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第92話 人間連合vs魔王軍

「『生命の樹』の方から魔力? なぜあそこで? いや、誰が?」



「誰でもいいでしょ。 それよりこいつらだ」



天界の軍勢の一番奥そこで全体の指揮を担当していたミカエルと後方支援とミカエルの補助をしていたサリエルの前に2人の人影があった。



「ふふふ、やっと私の好きな展開になって来た」



「うーんと? 久しぶりだね、2人とも。 あはは、久しぶりすぎて何話せばいいのかわかんないや」



「ベリアルの下っ端のガープとそっちは確か魔族のカーリーといったか?」



なぜか楽しそうな2人の少女に険しい顔でそう答えるミカエル。



「そうだよ。 覚えててくれたんだ。 まぁ思い出話に浸りたいのは山々なんだけどさ、帰ってくれないかなっていったら帰ってくれる?」



「ちょっと! 何いってんのよ、ガープ! せっかく楽しそうな展開になったのにー!!」



「いや、私は全然楽しくないし。 むしろ戦うのとかやだし。 ここでミカエルたちが帰ってくれたらいいなーと思って」



適当なことを言うガープに対してホッペを膨らまして怒るカーリー。

全くといっていいほど緊張感のない2人にミカエルはいった。



「愚問だな。 我々は正義を執行しに来たのだ。 ますます引くわけなかろう」



「ですよねー」



はぁとガープはため息を1つつくと右手を横に出す。すると何もない空間にいきなり槍が現れそれを手にした。 ミカエルに笑いかけながら言う。



「それじゃあ仕方ない。 死んでもらおうか?」






























「ふはは、どうした! もう終わりか? エルフっ!!」



天界勢力の最前線、こちらでは陣形おかまいなしに先頭を走るラグエルとそれを止めに来たジャンヌがベリアルの手下であり、以前ソウタを瀕死に追い込んだエルフのリンとミリアのコンビと現在交戦中であった。



だが、さすがに天使とエルフでは地力に圧倒的な差があり、ラグエルはまるで弄ぶかのようにリンをいたぶっていた。



「やれやれ、他のエルフの連中より強いようだが所詮エルフに変わらないな! オラっ!」



ラグエルの回し蹴りが綺麗に決まりとっさにガードをしたリンだが軽々と吹っ飛ばされてしまい、森の中に墜落する。




「はぁあ、準備運動程度にしかなりゃしない。 さて、あの堅物真面目しか取り柄のない聖女ちゃんの方はどうなったかな…… ん?」



ラグエルはもう一方のジャンヌが戦っているミリアの方に行こうとしたのだが、もくもくと上がる砂煙りのなかよろよろと立ち上がる姿があるのに気づいた。



「おいおい、まだやるってのか? お前はどうやったって俺には勝てねーよ」



やれやれと呆れたようにそうリンに向かって言うのだが、リンはおぼつかない手先で何やら毒々しい色の薬品が入った小瓶を取り出しそれを何やら特殊な器具に取り付け自分の腕に突き刺したのだ。



「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



リンは何やらとんでもない拷問を受けたような声をあげ、その場に膝をついてしまう。



「何やってんだ、お前? ついに頭の方もダメになったか?」



何をしたのかさっぱりわからないがラグエルは言葉とは裏腹に自分の魔力をあげる。



何かくるな、あの様子。



ゆっくりと立ち上がるリンの姿は遠目でもわかるほど変わっていた。

天使と同じくらい魔力が溢れ出し、ゆらゆらと陽炎のように揺らめく光がリンを包んでいる。



その様子に息を飲むラグエル。

彼が瞬きしたその一瞬、ラグエルは戦慄した。

何が起きたのかさっぱりわからなかった。

つい先ほどよろよろと立ち上がったエルフの少女が瞬きする間に自分の目と鼻の先まで一瞬で移動して来たからだ。

とっさにラグエルは防御の体勢をとるのだが、間に合うわけでもなくその光のように速い突きをまともに受けてしまう。



「くくく、やるじゃねーか、嬢ちゃん。 まさか心臓を貫かれるとは思わなかったよ」



胸を貫かれたはずのラグエルは不敵に笑い、貫いた剣を握る。



「舐めプなんてして悪かったな。 面白い! だったらこっちも本気でいくぜ!!」



ラグエルの身体から光がほとばしり、通常では考えられない量の魔力が放出される。




「なんで死なないのか、みたいな顔だな? 確かに天使といえど心臓を貫かれたら当然死ぬ。 だがなそれはなんの処置もしなかった場合だ。 俺ら天使は通常の生物なんざ比べ物にならないほどの魔力を持ってる。 その魔力をある一点に大量に集めれば貫かれた心臓を修復することなんざ容易いのさ。 まぁ俺らが死ぬときがあるとするならは 魔力がなくなって回復できなくなったときだな」



そう言うラグエルの容姿はカマエルやアザゼルが以前やったような神々しい服装になっている。



「そっちがドーピングやるってんならこっちだって奥の手を出すさ」



「…………」



ラグエルの言葉に全く答えず、リンは再び剣をカマエル。

そんな様子に気分の高まったラグエルは面白そうに言う。



「さぁ第二幕の始まりだ!!!」































ここはアシル海。 大陸がえぐられたようになっているいわゆる大きな湾である。

この湾の西側はアラビア王国の領土でここからはその目と鼻の先、晴れていれば肉眼でも湾の反対側が見えることがある。 しかし、今その対岸には黒くうごめく影がいくつも見えた。 すでに湾の東側は魔王軍によって占拠されており、アラビア王国はここ何日か文字通り水際でなんとか踏ん張っていたのだ。

しかし、兵士の疲労はピークに達しており、また兵糧もあとわずかであった。





「くそ、いつになったら援軍は来るんだ!」



若い兵士は疲労から来るイライラで乱暴に物に当たる。

それに対して彼の上官である老兵はまぁまぁと若い兵士をなだめる。



「落ち着け、文句を言ってもどうにもならないだろ。 それよりもう夜明けか…。 全然休まった気がしないな」



空はすでに海の向こうから白んで来ており、あと少しで朝日が昇ることを知らせている。

そのうっすらと明るくなりつつある海の向こう側がざわつき始めたのに老兵は気づいた。

蠢く黒い影はみるみる大きくなる、魔王軍の軍勢だった。



「やれやれ、相手も容赦がないな…。 む?」



ここまでだなと悟りつつ死ぬ瞬間まで現役と決めている彼は最後の最後まで抵抗するため武器を取る。

しかしその軍勢の横腹をつくように大量の爆撃が炸裂する。



「な、なんですか!? あれは!?」



「ようやく来たようだぞ。 待たせすぎだ」



突然の攻撃に若い兵は動揺するが、老兵はふっと薄く笑いタバコに火をつける。

魔王軍の横、湾の入り口に目をやると昇る朝日に照らされた大型の帆船の船団とさらにその旗艦に鉄で出来ていると思われる船を見ることができた。

その船団のマストの上にはアルシノエ王国の国家がはためいていた。



「ようやくの援軍の到着だ」



さらに轟音とともに彼らの上を大きな鉄の鳥が魔王軍の方にものすごい速さで飛んでいく。



「なっ、 あれ!?」



若い兵士は今自分が見ている光景が信じられないといった顔をしている。

その大きな鳥は何体も彼らの頭上を通過していき魔王軍の元へ飛んでいき、彼らの頭上から樽のようなものを落とす。

すると落下した樽のようなものは次から次へと爆発し、魔王軍の魔族達を次々と爆殺していく。



呆然と何が起こっているかわからないといったようにただただ援軍が自分たちが手こずっていた魔王軍を圧倒しているのを見ていた。

すると後ろから騎馬隊の一団がこちらへ来た。



「あなたは確か、アラビアの砂漠の猛将と名高いジータ殿では?」



その中から1人の青年が馬をおり兜を外し、老兵へ挨拶をする。



「あなたはスピカの。 これは一体…」



「はい、新しく先代に変わり国王となったホセも申します。彼らは同盟国のピンチに立ち上がった精鋭達です。 あの海の上の艦隊はアルシノエ王国が誇る海軍です。 そして今空を飛んでる鉄の塊はウラル帝国の航空部隊らしいですよ。 他にも各地で色々な国の精鋭部隊達が戦ってくれてますよ!」



「同盟国? 貴国と我々アラビア王国がいつのまに?」



「それだけではありません。 人間全ての国の同盟です! 勇者の元に全ての国が一致団結したのですよ。 ん? あ、そうだな。 ジータ殿、すみませんが今すぐここから撤退しましょう負傷兵には我々も手を貸します」



ホセは興奮したようにジータに話すのだが、部下からの耳打ちに頷き真剣な顔でここから撤退するようにいう。




「もうすぐここをユタの巨大魔法で一掃するんです。 ほら、アルシノエ艦隊やウラルの航空部隊も魔王軍から離れ始めてます。 我々も危険なので離れますよ!」



そういってホセは再び馬に乗り、部下に負傷兵に手を貸すように指示し走り出す。

それになんやらまだわからないでいるがジータは自分の部下達にホセに続くよう指示する。



彼らが離れてしばらく経ったタイミングで魔王軍の中心に向けて宇宙から太い光の柱が降り注ぐ。 そして大音量の爆音とともに魔族達どころか辺り一帯を跡形もなく消し去ってしまった。





















「ふぅ間一髪間に合いましたね」



戦艦 睡蓮の操舵室でその圧倒的な攻撃を見届けたエディは安堵の表情を浮かべる。

すると兵士の1人が恐る恐るエディに聞く。



「勝ったんですかね?」



「だといいがな」



エディは、ユタ王国の高出力星間圧縮粒子砲(カタストロフ)で消しとばされたところをじっと見つめたままそう返した。

































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