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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第九章壊れた信頼 本当の思い
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第92話一時の別れ

宴会も終わり、夜の帳が下りようかと言う時、エミリーは夜遅く、庭の木陰に呼び出されていた。

木陰の下にあるベンチに腰を下ろし、手を伸ばすと軽く伸びをする。

体を軽く伸ばしながらしばらく待っていると呼び出した本人がようやく登場した。


「悪い悪い、抜け出すのが大変だった」


「女の子を待たせるなんて酷いですよ」


文句ありげに頬を膨らませ足を組む。

いかにも怒ってますアピールをしているエミリーの横に遅れて来たキリアも腰を下ろすと手を合わせた。


「本当にごめんって」


「わかりましたもういいです.....で?何の用ですか?.....もしかして愛の告白?.....なんちゃって.....えっ......」


そう言った、エミリーの手をユウキは掴んだ。

まるで逃がさないとばかりに、その行動にエミリーは動揺するが。

ユウキの瞳は真っ直ぐとエミリーの目を見ていた。


「ああその通りだ、俺はエミリーの事が大好きだ、だから......」


掴んだエミリーの手に赤い指輪をはめると。


「え、ええええ!?う、嘘でしょう!?」


「そうだが?」


もう少し夢を見せて欲しかったのに。

あっさりと肯定を返され、逆に冗談を本気にして顔を赤らめていた自分が恥ずかしくなる。


「ッ〜!?」


声にならない声を上げて顔をそっぽ向けた。


「ごめんごめん、許してくれ」


「別に何も怒ってないですよ!」


荒げた声で怒ってないと言われても、説得力のかけらもない。


「そうか?....ならいいんだけど、で?指輪の効果はどうだ?」


「へ?指輪......」


「一応氷結魔法を封じそうな特性をつけたんだが.......どうだ?変化あるか?」


「うーん?ちょっと暑です」


「そ、そうか」


不思議そうに指輪を見つめるエミリー、ユウキの頬を冷や汗が流れる。


(おいおい嘘だろ....上級魔法の爆炎魔法『紅蓮』だぞ?....それでちょっと.....俺がつけた時は指燃えたのに.....)


念の為に作った最上級のもの、作っておいて良かった。


「一応収まってる?いや相殺してるみたいです、ありがたく貰っときますね。―ところで、どうして戦争なんてするんですか?」


「どうして、か......うーんなんでかな?」


むかついたから?だから戦争をふっかける、あり得ない。

復讐の為?いやいや、復讐相手以外に迷惑をかける理由がない。

やっぱり思いつくのは利益の為くらいしか思いつかない。

頭を悩ませる俺にエミリーは何故かため息を吐き。


「言い方を変えますね、どうして戦争を公にしたんですか?貴方なら、グリモア王国に潜入してあの力を使えば、滅ぼす事なんて造作もないことでしょう?」


あの力?......ああ霊鬼の事か。


「悪いけど....あの力は...【霊鬼】はまだよく分かってないんだ......もちろん使う事には使うさ、けどどんな対価が必要になるか......」


「【霊鬼】?.....」


霊鬼と言う聞き覚えのない言葉にエミリーは可愛らしく首を曲げる。

まあ霊鬼って名前も解説スキルで聞いたんだけど。


「あの状態の事だよ、それに【霊鬼】にならなくても多少力は下がるけど同じ能力は使えるよ、ほら」


ユウキが左手を空に向けると、いきなり割れた。

割れたというより空間がえぐり取られたように黒い黒いゲートのようなものが発生した。


「な、なんですかこれ」


「んー?何かの空間だと思う、俺もよく分かってないんだが..........まあ予想だけど【霊鬼】ってのは、死者が生き返り人の体を乗っ取った者が魔物化したもの(by解説スキルより)

つまりあの世とこの世を繋げられるんじゃないのかな、と思ってる」


「じゃ、じゃあこの先は.....あの世?.....」


少し怖そうに距離を取り始めたエミリー、に少し半笑いを浮かべた。


「なんてな、あの世なんてないよ、魔法的にも科学的にもとっくの昔に証明されてる、死んだらあるのは無だけだよ」


「じゃ、じゃあこの先は無って事なんじゃあ......」


「ああ、確かにそういう考え方もできるな......ちなみに...」


右手を掲げると簡易的な初級魔法『ファイアーボール』を掌に浮かべた、その炎はとても弱弱しい。

その炎を迷いもなくユウキは左手のゲートに押し込んだ。

ゲートから右手を放してみればファイアーボールはすっかり消えてしまった。


「この状態で右手でゲートを開けると.....」


左手のゲートを閉じ、すごく適当に右手で何かを開ける動作をすれば、そこにはまた同じゲートが開いて―

次の瞬間エミリーの目の前をファイアーボールが駆け抜けた。


「とまあ、こんな感じの能力なんだが....やっぱり『霊鬼』の時と比べると、弱くなってる感は否めないな」


「そんなに違うのですか?」


「ああ、ゲートを開けられる数と大きさに限界はなかったし、距離も一キロくらいまでなら飛ばせる、使い勝手が良かったな....」


ああ、これで納得がいった。話を聞いてよかったこれでまた謎が解けた。

ずっと不思議だったのだ、どうして瀕死のカノンが都合よく家の前に倒れていたのか。

どうして正義の放った槍が、ユウキに当たらず正義の体に突き刺さったのか。

どうして正義の魔法の余波がこちらまで飛んで来なかったのか......

それもこれも霊鬼の作り出したゲートのおかげだったのだと。

そこまで思って体をユウキに向き直した、ベンチに足を乗せ折り畳み畏まるように正座の態勢に入った。

そして何を思ったのか深く深くただ頭を下げたのだ。

その光景に、エミリーの行動にユウキは驚嘆し目を見開く。


「本当にすいませんでした.....私はあの時あなたの姿を見てから、今まで敵だと思ってずっと警戒していました....ごめんなさい....」


「そう、だな....まあ知ってたよ...皆が俺のことをずっと警戒してて怖がってたことは.....皆俺にできるだけ怖がっていることを感づかせないようにいつも通りにしてたみたいだけど....逆に分かりやすかった.....」


その言葉にエミリーはただ頭を下げて謝るしかない、


「本当にすいませんでした.....」


「けどさ、俺はこうやってエミリーと話して、皆の本音を教えてもらって、それに皆ができるだけ聞かないようにしていた事も聞いてくれたしな、すっきりしたよ......ただ、一つだけ言わせてもらうとな....」


そういいながら普段よりもむすっとした顔でベンチから立つと、エミリーの目をまっすぐと見つめ。


「エミリー性格悪いぜ?」


それだけ言って、一人抜け出してきたカノンのベットにいそいそと帰りだした。

それを見送った後ベンチからため息交じりに立ち上がると


「ありゃあバレておったな」


後ろの木にひっそりと息を殺し隠れていたリンから声が上がる。

エミリーは深い溜息を吐いた。


「頑張って隠した意味ないじゃないですか、性格悪いって言われた分損ですよ...」


「でも提案者はエミエミですよぉ?それじゃあ性格悪いってぇ、言われても仕方ないでしょぉ~」


いつの間にかベンチに腰を下ろしていたヒースミルは前のめりに太ももに肘を置き手を組みながら失敗したというのににこにこ笑っていた。


「まあそうなんですけど....」


「別に気にしなくていいんじゃないかな、結果本音も聞けたしそれに能力の事も聞けた....結果オーライでしょ?」


家の中から出てきたオークはあくび交じりにそんなことを言って。


「それより皆、早く寝たほうがいいよ?明日早いんだから.....」


「そうでしたねぇ、じゃあぁ私は先にぃお暇させていただきますぅ」


手のひらでベンチを押し、小さくジャンプしながら立ち上がるとそのままエミリーの手を取る。


「え?な、なに?.....ちょ、ちょっと!?」


無理矢理家の中に連れていかれてしまった。

その二人を見送りリンに視線を戻すと。


「どうしていかないの?リンちゃんは」


「わしはグリモア王国自体好きではない、それにこの国の事もある」


「ふーんそうなんだ〜?........本当にそれだけかなぁ?」


「なにが言いたい?」


「理由を知りたいなって.......僕も残りますし、仲間でしょう?教えて下さいよ」


「........学校が嫌いなんじゃ....」


それだけ言って家の方向とは反対の暗い民家に歩いて行った。


                       ♯


「おー!!なかなか綺麗な国じゃねえの!!」


馬車の窓から体をのりださせ、グリモア王国を見やる。

馬の速度に風が吹き荒れ、特徴的な赤毛が荒れ狂う。


「キミヲも見てみろよ!」


藍色の長髪、窓から入る風で舞う髪を鬱陶しそうに押さえ、窓を思いきり閉めた。


「俺はいい、景色なんてどこも一緒だ」


すぐに泰然たる様子で右手に本を持ち、左手に魔剣を抱き抱えていた。


「連れねぇなぁ、まあホープと似たようなもんか.....にしても最新技術はすごいなぁ」


席に横暴に座り込むと前の馬を見る。

その馬の皮膚は鉄でできており、下を見ればグリモアの景色が広がっている。

つまり今レイ達がいるのは遥か上空だ。


「それにしても....戦争ねぇ?俺的には人なんて殺したく無いんだがな」


「とち狂った馬鹿が、そんな気構えで行けば死ぬぞ」


「ついにSランクになった俺達に敵なんざいないぜ!」


「油断禁物と言う言葉を心に刻め、馬鹿が」


嬉しそうに、自慢げにそう叫ぶレイにいつもに増してキミヲは厳しい言葉を投げかけた。


                      ♯


窓から差す光がキリアの瞼を照らしたころ、小さな唸り声とともに体を動かした。

その時耳には聞き覚えのない声が響く。


「う?ん.....」


「おはようございますキリア様、下にて朝食の準備が出来ております、お召し物はこちらに」


おぼろげな目を開けると見えるのは緑色の髪に髭、執事服を纏った50代くらいの男だ。


「ああ、ありがとう.....ってお前誰だ!?」


「申し訳ありません、ご挨拶がまだでした私は......ヌーともうします、メルリン様の部下でございます、ニス=グリモアにおいての生活などを手助けするようにお申しつけられました」


「ああ、そうだったのかありがとう.....あれ?ここは既にニス=グリモア?」


「すいません、メルリン様が勝手に魔法で転送いたしました」


「あの幼女.....まあいいか.....案外綺麗なところだな」


窓から見える外の景色は噴水などの広場、周りには装飾用の木、その奥には装飾過多な城が見えた。


「一等地ですからね、周りに住んでる貴族達ゴミですが景色はいいですよここは......おっとその言い方では私もゴミになってしまいますね、あのゴミ達と同じなど吐き気を通り越して死にたくなってしまう。ふぉっほっほ!」


高笑いをする声とは裏腹に全くの無表情、少し顔に影が差している気がするし、目が座っている.....普通に怖い。


「あ、案外言うんだな」


「ふふ、案外ですか、これが普通ですよ......おっとお嬢様が起きそうですね」


「お嬢様?.....ああカノンか」


隣では可愛らしい顔をして、ん〜と唸っている猫の姿。


「では私は5目の挨拶をしますので、キリア様は下の階のエミリー様とお食事をお願いします」


「4回もあのやり取りしてるのか....」


呆れ気味にそう呟き、好々爺の後姿を見ながら部屋を後にした。


あくび混じりに、なれない家を探索していると。

一際目立つ扉が、開けてみればそこには豪華な食事が置かれたテーブル、その傍らには椅子に腰を下ろした見知った女性がそこにいた。

青髪を手で押さえながら食べ物をはむはむと食べていた。

なんだこの小動物。


「おはようございますユウキさん」


食べる手を辞めず、こちらを振りむき器用に頭を下げる。


「おはようエミリー......他の奴らは?」


挨拶を返し、エミリーの近くを見てみるが他の奴らが見当たらない。

それとなく聞いて見ると、エミリーがため息混じりに言った。


「ミキが外を見に行きたいとごねたのでゴブリンさんとヒースミルさんが付いて行きました、少しすれば帰ってくると思いますよ、本当にミキのわがままは大変です、それはそうとリンちゃん達は?」


「リンとオークには戦争が終わるまで国にいてもらうことにした、リヒトは旅に出たよ.......罪悪感でも感じてんのかな?」


正義を殺した後に聞いた話だが、なんでもリヒトは操られていたと言う理由もあるがエミリー達を襲ったらしい。

その事をリヒト自身もユウキに話しに来た、一応止めはしたが決意は変わらなかった。


「あははは、確かにそうかとしれませんね.....あ、これ美味しい」


箸で口に運んだのは真っ白い切り身、確かこれは別名爆発魚と言われてる魚エクスフィッシュ。

調理法が難しく一歩間違えれば爆発するとても美味な高級魚で、昔に何度も食べたことがある。


「これはエクスフィッシュだな.....俺のも食べていいぞ」


「え?いいんですか?」


そう聞きながらも既にお皿に手を伸ばしている。

本当にエミリーは食欲に従順だ。


「俺は昔、嫌という程食べてるし、あんまりお腹がすいてないんだよな......少し見て回るか.....」


窓の外を見ながら誰にも聞こえないだろう小さな声で何事かを喋ると、どこから取り出したのかどさりと人数分の布袋を机の上に置いた。


「なんです?これ」


「ニス魔法学園の入学金、今日からエミリー達には最新魔法の勉強をしてきてもらいます」


「え!?ユウキさんは!?」


「キリアだっての.....俺は別の用事があるから入学はしない、それに正直だるい....」


「なっ!?」


「入学試験は今日の朝9時からだ、じゃ、頑張ってな」


「9時ってもうすぐじゃないですか!?ちょっと待って下さいよ!!」


エミリーが異論を唱えようとしていたので、外出用の服を手に近くの窓から飛びした。


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