ナートル、4
「それでは会議を始めます。」
スライルさんのいつものセリフで今日も会議が始まる。
いつもの私ならその言葉を聞いた瞬間……、いやもっと前、この部屋に入った瞬間にテンション激下がりするのだが、今日の私は一味違う。
「さて、何か意見がある方いらっしゃいます?」
ここまではいつも通り……。
だけどここからの私には皆の者括目せよ!
これが私の新しい姿だ!
「おや、ナートルさん、今日はいつもと違ってなんだか張り切っていますね。無意識にかは知りませんけど何やら顔がご満悦な様子です。何かあるならどうぞ!」
スライルさんの一言に一瞬息が詰まる……。
私今ドヤ顔してたの?
もうこうなったら頑張るしかないわね!
「あの……」
恐る恐る声を出し、手を挙げる。
いつもは会議場の置物みたいな扱いの私に皆の視線が集まり思わず怯む。
でも、これは自分で決めたこと。
だめよ、言わなくては!
だって――。
「私思ったんですけど、スライル様は少しお休みが必要だと思うんですよ。そこでスライル様を一度、この5人会議の役員から外してしまうというのはいかがでしょうか?」
――だって、私、楽したいんだもん!
これはあの小さい封筒に入っていた不思議な手紙をもらった日……。
あの後、冗談みたいな軽い気持ちで手紙を出したら返事が来た。
内容も面白くていつしか激務激務に追われ心身ともに疲弊してしまってた私の心の保養になっていった。それから定期的に他愛ない内容のやり取りをしていたのだけど、ある日思い切って相談してみた。今の仕事は大変で研究ができないから辞めたいってこと。だけど父の期待を裏切れないってことを……。だってなんかそう言うことができるって最初に言ってたから……。
そして、その返事は来た。
「あなたの悩みは研究ができないことと仕事がやめられないこと。研究ができないのは仕事が忙しいから、仕事がやめられないのは父の期待を裏切ることになるから。確かに私もこの両立は難しいと思います。ですが、よく考えてください。この父の期待を裏切るという行為とはあなたが社会的地位の高い役職放棄すること。ならば、社会的地位が高い役職にいて尚且つ時間が取れる役職にいれれば、これらの両立は可能になります。そして、それは一つ……」
それが、大統領!
というのも……
「と言うのもこの国の体制として各業務は優秀な大臣たちがいて大統領はそのそう元締めです。なので基本業務はその方々に任せればいい。国がうまくいっているというのは大臣たちが優秀だからです。スライル様に何か大統領として欠陥があれば、の話ですけど、解任を提案されてみてはいかがでしょう。雲行きが怪しいときは暫定的と条件を付ければ何とかなるかもしれません。うまくいくとはあまり思えませんけど、案ずるより産むがやすしです。」
言った。私は言い切ったわ!
迷ってても仕方ないわ。
行ってうまくいけば言うことなし、言っても駄目なら今まで通り、言わなければ何も変わらない、変えられない。
長い沈黙と私に向かう妙な視線、なんだか胸が痛い……。
……ここはもう謝っちゃおうかな?
いや、ここは前に進もう!
「もちろんスライル様を永久追放するなんてことはありませんよ。暫定的というか今の大変お辛そうな状態が終わるまでです。スライル様の元気がないとこの国も元気がなくなってしまいます。そうなってはいけないと思って私は提案させていただきました。」
なーんちゃってそんなの全部建前だけどねー。
ムスッと聞いていたメンデル様は私が言い終えると机を一度叩き言った。
「何を言い出したかと思えば……、論外!」
ズバッと言い放ったメンデルさんのその言葉は私の胸にグサッと突き刺さった。
メンデルさんだけじゃない。ブロームさんも当の本人であるスライルさんも険しい顔を崩さない。
……これはまずったか?
私の心が完全にポキリと折れたとき、
「いや、ちょっと待ってください。私はナートルちゃ……さんの意見に賛成です。」
とバルテニーおじさんが静かに声を上げた。
あの手紙、おじさんが?




