第41話 事件解決のお疲れ様会をするまで!
ミーナは驚いているようだ。
「イヴ…。 君に心が…!」
「私にはこれが人のいう心というものかどうかわかりません。 ですが私の身体はマスターの命令を拒絶しているように感じられます。 ゆえにこれ以上の命令実行は困難です。 ゆえに次の行動を… うっ、マスター?」
ミーナはイヴを抱きしめた。
イヴも最初はどうしたものかあたふたして俺とミーナを交互に見ていたが俺が黙って頷くと同じようにミーナのことを抱きしめた。
その見た目はまるで本物の姉妹のようだった。
実を言うと俺はイヴに感情があるであろうということはなんとなくわかっていた。
イヴに初めて会った時やルナやティアラをからかった時、カマエルと戦った時などいたるところでそれらしい仕草はあったのだ。
俺だってただがむしゃらに叫んでいたのではないと言っておこう。
あくまで先ほどのは戦略的だったのだ。
誰に言い訳してるのかわからないが、そう自分の心に言い聞かせた。 ここで水を差すのは野暮だからな。
本当だったらこの場からクールに去りたいところなのだが、ミーナに打たれた薬のせいで身動きが取れない。
感動的再開のシーンの横で間抜けに倒れてるしかないのだ。
全くこれで勇者とか名乗ってるのは呆れてものも言えない。
俺は早く動けるようになるように心のそこから願うのみであった。
俺は気まずさ全開の現場に放置されただただ耐え忍ぶことになった。 2人はどうやら彼女らだけの世界に入ってしまったようで2人で盛り上がっている。
ひょっとすると俺、忘れられてる?
そんなことを思いつつしばらくすると身体に力が入るようになりだんだんと自由が利くようになった。 その頃には外は空はすでに真っ赤になっていた。
とりあえず帰ったら、ルナに謝らないとな。
それと一応あのクソ神から頼まれた『戦争屋』の件もいろいろ調べなきゃいけないしな。
…やんなきゃいけないことどんどん増えるな。
ちなみに2人は仲良く風呂に入りに行ってる。
動けたら覗きに来ていいんだよ?とかミーナはわけわかんないこと言ってたが無視することにして、俺は置き手紙を書いておきこの廃施設を出ることにした。
「ごめん! 結局手伝いに行けなくて!」
俺は街に戻るなり、ギルド内の酒場にいたルナに仕事をすっぽかしたことを謝った。
「しょうがないよ、 ミーナさんも大事な用があったんでしょ? それよりフラフラだけど大丈夫?」
とルナは特に怒ることもなく逆にこちらの体調を心配してくれる。
こりゃ、大きな借りができたな。
「ああ、ちょっと向こうであってさ。 大丈夫、ちょっと疲れてるだけだから」
俺はそう言って飲み物と適当につまめるものを注文し、ルナの向かい側に座る。
「ならいいんだけど、そういえばミーナさんなんでこの街にいるの?」
とルナが聞いてきた。
まぁ確かになんの事情も知らないルナからしてみればその疑問も当然か。
ただ本当のことを言えるはずもなく、俺はルナに今回の騒動の収拾に来ていると一応嘘ではないが『人造天使』のことは省いて話した。
「そうかー。 ミーナさん研究者だもんね。 でもなんでわざわざスイーンの街から呼んだの?」
「なんでもミーナの親父さんが元はこの国の研究者だったらしくてその関係でミーナ本人も顔が知れてるらしくてな。 で、本人曰く天才である私が呼ばれたんだと」
「そうなんだ。 私、とんでもない有名人と知り合いなのかー。 ねぇねぇ! ミーナさんの知り合いですって言ったら街のお店とかでお得にならないかな!?」
なんと単純な思考回路なんだろう…
逆に感心すら覚える。
「それは本人に迷惑になるからやめとけよ? ところで明日も仕事だろ? そんなに酒飲んで大丈夫なのか?」
俺は追加で酒を頼むルナにきいた。
するとルナは手をひらひらさせ
「いいの、いいの。 仕事は今日で終わりだって。 だから明日からはようやくゆっくりできるよ。 この街きてからいろいろあって忙しかったしね。 あ、ティアラちゃんは先に宿に泊まってるよ」
なるほど。 確かに街に戻った時暗くなってわかりにくかったが、前より片付いていたような気がする。 なら、俺も追加の酒を頼もうか。
「あ、ちなみにここの代金はソウタの今回の報酬だからね」
ルナは釘をさすようにいう。
まぁ仕事サボって報酬もらってるんだからそれくらいしなきゃダメか。
「わかったよ。 ほれ、じゃんじゃん頼め。 久しぶりにパァーと行こうぜ」
「旦那、太っ腹ですな。 グヘヘへ」
いい感じにアルコールが回って親父とかしているルナ。
…潰れる前に宿の場所と部屋聞き出しておいたほうがいいな。
案の定ルナは潰れ、宿まで介抱するはめになった。
こいつ、どんだけ飲んだんだ?
本当にお財布の中パァーになった。
今回の 報酬と合わせてもスズメの涙ほどしかなくなってしまった。
とりあえず明日は街で聞き込みだな。
受付の人に部屋の場所を聞き、ルナを部屋に置く。
何かあってもこの部屋にはティアラも寝てるしいいだろ。
俺は隣の部屋に行き崩れるようにベットに横たわる。
そして結構疲れていたのかそのまま意識を失うように眠りに入るのであった。




