ナートル、3
もう、やってられないわー。
大変大変毎日たいへーん!!!
大臣がこんなに大変だったなんて思わなかったわ。
何でこんなことに頑張らないといけないのよ。
それもこれもあの禿がお父様に私の大臣としての働きを告げ口したりするから……。
お父様がたまに様子を見に来るようになっちゃったじゃないの!
ここ一か月スライル様なんてただボーっとしているだけのくせに、私だけ忙しくなってない?これっておかしくない?
マジわけわかんない!
ああ、毎日毎日書類の山!
聞いたことない難しい言葉ばっかりで何書いてあるかわかんないし!意味が分かんない!
この紙きれは何が言いたいの?
この紙切れにサインすると何が変わるの?
もうやってらんないわよ!
木漏れ日が部屋を照らすのどかな昼下がり。
研究室内にある私の部屋の専用の机に向かって書類と戦っていたのだが……、今は椅子の背もたれに私のすべてを預け、代わり映えのない天井をただ眺めている。
食品研究をしている班から提供してもらった甘いお菓子をほう張りながら、ふと思った。
……部屋の模様替えでもしようかしら。
ボーっと考え事をしていると、コツコツと唐突にドアをノックされる。
急いでお菓子の袋を片づけ、いかにもお仕事やってました風をあっという間に作り出す。
机から離れなくてよかったー。
「どうぞー!」
「ナートル。やってるか?」
「お父様!」
部屋に私が尊敬してやまない父が両手にコーヒーをもって入ってきた。
「もちろんやってるわ!やはり国の代表にもなると忙しいのね。あらやだ、忙しすぎて変な汗かいてきちゃったわ。」
脇の下とか……ちょっと恥ずかしい。
「本当にやってたのか?」
さすが父鋭い。ただここは……。
「もちろん。この国の何より父の期待を背負っているのに、適当なことなんてできないもの。」
「まあ、ナートルがそう言うのならそうなんだろう。お前は偉い子だからな!」
見栄を張ってみた。
……お父様、ごめんなさい。
父が片方を私の机の上に載せ、もう片方をすすると、
「さっき、家のポストを見たらお前宛に結構手紙があってな。」
そう言って懐から大量の手紙の束を出す……。
もう文字はいい……。
その手紙の束も笑顔で机の上に載せる。
「お前も仕事仕事じゃ大変だろ。たまにはこれ読んで元気出せ!」
「う、うん。ありがとう、お父様……。」
……、見たくねー。
「息抜きも大事だぞ!」
……実はさっきしてた。
「ほらほら!」
……しかも今かよ!
私は父の勧めの手前、やまないわけにはいかず今やっている(最初の3文字読んだだけの)書類を途中にして手紙の束に手を伸ばす。
どれが楽に読めるかな……。
封筒が小さいということは当然文字数も少ないはず!
ピンクの一番小さくて可愛らしい封筒を手に取り、中を開ける。
「私はあなたを応援しています。最近はなんだか忙しそうですね。私はあなたの負担を減らす方法を知っています。もしよければ返事を下さい。私はあなたの力になりたいんです。」
……なんだろう、これ?
「どうだ、ナートル?元気出たか?」
「う、うん。ありがとう、お父様。」
満面の笑みを浮かべる父。
まあ父のこの笑顔を見れただけでよかった。
「あのー、クードル様。来客です!」
階下から声が聞こえる。
「あ、ああ……。」
一気にしゅんとする父。きっと父の人見知りは一生治らない。
肩を落として頑張れよと言って私の部屋から出ていった……。
それにしてもさっき読んだ手紙……。
不思議な感じ。
私の負担を減らす方法を知っているのなら聞いてみようかしら。
私は今日初めてペンを握った……。




