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歯車廻編③VSサンライザーその2

夕暮れだった。


軒先に腰を下ろし、俺とユウヤはいつものようにスイカを頬張っていた。


風鈴の音が、夏の終わりを惜しむように静かに鳴っている。


時間はそろそろ夕暮れ。

遊びの時間も終わりが近かった。


そんな中、不意にユウヤが口を開いた。


「なぁキョウヤ」


「なんだ?」


ユウヤはどこか物憂げな顔で空を見上げながら言った。


「お前、将来の夢とか無いのか?」


「世界一のコマンダー」


「おいおい即答かよ! っていうかそれ、お前の夢じゃなくて歯車廻の夢だろ!」


「めんどくせーなぁ。じゃあ宇宙一のベーゴマスターでいいよ」


「それはベーゴマスターの主人公、真波スピンの夢だろ! 適当だなお前!」


ユウヤは昔から、将来の話をするのが好きだった。


どんな仕事をしたいか。

どんな女の子と結婚したいか。


あるいは。


「もっと世の中はこうあるべきだ」


なんて、小難しいことを真顔で語り出すこともあった。


夢が無い俺に、しきりに夢を見つけさせようとしていたのだ。


今思えば、あいつは子供のくせに妙にしっかりしていた。


「今が楽しければ夢なんて別にどうでもいいだろ。じゃあ逆に聞くけど、ユウヤはあるのかよ?」


「……あるよ」


「言ってみ?」


「やだね」


「はぁ!? なんだよ! お前から話振っといてダンマリかよ!」


「うるさい! お前には絶対言わないもんね!」


「つべこべ言ってないで言え!」


ユウヤはニヤリと笑い、自分の相棒を掲げた。


「どうしても知りたきゃ、ギアバトルで俺に勝ってからにしな! 俺の相棒、ユーヤカスタムにな!」


「上等だユウヤ! 今度こそボコボコにしてやるから覚悟しとけ!」


夕焼けに照らされたキメラギアフォースが、誇らしげに輝いていた。









――――――












「どうやら心の迷いは無くなったようだな」


現在。


ギアフィールドの中央で、廻がにんまりと笑った。


「あぁ……お前のおかげでな」


『……3……カウント停止。ゲームを続行します』


静かに目を閉じる。


思い出したよ。


お前の名前を。


忘れててごめんな。


「もう一度……俺と戦ってくれ! ユーヤカスタム!!」


その瞬間。


ギアシューターに内蔵されたソウルギアが大きく脈動した。


ドクン――。


まるで心臓のような鼓動。


白い光がユーヤカスタムを包み込む。


そうだ。


このギアフォースの名前は――


ユーヤカスタム。


ユウヤとの思い出が宿った、あの夏のギアフォースだ。


光の中で、ユーヤカスタムの胸部アーマーが変化していく。


白かった装甲が、黄金色へ染まっていく。


それはまるで――


サンライザーと同じ輝きだった。


「色が戻った!?」


「奴の胸部アーマーがサンライザーと同じ色に変化した!? いや……まさかこの能力は!!」


リョウガが目を見開く。


「あぁ感じるぜリョウガ! アイツの中のギアソウルと、ギアフォースに込められた熱い想いが!」


廻が笑顔を見せた。


やっぱりそうなのか、ユーヤカスタム。


お前のこの輝きは――サンライザーの輝きそのものだ。


「理屈はさっぱり分かんねーけど、あのギアフォースからサンライザーの力を感じる! 太陽の匂いがするんだ!」


廻は確信を持って叫んだ。


「やはりか! やはりあのギアフォースはサンライザーの能力を宿しているのか!」


リョウガが唸る。


「さぁ廻……勝負はここからだぜ! 俺とユーヤカスタムの想いが強いか!」


「へへ! 俺とサンライザーの想いが強いか!」


「「勝負だ!!」」


二人の掛け声と同時に、二体のギアフォースが地面を蹴った。


黄金の閃光が激突する。


拳と拳。


衝撃波。


火花。


激しい打撃音がギアフィールドに鳴り響く。


よし……!


今度はちゃんと動ける!


俺の想いがユーヤカスタムに届いている!


まるで今まで噛み合わなかった歯車が、ようやく噛み合ったみたいだった。


しかも。


サンライザーの胸部アーマーに秘められた能力。


太陽エネルギーの増幅。


その力が今、ユーヤカスタムにも流れ込んでいる。


能力値が一気に底上げされているんだ。


さっきまでのようにはいかないぜ、廻!


「へへっ! やっと面白くなって来たぜ! お前も嬉しいだろ!? なぁサンライザー!」


「すげぇ……歯車廻のサンライザーに負けてない! 何者なんだアイツ!?」


観客席からどよめきが起こる。


ギャラリーたちがざわめき始めた。


「アイツ……ギアバトルの中でギアフォースの操作を学んでやがるのか……! ものすごい勢いで成長している……! いや、これはむしろ……」


リョウガは戦況を分析しながら、ある記憶を思い出していた。


歯車廻と初めて出会った、あの日のギアバトルを。


そして叫ぶ。


「廻が導いてるんだ! この俺の時のように!」


混じり合う拳。


力は互角だった。


一方が攻撃すれば、もう一方が即座に反撃する。


一進一退。


まるで互いの魂をぶつけ合っているようだった。


「はっはっは! どうだ! ギアバトルは面白いだろ!?」


「あぁ……最高だよ……」


自然と笑みが零れる。


やっぱりお前は最高の主人公だよ。


こんな名も知らない俺にまで、希望の光を照らしてくれる。


大人になる中で忘れかけていた。


ギアフォースを純粋に楽しむ気持ちを。


あの夏の熱を。


思い出させてくれる。


そんなお前だからこそ。


テレビの前でずっと憧れていたお前だからこそ――


俺は。


お前に勝ちたいんだ!


俺はギアシューターを握り締めた。


ユーヤカスタムへ、必殺技発動の信号を送る。


同時に。


廻もサンライザーへ信号を送った。


『FINISH BREAK!』


ギアシューターから電子音声が鳴り響く。


「サンバーストブレイカー!!」


サンライザーが黄金の太陽オーラを爆発的に膨れ上がらせた。


灼熱の輝き。


圧倒的エネルギー。


もし。


俺にもサンライザーの力が使えるなら。


ずっと憧れていた、あの必殺技が使えるかもしれない。


一か八かだ。


試してみるしかない!


「ユーヤカスタムよ! 全ての太陽エネルギーを右腕に集めるんだ!!」


『FINISH BREAK!』


電子音声が響く。


その瞬間。


リョウガの表情が驚愕に染まった。


「なっ、あれは……! あの技はっ!」


ユーヤカスタムの右腕へ、黄金のエネルギーが集中していく。


「サンバーストフィスト!!」


全ての太陽エネルギーを右腕一点へ集中して放つ、サンライザーの奥の手。


まだ廻自身すら完成させていない未完成技。


何故こいつが知っている!?


何者なんだこいつは!?


リョウガが叫ぶ。


「いっけぇぇぇ!! サンライザー!!」


「負けるなぁぁ!! ユーヤカスタム!!」


次の瞬間。


二つの太陽が衝突した。


轟音。


閃光。


凄まじい衝撃波がギアフィールド全体を揺らした。


爆風で砂煙が舞い上がる。


視界が白く染まる。


そして――。


ゆっくりと砂煙が晴れていく。


ギアフィールドに立っていたのは。


サンライザーだった。


ユーヤカスタムは、場外まで吹き飛ばされていた。


「やったぁ! 俺たちの勝ちだ!!」


廻の歓声が響く。


俺は静かに息を吐いた。


「……俺の負けか」


不思議と悔いは無かった。


むしろ清々しかった。


まるで――


ユウヤとギアバトルをした、あの日みたいに。

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