ナートル、5
なんか知らないうちにチョー展開!
この前私が言ったことが現実になろうとしている!
あの時言ってよかったかもー。
このままうまくいけば私は大統領を目指せる!
大統領かー……。
いいよねー。
ただ何もしなくても偉いなんて。
最近なんてスライルさんは何も中身のある話してないしー!
大統領になれば私も会議のことなんて参加するだけ参加していっぱい研究のことを考えられる。
私はもっと研究がしたいの!
父がお願いするから社会的に高い地位についているのだけど……。
でも大統領になれば高い地位に就いたまま研究ができる!
父の期待を裏切らずに私のやりたいことができる。
大統領にさえなれれば何もしなくてもめんどくさいことはバルテニーおじさんにでも任せてしまえば万事うまくいく!
「解職請求で承認されるのは議会の過半数の賛成でしたよね。スライルさんを除いてここには4人だからつまり3人以上の賛成でスライルさんは解職です。」
バルテニーおじさんが話しを進める。
問題はスライルさんをどうやって解職すればいいのだ。
3人って、前回は私とバルテニーおじさん以外賛成派の人はいなかったのに……。
このままでは前回の二の舞になるのでは?
さっき配られた資料に目を通している人なんて私を含めて誰もいないのに……。
「スライルさんの現状を見てきた皆さんならお分かりいただけると思うので、私からは……特に……。スライルさん何かありますか?」
「ないですよ。」
スライルさんにはどことなく余裕を感じる。
「それでは一度決をとりましょう。賛成の方は挙手を!」
バルテニーおじさんはそう言った。
まだ何も始まってないのにもう決をとるの?
そんな感じで大丈夫なの?
もっと説明しておいた方がいいんじゃないの?
このまま否認されたらバルテニーおじさんの立場も怪しくなるかもしれない。
そうなったら私が大統領になった時誰が面倒ごとを引き受けてくれるの?
とりあえず私は右手を天に向けて高々に掲げた。
まあ、ダメ元で……。
今回うまくいけばそれでいいし、ダメだったらそれはそれでしょうがない。
失敗して私に責任とか追及されそうになったら、おじさんに圧力をかけられたとか言っておけば大丈夫でしょ!
他に手を上げたのは言い出しっぺのバルテニーおじさん。
やっぱり駄目かも……。
と思ったが、もう一人手を挙げた人物がいた……。
前回はいなかったゴルジオさんだ。
「メンデルがいたらきっとここで手を挙げていたと思ったから。」
ここにきて最初に言った言葉がそれだった。
それもだいぶふてぶてしく……。
……絶対そんなことないと思うけど。
まっ、いっか!
「調子に乗るなよ、お前!ゴリラのくせに人間の政治がわかるか!」
ゴルジオさんの態度か立ち位置か。
腹を立てたブロームさんがゴルジオさんに喰ってかかる
「ああ!?なんだと!もういっぺん言ってみろ!」
が野次られたゴルジオさんがすごい剣幕で言い返すと、
「な……、何でもない……よ……。」
と言って静かになった……。
……あれ?
ってことは……もしかして!今回、勝ったの!
やったー!これで大統領に一歩近づいたー!
「このままですと賛成が規定数を越えそうなので解職ということ――」
と進行しようとしたバルテニーおじさんの声をかき消すように、
「ふざけるなァ!なぜ私が辞めさせられなきゃならないんだァ!お前ら……殺すぞ!」
この国のリーダーの
今まで見たことがない表情で
今まで聞いたことない汚い怒号が
会議室に無情に響いた……。




