第30話 爆発に巻き込まれるまで!
「!?」
「どうしたのだ? ミーナ・ウィルキンス」
「いや、なんでもない。それより、その呼び方やめろと言ってるだろ? 」
僕はいま、ベルンの街のとある実験施設にいた。 本当は着たくはなかったのだが、僕の隣にいるカマエルが協力しろとうるさいからしかたなくここにいる。カマエルに呼び方はミーナちゃんって呼べと何度も言っているのだがいつも『善処しよう」で済ます。本当に愛想のないつまらんやつだ。
「話は変わるけどカマエル、研究に入る前に先にシャワーを浴びてからでもいいかい? お前に突然来られたから昨日は入れなかったのでな」
「好きにしろ。 協力さえしてくれればなんでも良い」
そう言ってカマエルはシャワー室の場所を教えてくれる。僕は荷物から着替え一式を取り出しシャワー室へ向かう。
上から白衣、シャツ、ブラと脱いで行き、さらにストッキング、スカートと脱いでいく。 僕はそこで脱ぐものがなくなった
「はぁ、あの感覚はやはりか。 あの少年はパンツの収集の趣味でもあるのか? お気に入りだったのに今度会ったら返してもらわないと」
僕は何が起こったのか大体察していた。というか、僕は一回これと似たようなことを見たのだ。その時は私のではなくあの少年---ソウタのパーティの女子だったが…
「またあの面白魔法を使ったのかねー。 そういえば今頃ついたのかねー? 皇都には」
彼らは東の果ての島国を目指しているとのことで船に乗ろうとしていたのだが、生憎魔物のせいで船が出せなかったため陸路で皇都を目指しているはずだ。 あの面白い連中にはまた会えるものなら会いたいものだ。
僕は少し感傷に浸り脱衣所からシャワー室にはいり、僕好みの熱めのシャワーを浴びる。
「さて、どうしたもんかね。 あのデカ物を出し抜けるとは思わないけど、どうにかしないとねー」
僕だって犯罪者にはなりたくはない。
だからうまいことこの『人造天使想像計画』は中止にしたいのだが、あのお目付役がいるとなると簡単ではなさそうだ。
「もし、あの研究室(ラボ)がこの街に残ってるなら、もし『あの子』がまだいるのならなんとかなると思うんだけど…」
僕はは遠い過去のことを思い出す。
「まさか、あの男と同じ道を歩む羽目になるとは… 血は争えないってことかねー。 ねぇ? ケビン・ウィルキンス、いや、父さん」
いまは亡きその人に問いかける。僕は久しぶりにあの男のことを父さんと呼んだ気がした。 何せ最後まで意見が合わなかったから僕が研究室に入る頃にはもうそう読んでなかった気がする。
家族を捨てたあの男のやってることすべてを認めたくなくて、完全に頭から消したはずなのに、いざ同じことをやろうとするとあの男のことがたくさん頭をよぎる。
僕は絶対にあの男のようにはならない!
この計画も必ず潰してみせる!
僕は『あの子』にそう誓ったんだから…
僕はシャワーを浴びさっぱりしたとこでいつも通りの白衣姿に着替えカマエルとともに研究施設の方へ向かう。
さて、できるところまで抗うとしますか!
俺はいま薄暗いところに1人だ。
俺はあの時いくつか仕込んだ最後の隠し玉を使った。
それは手投弾をペンダントのように首から吊るしたもので、よく昔の話である旧日本兵の自殺用に使ったとかいうあれを首からかけていた。
外のみんなを殺されるくらいならいっそ自分と道連れにしてでも!
その意気でピンを抜きベンケイへ抱きついた。
みんなを守るために死んで本望だ。 俺はそう思った。
もちろんそんなことは微塵も思わなかった。
というか、そんな度胸も根性もない。 胸元で爆発されるなんてとんでもなく痛そうだからな。
俺はひぃじぃちゃんの残した本のおかげで手投弾がどれくらいで爆発するか知っていた。後はうまくタイミングを合わして『逃走』の魔法を唱えた。
なので爆発したのはおそらくベンケイとあの空間だけで俺は無傷なのだ。
はたから見たら敵を巻き添いに自爆した英雄に見えてに見えて実は安全に逃げただけという… 勇者としてどうなんだこれ?
「ま、まぁ君子危うき時近寄らずともいうし、これは戦略的撤退だよな。 うん、だから大丈夫!」
1人で納得するのであった。
「それにしてもここはどこなんだ?」
俺は今迷子だ。
場所はわからないが薄暗い地下のようなところだ。
なんで迷子になっているかというとあの『逃走』の魔法のせいだ。実はこの魔法は魔力もそんなに必要じゃないし、詠唱時間もほとんどないというかなりいい魔法なのだが、欠点もあって、一度使うと次また『逃走』を使えるまでの時間つまりリキャストタイムが半日という数ある魔法の中でもそこそこに長いこと、それとあくまでその場所から離れる緊急用の『逃走』なのでどこに飛ばされるかわからないというものつまりはランダムテレポートということだ。
なので俺は今どこに飛ばされたのかわからない迷子という状態に陥っている。
まぁ『逃走』によるランダムテレポートはあまり遠くに飛ばされないのが救いなのだが…
「ってことは『朝日の洞窟』の近くってことだよな? なんか薄暗いし、 うん? でも人工物があるところに飛ばされたって事はここはベルンの街なのか?」
とりあえず歩いてはみるがまるで人に会わない。
当たり前か、どこからどう見ても下水道みたいな地下空間。
「ここやっぱベルンの街じゃなくてどっかのダンジョンなのか?」
だとしたら最悪だ。
爆発では死ななかったがまた危険地帯に戻ってきたのだ。
なんとかこの地下道みたいなとこを抜けて人のいるところにに戻らないと。
どのくらい歩いたか上に登るはしごが現れる!
「なんだ、やっぱここダンジョンとかじゃなくて地下水道かなんかなのか。 だったらここはベルンの街で上に登れば人だっている。 全く驚かせやがって」
虚勢を張っているが俺にはそのはしごが仏が垂らしてくれた蜘蛛の糸のように見えた。
俺ははしごを上がり上の扉を開く。
するとそこにあったのは誰もいなくなった、荒らされてそこそこに年月のたったであろう部屋だった。
「地下水道上がってきたら、どっかの廃墟… なんなんだよ! ここどこなんだよ!」
俺は心の底から叫んだ。




