ゴルジオ、3
「――そうですか。それではあなたもゴルジオ様を監視するんですね?」
「ええ。俺達で監視を分担しましょう。それで気づいたことはお互い報告し合いましょう。」
……あれは。
偶然通りかかった部屋でキーデルとメンデルのところから最近やって来たオーネンスが立ち話している。
何?俺を監視する?
……いや、オーネンスの方はさすがに察していたけどもまさかキーデルまで。
そんなに変だったか?
俺が仕事をしたことが!
でも仕方ないじゃん、あの状況じゃあ!
「それで何か現時点で気づいたことありますか。」
キーデルが真剣な表情で質問している。
キーデルとはまだ会って4か月くらいか……。
そんなに長くはないが、あいつは俺の周りにあまりいない頭が切れるタイプだ。
苦手なんだよな、性格的に。俺は基本的に素直だから……。
「私だって馬鹿ではない。もういろいろわかっていますよ……。見たくないものまでね……。ハァー……。」
オーネンスの方はもう見た目から苦手だ。メガネとか本を持ち歩っているところとかもう完全アウト!
話が合う気がこれっぽちもしない。
「あの男……、たまに昼間部屋を抜け出して女の家に上がり込んでいましたよ。」
「……マジで!あの野郎!俺が仕事してる時に!」
「まったくなんでこうも自分の欲望に正直に動けるんでしょうね。責任というものはないのでしょうか?」
「ほんとですね!」
「馬鹿はこれだから……。」
「共感します……。」
……なんかものすごく馬鹿にされてない?
というかそれ、ただの悪口だろ!
ただ、割って入る気はしない。
だって絶対言い負かされるから……。
あいつにもよく言い負かされたからなー。
経験からして歯向かっちゃいけない人っていうのはいる。
俺の頭はそんなによくないからこそ、俺には頭がいい人間が必要だ。
それに戦ってもスッキリしないだろう。
あいつらそこそこ戦えるからな。
逃げに徹されたら当たらんだろう……。
「あ!知ってます?ゴルジオ様って結構細い人が好きらしいですよ!本人があのごつごつした見た目のくせに!」
「確かに。この前昼間抜け出したときに尾行したんですよ。その時もなんか線の細い方のところに行ってました。」
「あのなりでなんか笑っちゃいますよね!」
……これ、何の情報交換会?
恥ずかしい。
黙って抜け出していたことも女の趣味まで部下に筒抜けかよ。
まあ注目されてるってことはそれだけ人気があるってことだろ。
そう言うことだ!
「そう言えばオーネンスさんって結婚とかされてるんですか?」
「ええ。」
「じゃあ、今は単身赴任中ですか?」
「そうなんですよ。首都に妻と3歳になる息子がいます。」
「……それはさぞ大変でしょう。」
「そうですね。昔は結婚とか子供とかどうでもいいことだと思っていたんですが、実際できるともう可愛くて仕方ない。」
「いいな。俺はまだそう言う人いないんで……。」
「うち姉さん女房なんですけどいいですよ。今まで基本的に自分のことは自分でやってきたんですが、面倒を見てもらうというのも。誰かいないんですか?お友達のお姉さんとか?」
「お友達のお姉さんですか……。グレ……、そう言う人はいないですねー。」
「ん?今なんか言いかけませんでした?もう若いのに隅におけないなー。」
「何でもないですってば!」
……あれ、俺の話は?
おい!
我慢できん!
ドアを蹴って開け、ずかずかと部屋に入り込むと二人は同時に俺を見た。
が、すぐに視線をお互いに戻し、
「オーネンスさん、今夜飲みに行きませんか?もう少しお話ししたいんですけど。」
「……そうですね。今やっている仕事が少し残っていますので1時間ほど待っていただけます?」
「わかりました。近くに焼き鳥のおいしい店があるんでそこ行きましょう。それまで俺は部屋にいるんで。」
「わかりました。終わり次第行きます。」
……二人が見たことない笑顔で俺に軽く会釈して部屋を出ていった。
というかオーネンスは酒が飲めないんじゃなかったか?
お前ら俺のことなんだかんだ好きなんだよな!
おかしいな……。
俺ももう少し知的にならないとだめなのかね……。
「あれ、旦那!一人で何してるんすか?」
部屋の前を通りかかったギミーがおどけた声で聞いてきた。
「ちょうどいいところに来たな。すまん、また一発殴らせてくれ!」
「ちょっ、またですか!」
何かこいつ殴りやすいんだよな。
悪いとは思ってるよ。
俺の拳を受け吹っ飛んだギミーは泣きそうな顔でゆっくりと立ち上がる。
「おい、ギミー。近くに焼き鳥がおいしい店があるだろ。そこで少し語ろうぜ!お代は俺が持つからよ!」
「いててて。……旦那、俺は旦那とより女と話ししたいっす!」
……確かに!
うん。やっぱ知的には無理だ。
そもそも必要ないしな。




