思ったら、うっかり教室に学生鞄を忘れてしまっていた。学校を出る時はハマちゃんに捕まらないように必死だったから気づかなかったんだ……。

 今日は宿題もあるし、置きっぱなしで帰るわけにはいかない。面倒くさいけど学校に戻らなきゃ。

 十分ほど歩くとすぐに学校が見えてきた。家から近いって羨ましいな。

 門を過ぎて玄関に入り、靴を履き替えて自分のクラスへ向かう。


「あっははっははははっやめてぇえへひははははっ」


 廊下に誰か女の子の大笑いする声が響いた。

 最近はくすぐりが流行ってるのかな? だとしたら私とハマちゃんが原因かもしれない。そんなことを考えながら教室へ近づくたびに、笑い声がどんどん大きくなっていくことに気づく。

 ひょっとして、今くすぐられてるのって……。

「やめてっ、かんべんしてぇぇぇぇっ!!」

「だーめー」

 そっと覗いてみると、ハマちゃんが誰かに跨ってくすぐっていた。

「キィちゃんを逃がしたんだから、罰ゲームはちゃんと受けてよね」

 私の代わりに、いつもハマちゃんに協力している吉野さんがくすぐられていた。いつの間にか私をしっかり捕まえておくことが吉野さんの役目になっていたらしい。

 あんなに大暴れするほどくすぐられて、可哀想に……。

 同情はしたものの、私だってくすぐられるのは嫌だ。だから素直に捕まってあげるつもりはない。これからも生け贄にすると思うけど、その時はよろしくね。

 さて、ハマちゃん達の目を盗んでどうやって鞄を持って帰るか考えないと……。

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