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フレロレ、4

「それじゃあ、僕の報告の番だね。」

一つ深呼吸をする。

確かなことはまだ何もわかってない。

証拠もなければ確証もない。

だけど、

「トルニエ様に遭った印象としては……、僕の中ではこの事件の真犯人な気がしてならないよ。」

「馬鹿な。トルニエ様がそんなことするわけがないだろ!まず第一、トルニエ様がどうやって人を集めたっていうんだ?トルニエ様には反乱を促すだけの時間も、そこに行く時間もない。トルニエ様のカリスマ性はすごいものがあるとはいえ、ほとんどの人は顔も知らないはず。名乗ってもそれを証明しないとついてこないだろう。そんな時間がどこにあったっていうんだよ!」

キーデルが声を荒げる。

僕もちゃんとわかってから言いたかったけど、今のスライルさんのことを考えるとそんなに時間がないから……。


「ええっと……、あれだよ。戦争が終結する前だよ!建国記念日の前から準備をしていたら十分時間があるでしょ。」

「何を世迷言を……。一方で国を一つにするために戦いながら、一方で国と戦うための仲間を集めるってそんな馬鹿な話ないだろ!そんな面倒なことをやるくらいならはじめからこの国のために戦わなければいい。それにそんな有志を募る活動を自軍の大将がやっていて危ないと思わない部下がいないと思うか?戦争中はそんなことやってる時間も場所もない!それに気づけないとか俺たちは間抜けか!」

「……そうは言ってない。……方法はわからない。」

思っていたよりも反論された。

「ほら見ろ!」

キーデルが勝ち誇った顔をしながらさらに追い打ちをかける。

「そもそもトルニエ様には反乱を起こす動機がないんだ。スライル様も言っていたけど、トルニエ様は言えば国を内側から変えられた人だ。わざわざ大勢の人を集めてひっくり返そうとする必要なんてないんだ。」

……それはそうだ、けど……。


「俺もそうだし、スライル様やメンデル様みたいなトルニエ様を疑いたくない人が多いからトルニエ様を犯人にしないわけじゃない。トルニエ様を犯人にするだけの理由も証拠も根拠もない!まだフレロレ、お前はトルニエ様が怪しいって思うのか?」

「あの時、僕の勘がそう言ったんだ……。うまく言葉にはできないけど……。ごめん、悪かったよ。これまでの捜査で僕がわかったのは、キーデルのトルニエ様への信奉だけだったよ。」

「……なんか言い方がムカつくな。これでわかったように次からは根拠をもって言ってくれよな!俺達はマジで捜査してんだ。遊びじゃないんだぜ。」

「悪かったよ。」

思っていることをそのまま言っちゃったことは本当に悪いとは思っているよ。


ただ……、それじゃあ、あの時感じたあれはいったい何だったんだろう……。


僕が落ち込んでいるように見えたのか、グレンがやさしい声を出す。

「まあまあ、一旦ここで仲直りして。あの引っ込み思案だったフレロレが俺たちの中でとはいえ勘なんて曖昧なものでこれだけ発言できるようになったのは結構な進歩じゃないのか。ただキーデルが言うようにこれは遊びじゃない。これからは気をつけろよ。ちょっと何か面白いことになると思ったんだけどな……。」


ごめんよ、グレン。

だけど、僕だっていつもいい考えが思いつくわけじゃないんだよ……。


グレンがコホンと一度咳払いしてさっきまでの空気を払拭するような元気な声で、

「じゃあ、次はキーデルの報告頼むな!」

と言い、キーデルも少し落ち着いて頭が冷え、さっきまで取り乱していた自分を忘れるように、

「おう!」

と元気な声を出し立ち上がった。



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