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キーデル、7

俺が事務管理をしていることもあってすんなり王宮の地下牢には入れた。

というかこれも計算のうちだ。

あの後作戦会議を終え、その足で三人王宮に向かった。

その間誰も何も話さなかった。

俺も、グレンも、フレロレも特にいうことなんかなかった。


いや、何もではなかった。

城門をくぐるとき一度だけ俺は二人にこう尋ねた。

「そうだ、スライルさんに会うか?彼も昨日からここに入っているんだ。」

だけど二人の答えは淡白なもので、

「……いや、いい。」

「僕も……。」

「そうか……。」

俺はそれ以上何も言わず真っ直ぐメンデル様が入っている牢に連れて行った。


俺はメンデル様の牢の前で止まり二人に次げる。

「じゃあ、俺はほかに人が来ないか見張ってるからその間に二人は事情を説明してきてくれないか?」

俺も中でいろいろ話したいがここで見張りをする役ができるのは軍に所属している俺のみ……。

俺も時代が動く瞬間をこの目で見たかったが損な役回りだ。

スライル様が処刑されるなんてことになったのもゴルジオの勝手を未然に防げなかった俺にも原因の一端がある。一番の原因はもう一人の監視人が思いのほか家族にうつつを抜かしているせいだと思うけど、さすがに俺一人では手が回らない。

俺があまり政治を好いていないのもあるだろうけど……。


そんなことはいい。

この交渉もグレンとフレロレなら失敗することはないだろう……。

あの二人の熱意なら。

声が届くギリギリのところに立ち、辺りを見渡す。

異常なし!



「こんばんは、メンデル様。」

「おお、グレンに……えーっとフレロレだったっけ?」

グレンのあいさつの後、メンデル様の厳かな声が聞こえる。メンデル様が続けて言う。

「それで?ああ、その日が来たんだね。スライルさんに何かあったのか?」

「実はスライルさんが今、処刑されそうなんです。」

一瞬、沈黙が流れる。

「それは私の想像以上だ。」

親スライル派の人は皆この話をすると一瞬固まる。

でもまあ、これが一般人でも処刑なんてそうそうあるものじゃない。

「それで……。君たちがここに来たというのは……。つまり……。」

「はい!メン――。」

グレンが何か言おうとした途端、

「まあまあ、みなまでいうな。わかっているよ。私もスライルさんに直々に頼まれているわけだからね。」

メンデル様はさえぎっていった。メンデル様が言ったことをまとめるとスライル様はこういう展開になることを知っていたのか?スライル様は実は裏で何かやっていたのでは……。

ただ、今分かったのは、

「任せなさい。準備もできている。後はここから出るだけだ。」

メンデル様が協力するということだ。俺の想像以上のスピードで交渉は成立した。

「よかった。な、フレロレ!」

「うん……。」

「なんか元気がないなー。」

「いや、とっても嬉しいよ。僕からもよろしくお願いします。」

「ああ、こちらこそ。もちろん君たちも戦うんだろ?」

「はい。」

フレロレの気持ちはまだ建て直ってはいないようだが、それでもまた前を向いて進んでいける。


「それはよかった。私には私兵が1000いるとはいえ特に腕が立つのはそんなにいないしな。トルニエ様が作った軍学校をまねて戦争孤児になった子たちを私なりに教育していたのだが、まだそんなに鍛えられてはいないからな。十分鍛えられていれば辻斬り討伐隊に練りこめたんだが……。助かるよ、君たちみたいに戦いに特化した人がいてくれて。」

「あの、僕は別に……。」

「まあそう言うなって!君らは二人だけか?」

「いえ、あそこで見張りをしてくれているあいつ、キーデルを入れて3人です。」

グレンが俺を紹介する声が聞こえたので一応遠くから会釈をする。

「あいつは……確かゴルジオの参謀補佐の……。彼もトルニエ様の生徒?」

「ええ、俺達と同郷なんですよ。」

「そうか。名前は何度も聞いていた。オーネンスの報告にはいつも彼の名前が入っていたからな。相当頼りになるらしいな。彼には迷惑をかけただろうがやはりゴルジオ軍に配属した私の目に狂いはなかったようだな。」

ゴルジオを管理しきれなかったのはオーネンスさんから聞いたのか、聞いてないのか知らないが今のところ問題ないようだ……。実際のところ今のゴルジオを頂点とした治安部隊組織を受け入れている人物は多くはない。

そのメンデル様が気にしていないということで少し胸のつっかえが消えた。



「話を戻すとですね。このままスライルさんを脱獄させてもダメなので、俺たち色々作戦を考えているんです。メンデル様もこの作戦に乗っていただきたい。」

グレンの提案に少し間があって、

「よし。君たち、明日私の別荘に来なさい。そこで作戦会議をする。別荘の場所はオーネンスにでも聞いてくれ。」

「え?明日ですか?」

メンデル様の提案にフレロレがすかさず突っ込む。ここは王宮の地下牢でメンデル様は鉄格子の向こうだというのに……。

「何心配ない、ここを出る準備もすでにできているのだよ。時を待っていただけだ。」

「まあ、メンデル様がそう言うのなら……。分かりました。それではまた明日。行こうぜ、フレロレ!」

「うん。」

ちょっと待て!俺ここの管理者なんだけど!

俺の責任問題にならない?

……いや、帳簿を見るの俺くらいだし大丈夫か。



二人がこっちに来る。

「うまくいったみたいだな。」

「当然だろ!」

グレンが自信たっぷりに言う。

お前何もしてないだろ……。

向こうが勝手に話進めてくれただけじゃないか……。


まあいいや。

「そんじゃ、オーネンスさんのところに行ってメンデル様の別荘の場所聞きに行こうぜ!」

「いいけど……その人の家知ってんの?」

「ああ、俺とは家族ぐるみの付き合いだからな。」

この前のお食事会で家にまで招待された……。

オーネンスさんの子供、確かに可愛かったな。


まあ、そのせいで今の状況になっているわけだが……。




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