第43話 便利な相棒が復活するまで!
「さて、まだ明るいうちですが新しい仲間が加わりさらにティアラの前回を祝いまして、パーティのリーダーたるこの俺からありがたーい一言を…」
「かんぱ〜い!」
「「かんぱ〜い!」」
俺がいいこと言おうとすると、横からルナが主導権を横取りし、勝手に乾杯してしまい、イヴとティアラが後に続く。
「おい! それ俺が言うやつ!」
「だってソウタ、話長くなりそうだったんだもん。 あ、ティアラちゃん、そこの唐揚げとって」
「あ、はい。 それにしても『人造天使』も私たちと同じようにご飯食べるんですね。 知りませんでした」
「本来私のような『人造生命体』は魔力で動いているため、魔力さえ補給できれば食事を必要としません。 ですから私たちにとって食事は人間生活に馴染むための行為であり、活動維持には不必要というべきでしょう。 ただ皆さんと机を囲って食事をするとなんだか胸のあたりが温かくなります。 これが心というのであれば、今この場においての皆さんとの食事は私にとって必要なものなのでしょう。 人の心を学ぶというのも私の使命なのですから」
と各々思い思いに話し始めて、イヴに至っては涙の出るようなことをいっててとてもじゃないがもう一度やり直しと言える空気じゃない。
俺たちはあの後早速イヴの歓迎会とティアラの全快祝いの会を開いていた。 もちろん昨日のことがあったのと、まだお昼だということでお酒はなしである。
「にしてもイヴちゃんどっからどう見ても人間にしか見えないよねー」
ルナは隣に座るイヴのほっぺをプニプニやっている。
「そうですね。 見た目ではわかりませんね。 私も何回か『人造人間』を見たことありますけど、それとはちょっと違うと言っても街を襲ってきたやつよりよっぽど人間に見えます」
とティアラもルナに同調する。
確かにイヴはいい感じに俗に染まってる気がする。 まぁそれもこれも作ったやつがあんなんだからかな。
作った本人はというと、イヴ曰く現在事件の調査のためせっせと働いているそうで、俺たちと会う暇もないらしい。
「そういえばマスターからソウタ様に渡して欲しいものがあると頼まれていました」
と言ってイヴはゴソゴソ自分の持ってきたカバンから何か探しているようだった。
そして、
「これです。 しっかり魔力で動くように改造済みだとのことです。魔力を供給すれば使えます。 もちろんマスターとの通信機としても使うことが出来ます」
「おお、まさか一晩でできるとは!」
俺はイヴからそれを受け取る。
そう、この世界に持ってきたはいいが使いどこはそんなになく、電池も切れもはやお荷物とかしていた俺のスマホだ。
「あ! それ前にも見た! なんか光が出るやつだよね!?」
ルナが俺のスマホを見ていう。
そうか。 ルナはあの変態吸血鬼ことルークのところで一回使ってるところを見たんだっけ?
一方自分の知らないものが出てきて、興味津々にそれをみるティアラが聞いてきた。
「これはソウタさんの国のものなんですか? ルナさんは光が出るものだと言っていましたがランプか何かなのですか?」
俺はそんなティアラにスマホのことを説明する。
「これは『スマートフォン』と言ってな、俺のいた国の遠距離通信装置だ。 通信機能意外にもいろいろな機能が付いていて、光が出るのはその機能の1つだ」
と自慢げに説明しているとルナにスマホを強奪される。
「え!? これ光が出るだけじゃなくて遠距離で話せるの!? 魔法なしで!?」
「いいえ、厳密には動力を魔力としているため魔法の一部と考える方が良いでしょう。 ただこれには本来必要とする複雑な詠唱や大規模な準備を必要としませんし、魔力も1/10以下に抑えることができます」
イヴがルナにそう説明する。
俺も実際この電波のない世界でどういう原理で使えるのか不明だが、ミーナができる! 任せろ! というので預けてみたのだ。
まぁまだ本当に使えるのかどうかわからないのだが。
「こんな小さい板なのにすごいですね… 原理は私たちの知る通信魔法と同じなのですか?」
ルナがあれこれ触ってるのをティアラも一緒になって覗き込見ながらイヴに聞く。
「はい。 本来は違ったようなのですがこちらでも使えるよう改造したので相手を思い浮かべ話しかけるというのは一緒です。 しかしこの板には固有の11桁の番号が設定されていますので、その番号を思い浮かべれば話すことができます。この点で通信魔法で1番難しいとされる相手の概念を明確に表現し思い浮かべるということをしなくても良くなり、それをするために必要な補助の魔法器具や魔力をカットできるため、このような薄い板でも通信が可能になっています」
イヴは何やら難しいことを言っているが、ティアラはなるほど…となんか納得しているようだった。
さすが領主の娘で頭いいんだなー。
ミーナにされた説明や、今のイヴの話を簡単にするとこうだ。
この世界の通信魔法を使う時に、感覚としては自分の意識を通信したい相手のところへ飛ばす、という考えらしい。 つまり俺が今、ポルタの街にいるであろうセリアさんと話したい!となったら俺の意識を魔法を使って飛ばして、直接話すというような形らしい。 まぁ正確には意識の分身らしいんだけども。 ただその意識の分身を飛ばすためには補助する大掛かりな道具や大量の魔力を使ってようやくできるらしく、みんながみんなおいそれと使えるような魔法ではないのだ。 国家通信士なる役職があるくらいだ。
それが俺の持ってきたこのスマホで話は変わってくるらしい。
ミーナ曰く歴史に残る大発見だとのこと。
何がそんなにすごいのかというと、道具に番号をつけてそれに向けて飛ばすということ、それと意識ではなく、言葉だけを飛ばすということだそうだ。
各々番号を設定することで、不安定だった相手の概念の具現化をしなくて良くなり、言葉だけという半端な形でも相手に伝えることができるようになるらしい。
これによりさっきもイヴいっていたのだが、大掛かりな道具も大量の魔力も不必要となり誰でも簡単に通信魔法が使えるのだという。
その国家通信士とかいう役職の人も涙目であるだろう。
ただ欠点があってお互いがスマホ同等の通信機器を持ってないと使えないというのだが、そんなの日本においても一緒なので、変わったことではない。
ただ現状これで通信できる相手はそんなにいないということはやはり宝の持ち腐れ感はある。
「ねぇねぇ、ソウタ! しばらく借りてていい!?」
ルナがそう聞いてくる。 借りるも何もおまえさっき俺から奪ってただろ…
「あ、あの! その次私もいいですか?」
とティアラまでも聞いてくるので、俺は
「ああ、いいよ。 ただ壊れやすいんだから壊すなよ?」
それを聞くと2人はまるで新しいオモチャをもらった子供のようにあれこれ触っている。
「話は変わりますが、ソウタ様、 これからどうしましょう」
運ばれてきたジャガイモを揚げたやつを食べている。 つまりはフライドポテトだ。
「どうするってもなー。 情報もないし、そもそも暗躍してるような奴らなんだろ? 魔王軍みたいに表立って動いてないなら見つけるのは難しいんだよなー」
ちなみにここのギルドにいる連中に聞いてみたのだが『戦争屋』などという組織については知らないということだった。 あの連合パーティのとこのレオたちも知らないという。
まさに八方塞がりなのだ。
「はい。考えられるものとしては何か魔王軍関連以外でいざこざが起こっている地域ということでしょう」
つまり争いをあちこちで起こそうとしているなら起こっている地域に行けばいいのではないかということだ。 ただそれだと後手に回ってしまい、奴らの企みを未然に防ぐことはできない。
なにかいい手はないものか。
「しかし、私たちの力では現状『戦争屋』相手に太刀打ちできませんし、それぞれの戦力強化に努めるのもいいかもしれません」
確かにイヴの言う通りだ。
正直今の俺たちじゃうまく会えたとして返り討ちにされるだろう。
そういえば今の俺はどれくらい強くなったんだろう。
ふとそう思い、ギルドカードをみる。
「な、なんだこれぇぇぇぇぇ!!!」




