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エピローグ3

キーデル

ゴルジオの新政権樹立後、最初こそ人々はゴルジオをこの国を救った英雄のように祭り上げたが、それ以降の目に余る暴挙や増税に人々は不満や怒りを溜めていった。そう言うことに箝口令を敷いたり、反乱分子を鎮圧したりするのが俺の軍での役割だったが当然そんなことはしない。しなくてもゴルジオが気づかないように奴の欲しいものを何でも与えた。裏で何があるかも知らないで……。

そして、3カ月も経つと大陸全土でゴルジオ政権打倒に向けて各地で反乱が起こり出す。さすがに軍として鎮圧に向かうがそこでもすべてを潰さない。そうやって半年かけてゆっくり怒りや不満を育てていった。

ようやくその怒りが止まらなくなるところまで育て上がった時、突如ゴルジオが死す。


そうしたとき矛先を失ったその怒りはそのまま沈静化するだろうか……。

それはない。

各地で盛り上がった戦いの意思は負けるまでその牙が折れることはない。

各地で反乱を起こしたリーダーがそれぞれ王を名乗り始め、それぞれが潰し合う。

そうして再び戦乱の世が始まる。


概ね計画はうまくいった。

再び乱世にするために一番の弊害がスライル様だった。

スライル様が壊れない限りこの国が壊れることはない。

それは本来誰にでもわかっていたことだ。


だから、初めにスライル様を壊すことから始めた。

とは言ってもスライル様は本当に人間かと思うほど隙が無かった。

しかし一つだけ、スライル様の心に巣食う闇、過去に人を殺したことがあるという事実。

例え戦争中だろうとどんな大義名分があろうと人殺しの罪の意識、それは決して消えない。


その闇から逃げるために人は様々な行動をとる。

ゴルジオのように違う欲求で自分を満たす(あいつは結局できてなかったが)。

メンデル様のように別の何か、仕事に追われて考えないようにする。

スライル様は後者だったが、それはつまり仕事に集中できない状況にすればその闇に落ちるということ……。

仕事ができない状況、それは心配な出来事、そしてトラウマの再現。

後者はガルネシアの奇跡の時に現場にいなかったからわからないけど、心配な出来事なんて簡単に作れる。

親友の危機だ。それもトルニエ様が事態を全く呑み込めていない状況で……。

トルニエ様が牢に入ることでスライル様の心配を誘い、まったく姿が見えない敵におびえることで心を弱らせる。


そうやって強引に作った事件は違和感が生まれる。ある程度優秀な5人会議の人ならなおさら……。

でも証拠はない。

だから、責任感の強い人はきっと証拠を探し始めるだろう。

オーネンスが、メンデルの片腕がゴルジオ軍に派遣されるのは必然だった。

そして、バカしかいないゴルジオ軍で安息を求めようと俺に接触し、心を許し、弱みをさらけ出すのも……。


スライル様を弱らせることができればあとは簡単だ。

スライル様の危機=国の危機ということがわかっていない馬鹿な上役をいじれば簡単に事がうまくいく。

俺がトルニエ事件の報告に行くことで5人会議の様子も探れるし、その時にそれぞれの人となりも観察できる。

そいつらを観察するのは5人会議内と後をつけるぐらいしかないが、スライル様の様子を知るのはもっと簡単にできる。

グレンやフレロレがスライル様の護衛をしているから。

まさか第2世代捜査隊なんて組織までできるとは思ってなかったけどそれはそれでその時は助かった。


本当はスライルさんとグレンとフレロレを殺したくはなった。スライル様はトルニエ様の親友でトルニエ様の心の闇にスライル様が必要だと思ったから。それにグレンもフレロレもスライル様の失脚とともに国の上の方から抹消されて、最後の場面のころには街で仕事を探していることになるだろうと思っていたのだが、あの第2世代捜査隊なんてのができてしまったせいで現場にあいつらがいる理由ができてしまった。

もしかしたらグレンはそういうふうに関わってくるかもしれないと思っていたが、まさかフレロレまで……、あいつはグレンを止めてくれると思っていたのに……。

だからグレンを自分の手ではねたのはけじめだ。

トルニエ様を選び、友を選ばなかった自分なりのけじめ。

もう後戻りはしない、過去を振り返りはしない。

俺はあなたと共に生きていきます、トルニエ様。


トルニエ様がいる牢屋の前に着く。


舞台は整いました。

再び私たちが輝ける世界が来ました。

武人は戦の中でしか輝けない。

ならば、尊敬するトルニエ様を光の舞台に上げるのは部下の仕事。

トルニエ様が挙兵すれば人が集まる。

トルニエ様を中心にした世界が再び始まる。

俺たち武人が生きるべき本当の世界に!

これからの世界をつくる人間は……、本物を目指さないといけない。

こんな仮初で欺瞞に満ちた世界ではなく……。




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