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第93話 勇者として働くまで!


「そ、損害の報告急げ!! 動けるものは負傷者に手を重せ!!」



魔王軍幹部であるサーニャは壊滅的ダメージを負った魔王軍の部隊に怒鳴るように指示を出す。

魔王軍の先頭部隊は夜明けとともに抵抗する人間達にとどめを刺すつもりであっただが、それは失敗に終わる。 先頭部隊は人間側の反撃にあい、一瞬のうちに壊滅してしまったのだ。



「一体なんなのだ、あれは」



敵はこちらが見たこともないような兵器を使い、魔族を圧倒、さらにはどこから飛んできたかわからない光の柱で一瞬にして魔族共々その一帯を焦土とかしてしまったのだ。

サーニャも自身の電撃魔法を使った高速移動がなければ危うく多くの同胞とともに消し炭となるところであった。

あの攻撃の正体を突き止めなければならないが今はそれよりも体制を立て直すことが先決だ。



「皆、撤退を急げ!!」























「敵部隊の撤退を確認! 追撃しますか?」



「いや、おそらく後ろには本隊がいるだろう。 深追いは危険だ。 これよりアルシノエ艦隊は作戦を終了とし、ここから一番近いアラビア王国の港へ寄港する」



エディは艦隊の戦線の離脱を指示する。

先に受けていた説明ではユタ王国のあの巨大魔法は次までのインターバルが12時間はあるという。

それに本命の魔王、および幹部の所在がつかめないうちに兵を消費しても仕方ないのでここは一時撤退する。



「了解しました。 エディ司令、ウラルの航空部隊から無線連絡が来ています? 繋ぎますか?」



と、通信機を担当している兵がエディに聞く。

それにエディは頷く。



「ウラルもやはり無線技術を持っていたか…。 頼む、繋いでくれ」



多少のノイズのあと無線が入る。



「ガガガ… こちらウラル航空部隊、我らが国王より現場の指揮はアルシノエの指令官に任せたと仰せつかっています。 いかがいたしますか?」



「そうか。 ウラルもご苦労であった。 追撃は不要。 作戦は終了とし、帰投せよ」



あの頑固なジジィが任せるだなんて… と内心驚きはしたが、彼らに労いの言葉を言い、退却するようにいう。


「了解。 ドラグーン1から各機へ。 作戦を終了…」



無線からウラルの航空部隊の隊長が各機に指示を出すのを聞きながら、エディは無言のまま執務室へ戻るのであった。



「お部屋にお戻りですか?」



「ああ、ようやくぐっすり眠れそうだ。 あとは任せたぞ」



エディは聞いてきた兵士に薄く笑いながらそう返した。


































「……ここは? 痛っ!」



ゆっくりと起き上がろうとするが全身に走る痛みで起き上がることができない。



「お目覚めになりましたか」








グイっと見覚えのある顔が覗き込んでくる。

確かこの人はアザゼルのメイドやってる…

そのことを考えてるとおれのおなかがグゥーとなる。




「クスっ! もしよろしければお食事の用意をいたしますがいかがいたしますか?」




「……よろしくお願いします」



俺は羞恥で真っ赤になり顔をうつむきながらそう答える。

メイドさんはかしこまりましたと部屋を出て行く。



メイドさんが出て行き少しは冷静になりあの後のことがいろいろと気になりだした。

ミスった、あのメイドさんにもっと話を聞くべきだった。

後々になりそんな後悔をしているとバンッと部屋のドアが勢いよく開かれる。



「ソウタっ!」



ガシッとベットに座る俺にルナが抱きついて来た。



「ちょ、ルナ!? 痛い痛い!! ……ルナ?」



ルナは人の肩に顔を埋めているのだが、そこからは嗚咽が漏れる。 俺はうずくまるルナの頭を撫でる。



「悪いな…。 心配かけて。 2人もごめん」



後から入って来たミーナとティアラにも謝る。

だが、なぜか2人の顔は暗い。



「俺が寝ている間なにかあったのか?」



俺が聞くとティアラが答えてくれる。



「今日の夜明けから魔王軍と人間側な同盟国で戦争が始まりました」



「そうか、ついに始まったか。 まぁアザゼルもいるし、万が一ということもないだろう」



「いや、師匠はいないよ」



と、ミーナが口を挟む。



「え!? いないってなんでだよ!?」



「知らないよ。 散々引っ掻き回すだけ引っ掻き回して今はエディさんに指揮を任せてどこかへ行ったらしよ、全く」



ミーナは悪態をつく。




「引っ掻き回すって… ああ、そうか、ミーナたちはアザゼルに今回のことを聞いてなかったのか」



俺はドラゴンにボコボコにされる前に今回のアザゼルの考えを聞いていた。

最初は訳もわからず気絶させられて知らないところに連れられて怒りもあったのだが、作戦の内容を聞き、他のみんなを心配させないようにみんなには黙ってやるということに納得して自分から参加していたのだ。

ぶちゃけたこというと俺は自分の体質から死なないことはわかっていたしからに死んだとしてもキリがなんとかしてくれるとわかっていた。 死んでもゲームのごとくコンティニュー出来るのだ。

だが、普通の人間は死んだらそこまでである。

黙っていたみんなが心配するのも、アザゼルが恨まれるのも無理はないのだ。

まぁその辺アザゼルなら上手くやるだろう。

だとすると俺のやることはもう決まっていた。




「さぁいつまでもここで寝てるわけにはいかないな。 ルナちょっとどいてくれ。 あ、後着替えるから少し部屋を出てもらっていい?」



と、ようやく感情が治ったルナを剥がし、うーんと大きく伸びをする。



「着替えるってどこか行くのですか?」



「どこって決まってるだろ? みんな戦ってるんだ。 勇者らしく助っ人に行くんだよ。 魔王を倒すのは勇者の仕事だろ? せっかく身体張って勇者だって認めてもらったんだ。 勇者らしいことをしないとな」



「ソウタ… あの、それなんだけどね。 アザゼルが…」



ルナは気まずそうにいう。

俺はルナの言わんとすることはなんとなく理解できた。



「知ってるよ。 戦場には出るな、だろ? それに魔王が魔王になる前の話も。 それを承知で行くんだよ」



「なんで!? あんな話聞かされたら…」



「それでも行くんだよ。 俺は勇者だからな。 どこの勢力がどうとか、利用しようとしてるとかそんなの関係ない。 困ってる人がいるならどこへでも駆けつけるヒーローが勇者の仕事だ。 だから、俺は行くよ。 なに、魔王みたいな状況になったら誰も知らないどこか遠くの無人島とか山奥に困ってのんびり暮らすさ」



俺はそう言ってニコッと笑う。

ようやく勇者らしい展開になってきた。

俺は改めて気合いを入れるのであった。




















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