ゴルジオ、7
俺の矛がブロームの胸を切り裂き、叫びながら崩れ落ちる。
それを見て、目の前にいる剣士の顔が青ざめる。
思った通りだ。
奴の動きのキレは今まで戦ったやつらの中でも群を抜いている。
30過ぎて年齢的に、肉体的にピークより体が重い俺はあいつの動きに完全についていくことは難しい。
さらに奴は体だけではなく勘もキレている。俺は腕力だけでも十分強いし大概の奴には負けない。だけどそれだけじゃ勝てない。実戦で積んだありとあらゆる技を、フェイクを、以前俺が苦戦したありとあらゆる技を使っているがそれを難なくいなす……。
それでいて奴の繰り出す技は必殺技ばかり……。急所を狙う技を積極的に使ってくる。師がよっぽど良かったのだろう……。俺も初見だったら絶対に捌けはしなかった。
……いや、それは違うな。
こいつの剣からはいまいち殺気を感じなかった……。
理由は簡単だ。
「お前、人を斬ったことないな。」
この剣からは何も感じない。
むしろ、人を傷つけることに対する恐れすら感じる……。
バカが!半端な覚悟で戦場に出るもんじゃない。
こいつは一騎打ちなら間違いなく強い。
だけど、こいつが強いのはあくまで練習試合での話。
命を懸けたやり取りで殺す覚悟も、死ぬ覚悟も、死なれる覚悟もない、そんな甘ちゃんに負けるわけがない……。
ふん、今回の襲撃も、真剣ではなく木刀を持ってくるんだったな……。
そうすれば俺を簡単に止められたのに……。
「お前は……、なんでそんなこと……、平気で……。」
そいつは目がブロームの野郎から離せられず、さっきまでの威勢はすっかり面影を隠ししどろもどろに言った。
ブロームを殺したのは俺、あいつはその場に居合わせただけだ。
俺に怒り狂ってとびかかってもおかしくはない。
自分のせいで関係ない人が死んだのだから……。
そしてその犯人が目の前にいるのだから……。
自分の手に刃物が握られているのだから……。
だけど奴はそれをしない。
昔、大切な人を目の前で殺されでもしたのか……。
何にせよ、体が最強の戦士でも心が戦士ですらなければ生き抜くことはできない。
生きる時代を間違えてなかったんだ。そのままひっそりとしていればよかったものを……。
結局のところ、勝敗を分けたのは
「経験の差だな。お前とは背負っている覚悟が違う。お前がもう少し早く生まれていたら結果は変わっていたかもしれないな。いや、そんなことはないか……。」
「何言ってんだ!?人殺しが何をわかったふうに!」
「その差が今の結果だ!俺は自分がぶれないように自分をしっかり高めていたってことだ。俺はここ数か月、強者を求めさまよった……。」
「なっ、まさか……。」
「そう、俺が巷で有名な辻斬りさ!俺はいままで一度だって血が乾いたことなんてない!」
剣士は一度目を丸くしたがすぐに目線を落とした。
「……なんか俺の太刀筋が読まれていると思ったら、そう言うことか……。あの時一度戦っていたんだな……。クソ、あの時仕留めておけば……。」
「俺は今まで一度だって戦いを忘れたことなんてない!」
戦闘訓練だって誰も見ていないところでやってきた。
「……、やはりメンデル様ではなかったのだな。……フレロレ、もしかしたら――。」
「ハッハッハ、メンデルには悪いことをしたよ。まさかローブを脱ぐのに適当に入った屋敷がまさかメンデルの家だったとはな……。」
何を言ったのかは聞こえなかったが、この際どうでもいいことだ
「しかし、どうして誰も気づかなかったんだ?お前が持ち場を離れればキーデルが気づくはずだが……。」
「周りに隠すのは結構大変だったんだぜ。監視の目を一回飲み屋で潰さないといけないからなー。」
「……、じゃあ、お前が黒幕か……。」
「そうさ、この腐った世界をぶっ壊したかったのは俺さ!建国記念日の日俺は人知れずそう誓った。」
ずっと機会を待っていた。
そして、いまついに野望が実現する。
「何とでも言え。話せるうちにな!」
「……!?」
若輩剣士の鋭い眼光が俺に向かう。
だけど、立ち向かって来るのは目だけ、奴は足がすくんで動けないまま……。
せっかく楽しめる相手に出会えたというのに……。
だけどこうなったらもう終わりだな……。
少し残念。
もうどうでもいいことだがな!
「この話を聞かれた以上、初めからここにいる人間は誰も生かしておくわけにはいかないんでな!」
「……カスが!」
「お前では勝てないよ。お前の剣では俺を殺せない。俺を止めたいなら本気出して見ろ!」
まあ、頑張ったところでブロームの後を追うだけだがな!




