第10話 復讐を成し遂げるために
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「この後の話をしましょう。まずは、王都に行ってあなたの復讐を一つ終わらせつつ、私の力を回収する」
「ああ。王国への恨みについては、その咎の全てを王族と騎士団長に負わせる」
民には罪がないからな。どうこうするつもりは無いし、彼らを守る貴族も生かす予定だ。
無辜の市民に累が及んでは、領主の子として、父様たちに顔向けできないからな。
立ち塞がるなら容赦はしないが、確実に殺すのは、王族と父様の仇、騎士団長だけ。
「封印された力は、楔となっているものを破壊すればいいんだったな。検討はついてるのか?」
「いいえ。その調査は必要ね。宝具なのか、土地そのものなのか、もしかしたら神獣の類がいるかもしれない」
神獣……。もしそうなら、かなり厄介だ。
厄介だけど、その線は考えなくていいだろう。
「貴族時代にも王都付近に神獣がいるような話は聞いたことが無かった。封印場所が王都の辺りで間違いなければ、別のものが楔になっていると考えて良いだろう」
「なら安心ね。私の力はまず間違いなく、王都周辺に封印されているもの」
封印場所についてはルナの感覚だけが頼りだからな。信じる他ない。
とすると、それらしい物をどうやって探すかだ。
楔については見れば分かると言っていたけど、そもそもルナに見せるために目ぼしをつけないといけない。
まさか王城やら何やらに闇雲に侵入して一つ一つ見ていくだなんて、そんな現実的でない方法を採るわけにもいかないしな。
「まあ、楔については情報を集めないとどうにもならないでしょうね」
「だな。なら、あとは俺のターゲットについてか」
王族と、騎士団長だ。
こいつらは何が何でも皆殺しにする。それが変わることはない。
強いて優先順位をつけるなら、最優先は、騎士団長、父様の仇だ。
ただ、王族が複数いる以上、逃がさないためには楽な相手から一人ずつ、他にバレないように殺していく方が確実だろう。
「王族の家族構成は?」
「まず、国王には二人の妃がいる。それから、王妃二人にそれぞれ二人ずつの子供。王子が三人と王女が一人だな。臣籍降下した国王の兄弟もいるけど、こいつらは神々絡みの件には関わっていないだろうからどうでもいい」
「つまり、七人殺せばいいわけね」
そういうことだ。
ただし、警備の厳重な、と付く七人だけど。
できるなら、王族全員が城にいるタイミングを狙いたい。
城にいる間なら、単独行動になる瞬間もあるだろうし、探し回らなくて済む。
まあ、一人二人なら外にいても、ルナの飛翔魔法で追いかけられる。
「城にはあなたも入ったことがあるのよね?」
「一応な」
好きに歩き回ったわけではないから、知らない場所も多いだろう。
これについては最悪、外から屋根伝いにでも回れば問題ない。
とすると、だ。
「集めるべき情報は、封印の楔らしきものについてと、王族の大まかな行動予定、か……」
「骨が折れそうね」
「情報収集が一番大変かもしれないな」
裏の情報屋にでも接触を図るか?
そういった黒い組織も王都にはあるはずだ。
問題は、一見で取引に応じてくれるかどうかと、おそらく報酬額で足元を見られること、それから、俺の情報を多少渡すことになってしまうことか。
一つ目が一番の問題だな。
二つ目については、Bランクの報酬と屋敷から持ち出した資産でどうとでもできる。
三つ目についても、ルナが一つ目の封印を解いた時点で神々にバレるから、教会経由で他国の連中に伝わる。
やはり、情報屋に頼れるなら、それが得策か。
「ともかく、明日にでもこの町を発とう。道中で依頼を受けて金を稼ぎつつ、情報も集める。これでいいな?」
「ええ。気長にやりましょう」
女神の気長か。人間の俺が付き合える範囲で頼みたいところだ。
それから数か月かけて、王都まで移動した。
移動時間の辻褄合わせでルナの飛翔魔法に頼れなかったことが主な原因だ。
徒歩や馬車での旅となると、やはりレフトア王国は広い。古い大国なだけはある。
たった今くぐった平均よりもずっと高く巨大な市壁も、古い時代の名残だ。
遥か昔には、この王都レフティアーナが最前線、つまりは、旧シーリング領にあたる場所だったらしい。
もっとも、当時の敵は他国よりも魔物だったようだけど。
その数千年の歴史を誇る古都には、溢れんばかりの人が集っており、流れに逆らって歩くのが難しそうだ。
「これだけ人がいれば、情報も集めやすそうだな」
「まあ、そうね」
なんだか拍子抜けしたような顔をしているけど、何かあったか?
「東京とまでは言わないけど、もう少し発展してると思ってたのよ」
言われてみれば、都会と聞いて想像するほど、建物が高くない。
密度で言えば近いものがあるが、それでも、一軒一軒の横幅や庭の面積は日本の都会に比べてずっと大きい。
「まあ、こっちには魔物がいるし、そもそもの人口が違うからな」
人の領域が比較的狭いとはいえ、まだ際限なく上に延ばすほどではない。
技術的には、魔法があるから可能なんだろうが、高くしすぎると今度は空を飛ぶ魔物への防御が弱くなる。
場合によっては、遠くの魔物をおびき寄せる目じるしにすらなってしまうだろう。
それでも城はある程度高く作るのが、人間の見栄というか、性というか。
「とりあえずは宿だな。その後は散歩がてら、街の構造把握でもし――」
「あっ、お兄さん、ちょっとごめん、背中借りるよ!」
なっ、急になんだ!?




