奪われたココロ
誰もがこの異常事態が収まってほしいと願っていたが、その願いは通じることはなかった。電気が通っていない暗い部屋の中で、誰も電源を入れていないのにモニターが勝手に動いた。モニターが映しているのは、砂嵐だった。
「何だこりゃ?」
「通称砂嵐。千年以上前にテレビ局で使われていた映像です。放送が終わった後で、この映像を流していたと資料で見ましたが……」
ナイトはモニターを触りながらトレトイルにこう言った。すると、突如砂煙の映像は消え、そこには黒装束を身に着けたココロの映像が映った。
「ココロ? これは一体なんのつもりだ?」
ナイトがこう言うと、映像に映るココロはナイトたちの方を振り返った。その顔を見て、ナイトたちは驚きの声を出した。ココロの顔はかわいらしい十代くらいの少女の顔ではなく、不気味な仮面になっていたからだ。その仮面は喜怒哀楽を現すがごとく、表情を変えていた。すると、その仮面の主は声を出した。
「こいつの名前はココロと言うのか。この粗大ごみの中には、それなりにネーミングセンスのある奴がいるようだ」
謎の人物の言葉を聞き、ナイトは思わずモニターに近付いた。
「誰だお前は⁉ ココロの不調の原因は、お前なのか⁉」
「まー落ち着け。ココロと言う奴の体は、俺が一時借りることにした」
「借りることにした?」
「落ち着け、ナイト君。ここは私が対応する」
そう言いながら、ウエートがモニター前に近付いた。
「とりあえず、私の質問に答えていただきたい」
「いいぜ。何でも質問すればいい」
「まず、君は何者だ?」
「おいおい、最初からとっておきの質問に答えなきゃいけねーのかよ」
「私はネタバレされても怒らない性格でな。重要なことは先に知っておきたいんだ」
「そうかい。そいじゃ、俺のことを教えてやるよ」
この言葉を聞き、誰もがモニターを凝視した。
「俺はただの石。今しがた、テメーらが勝手に人の体の一部を採掘して、この粗大ごみの中に持ち込んだ一部さ」
「それじゃあ、君はあの隕石の一部と言うことか⁉」
「一応な。隕石にも意識っつーもんがあるんだよ」
「たかが石の分際でふざけんじゃねぇぞ‼」
ここで、ルコールが叫び声を発しながらモニターを殴った。鈍い音が周囲に響いたが、モニターに異常はなかった。
「ケッケッケ! 中にはゴミらしい性格のバカがいるんだな!」
「テメェ、石ころのくせに俺をバカにしやがって‼」
「落ち着け。モニターを殴ってもあいつにダメージはないぞ。手が傷付くだけだ」
怒り狂うルコールを、後ろからベルンゼが羽交い絞めにして動きを止めた。荒く呼吸をするルコールをベルンゼが落ち着かせる中、ウエートが咳払いをして話を続けた。
「君の要望はなんだ? 宇宙に逃がしてほしいのか?」
「そんなんじゃねぇ。また何もない宇宙に出されるのはごめんだ」
「それじゃあ、私たちと一緒に地球に行くか?」
「ちょっと、こんな得体の知らない奴を地球に持ってきたら、何をするか分からないわよ」
と、ティアナが話に割り込むように声をかけた。その声に反応するかのように、謎の人物は答えた。
「大丈夫だ、俺には征服趣味はない。俺の要望は一つ。今から俺が開くゲームに参加しろ」
「ゲームだぁ? テメェ何様のつもりだよ」
ルコールがスパナを持って近付いたが、再びベルンゼがルコールを止め、ナイトもそれに手伝った。モニターに映る謎の人物は、笑いながら話を再開した。
「俺は俺様だ。おっと。名前がないと不便だな。そうだな……こいつの名前はココロと言うらしいから、それを逆にしてロココだ。それがいい」
「ロココ。君が行うのは一体どんなゲームだ? それで、君の望みを叶えたらヤヴァーイ号を元に戻すと約束するか?」
ウエートはモニターに映るロココを見ながらこう聞いた。ロココは笑い声を出しながら、この問いに答えた。
「まーな。まぁ俺が満足するまでな。そしたら、このポンコツの粗大ごみも元に戻す。そんでもって、このAIのガキに体を返す」
「約束は守るか?」
「あたりめーだろうが」
ロココの返事を聞いた後、ジギーハのことが不安になったトレトイルはモニターに近付いた。
「おいちょっと! ジギーハさんはどうしたんだ? あんたと一緒にいるはずだ!」
「そいつには死んでもらった。あの頭のいかれたクソジジイ、カエルを解剖するかのように俺の体をいじくりまわすからなぁ」
返事を聞いたウエートの表情が変わった。ウエートはすぐにでもモニターを殴ってやろうかと考えたが、無意味だと思いだし、拳を振るわせながら怒りをこらえた。
「とにかく、君の望みを叶えたらここから出て行くんだな?」
「おうとも。それじゃ、早速ゲームの説明をする。この粗大ごみには、確かワークルームってのがあったよな? そこの倉庫に集まれ。ニ十分もあれば動けるはずだ。死人以外全員集まらなかったら、全員殺す」
と言って、モニターの電源は消えた。その直後、灯りが付いた。
その後、ナイトたちは仕方なくワークルームの倉庫に向かっていた。
「クソッ、どうしてこんなことに⁉」
と、ナイトの後ろにいるルコールが何度も同じ言葉を呟いていた。その声が聞こえたのか、ウエートが振り向いてこう言った。
「こうなったらやるしかない。上への話は、全部終わったら俺が話す」
「いんですか? あんたにそんなことを任せて?」
「私は船長だ。何か起きた時の責任を、背負う覚悟はできている」
そう言ってウエートは足を進めた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




