37話 真のラスボスが現れた!(俺たちの戦いはこれからだ!)
「わー!!勇者様―――!!!」
「勇者の誕生だぁぁぁぁぁぁ!!」
「流石聖王様の娘!!」「まさかうちの学校から勇者がでるなんて!!」
闘技場の客席から大歓声があがり、私の前にはエルフの大賢者が跪いています。
こんにちは。セレスティア・ラル・シャンデール(10歳)です。
マークの断罪式も終わり、めでたしめでたしになると信じて疑わなかったのですが、なぜか父による断罪が終わり、マークが兵士に引きずられていかれ、私も撤退しようとした途端。
「ちょっとまったぁ!!」
と、結婚式場に乱入してくる元恋人みたいなノリで呼んでもいないのにそれは現れました。
ゲームにて、勇者に「君は勇者だ!さぁ私と一緒に旅だとう!」と押しかけ女房よろしく、押しかけ賢者をしていたエルフの大賢者です。
それがなぜか今。
「今の素晴らしい戦い、しかとこの目で拝見させていただきました!!さぁ貴方こそ勇者です!!」と、私を勇者認定してしまったのです。
なんですか、この急展開。ついていけません。
推理小説を読んでいたら、最後の最後の推理パートで今まで一度も登場した事のなかった人物が実は犯人だったんだー!「ががーん」と、言い出されるくらいわけがわかりません。
大体ゲーム上の本物の勇者がどこかにいるはずですが。
あと4年待ってください。あなたの大好きな本当の勇者が現れるはずです。
それにゲーム上ではもっと威厳のある登場のはずです。
こんな軽いノリのキャラではなかったはずです。
何パリピっぽい登場しているんですか!?
この賢者、わりと適当に勇者認定していたのでしょうか?
「さぁ!勇者様!私と一緒に世界のために戦いましょう!」
と、テンション高く張り切る大賢者。
勇者の誕生とエルフの大賢者の登場に喜びにわく会場に、私がドン引きでフレンドに助けを求めて視線をむければ「やはり貴方が勇者だった!」と感動するクライム君。「流石はセレス様ですっ!!」とジャン。「やっぱりねー」「俺もついていくぜ!」と、リーチェとリカルド。
「おめでとう、セレスちゃん」と涙ぐむアリーシャ。
やばいです。助けを求めるどころか、彼らまで私が勇者であることに感動しております。
コマンドで「助けを求める」を選んだら「余計悪化してしまった!」と表示されるくらいピンチです。
大体もう10年も前に滅んでいるものをいまさらどうやって倒すのでしょう?
私を無視して勝手に勇者フィーバーしているこの会場で「実は魔王倒しちゃったの★てへ」と言える勇気は私にはありません。
「このエルフの大賢者ファンバード、勇者である貴方に付き従います」
と、私の手を取る大賢者に、歓迎ムードの会場。
父も流石にエルフの大賢者には口をだせないようで、困った顔をしています。
セディスに視線を向けたら露骨にそらされました。
彼も助けてくれるつもりはないようです。
コレはまいりました。0歳の時に何の考えもなく魔王を倒してしまったツケがここにきてしまいました。
世間一般では魔王が滅んだ事が知られていないのです。
そんな大事な事をなぜ私は世間一般に伝えてなかったのでしょう。
自分の中ではすっかり過去の話になってしまっていて、世間ではまだ魔王の脅威があると思っているとは思いもよりませんでした。
やばいです。まずいです。マジでピンチです。
これは何かを適当に魔王に仕立て上げて、魔王を倒したと装うしかありません。
人生の新たな目標ができました。
どこかで生き残っている魔族に濡れ衣をきせて魔王にして、このパリピ賢者の前で倒す。
それが新しい目標です!まだきっとどこかに魔族が生きてるはずです!たぶん!
--いえ、目標ができてもまったく嬉しくありませんが。
「さぁ、勇者の誕生に皆さんエールを!!」
と、パリピよろしく会場を盛り上げる賢者の言葉に
「ゆうしゃ!ゆうしゃ!」と勇者コールをあげる会場の皆さん。
なんですかその一体感。実は私のいない間にこっそり練習していたのでしょうか。
やはりパリピの世界は陰キャには想像もつかない世界だったようです。
夢で憧れていたパリピは陰キャにはまぶしすぎてキツ過ぎました。
パリピ怖い。
普通のフレンドだけでいい。
お家に帰りたい。
憧れは憧れているうちが花なのだと、誰かが言っていた言葉を思い出します。
理想と現実の違いを改めて実感し、少し大人になった10歳の夏の日の出来事でした。
~終わり~
■□■小話□■□
~セディスとシャティル~
「もう今更感がありますが陛下……なぜお嬢様にちゃんと力の事を聞かないのですか?」
「うん?聞く必要あるかい?」
「あるでしょう!?絶対あるでしょう!?
たぶんあれ魔王も一撃ですよ!?
人類通り越して、下手をすれば神を超える領域ですよ!?
勇者すらいらないでしょう!?」
「じゃあセディス。君は何故生まれた時にレベル180だったのかな?」
「え?それは……王族の血筋にいるか……」
言ってセディスは口ごもる。そう何故力をもっているかなど本人に聞いたところでわかるわけもない。
すべては生まれつきなのだから。
「陛下がおっしゃる事はよくわかりました。
ですが何故力を隠していたのかは聞く必要があるでしょう?
一歳から偽装していたのですよ?」
「ちゃんとそこでセレスは僕に伝えてくれてるよ?」
「え?」
「1歳から周りにあわせて偽装していたということは、普通になりたいと望んでる。
それがわかれば十分じゃないか。親としてそれ以上の事を知る必要があるかい?」
そう言って屈託なく微笑むシャティルにセディスは大きくため息をつくのだった。
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ラストまでお付き合い本当にありがとうございました!!






