第93話兄と妹
「ついた...」
ニス魔法学院、キリアに言われた直後にエミリーは動き出した、すぐにミキ達を無理矢理連れ戻し、カノンを叩き起こし、外出用の服に着替えさせ、手短に説明をすると、布袋をアイテムポーチに詰め込み貴族ヌー邸を後にした。
その結果ギリギリなんとか間に合うことが出来たようだ。
エミリーは荒く肩で息をしながら、目の前の建造物を見た。
目の前の建造物、ニス魔法学院は、ニス=グリモアの中心地に建てられている。
主に煉瓦と魔鉄の複合による特殊な石鉄材により、魔法学院は建造されており、四方には大図書館、魔法実験施設、軍事施設、闘技場が設置されており、それをすべて含め、総合ニス=グリモア先進魔法学院となっている。
さすがそれだけ大規模であると、他国からわざわざ通いに来る貴族も多く、それがニス=グリモアの名物であり、胸を張って自慢できることであることは明白だ。
「う~ん流石に並んでますね.....どうしましょうか?」
「いっその事ここにいる奴ら全員潰しましょうかぁ?」
「いいや長く待つ必要もないし、物騒なことをする必要もない.....ほら、これを持て」
ゴブリンから渡されたのは、小さな紙きれ一つ、それを人数分分けていく。
そこで気が付いた。
「あれ?妖狐のやつどこに行った?」
辺りを見渡しても姿かたち見つからない、あれだけ特徴的な姿をしていてわからないはずがないのだが。
「妖狐姉ちゃんなら兄ちゃんについて行くって言ってたぞ」
戸惑っているゴブリンにキリアからもらった青黒い大剣を大事そうに抱きかかえているミキがそういうと、ゴブリンは頭をまた悩ませ始めた。
「どうして仲間の魔物達はバカばかりなんだ....はぁ...」
深い深い溜息。
今までの苦労が知れるそのため息、だれもが同乗しそうな中で、ミキは全く空気を読まなかった。
「なんか色が変わったぞ!....金色だ!」
「私もそうですね」
「てかみんな同じみたいですよぉ?」
ゴブリンたちが持つ紙はすべて輝く金色に変わる。
ミキが無駄に大きい声を上げたせいか貴族達の視線がミキの手元に集まった。
「う、やばい、急ぐぞ」
「え、また走るんですか!」
「疲れましたよぉ」
文句を口ずさみながらもゴブリンの後ろを走り、Sと書いた暖簾下をくぐり、試験会場に入っていった。
中に入れば同じ金色の紙を持つ、少年少女たち。
どの人達も高価そうな見た目をしている。
どいつもこいつも場違いだという眼でヒースミルとゴブリンを見るが、その事に喧嘩を売られていると勘違いした二人は。
「あ?」
「やりますかぁ?えぇ?」
こちらも迎え撃つ気満々だった。
今にも、実力の違い教えてやるよ、と不敵に笑っている。
「落ち着いてください.....」
「そうですよ!エミリーちゃんの言う通り」
カノンとエミリーが止めにかかるが。
「私がやります!」
「そうじゃないですよ!?」
止めに入っているのはカノン一人だった。
「ああ?なんだやんのかチビ!」
「お前こそチビだろうが!」
すぐ隣では金髪頭のツンツンと尖った髪をした少年とミキが言い争っていた。
今にも武器を取り出しそうだ、その時。
「弱いものいじめはやめなさい!」
「ガッ!?」
真っ直ぐと拳が、相手の少年の頭に振り下ろされていた。
とてもいい鈍い音が響くと少年は頭を抑え蹲った。
「ッ〜!?.....いきなりなにすんだ、クソババ....」
振り向きざまにそう口にしかけて、止めた。
「殺すわよ」
だが、遅かったようで後ろの女から溢れんばかりの殺気が漂うと、血相を変えた。
「ひっ....な、なんでもないです」
「......そう、今度職員室に来なさい、話があるわ」
「い、いやだぁ!」
少年が膝から崩れ落ちる、それを見た後女は頭を下げた。
「ごめんなさいね、怪我はない?」
女の人は優しくミキに声をかけると、ミキはすぐに目を刃のように鋭くして睨みつけた。
「弱くない!弱いものいじめじゃない!」
「あ....ふふ、ごめんなさいね、わざとじゃないのよ、ただ意識してなくて」
「ふっ!じゃあ覚えとけ!俺達が最強なんだってな!」
その発言に場が静まり返る。
そして一斉に笑い声が場に響きわたった。
「何言ってんだあのチビ助!頭がおかしいんじゃねえのか!?」
「そもそもお前達なわけないだろ!」
「ああ、そうさ最強はこの俺だ!」
体格がゴブリンよりも上の大柄な男の姿、その背中にはとんでもなく巨大な大剣を背負っている。
周りには冒険者らしい格好の人達がたむろしていた。
「この人はB級冒険者、『体躯』のダンクさんだ!お前らみたいなひよっこが調子付いてんじゃねえぞ!!」
「ああ、そうだ!場違いなんだよ!」
「さっさっとこの場から消えろ!」
そんなコールがエミリー達の周りから発せられる。
だが当然こちらもやる気満々、武器に手をのばしかけて......
「やめなさい!!」
女性の一声に、皆の動きがピタリと止まった。
「勝負するのは構わないけど、殺されたりしたら困るのよ.....特にあなた達」
指を刺されたのはもっとも敵意が無さそうで、止める側だったカノンと冗談混じりだったエミリー。
その指摘に二人とも知らない風に顔をそらした。
「そもそもあんた誰だよ」
止められたことに不満げな少年は鬱陶しそうにその女を見る。
「私?私はねニス魔法学院の入学試験担当の先生よ、しかもSクラスのね」
「ってことはやっぱり!!....」
「うっしゃあ!!」
Sクラスという事に声を上げながら喜びあう人達の中、数人は当たり前のようにただ呆然とし、鼻を鳴らすものまで。
だが、Sランクという事がどういう事かも分かっていない、5人はただ突っ立っているのみだった。
「喜ぶのはまだ早いわ、今から試験があるわよ」
その言葉に喜んでいたものも息を飲む。
どんな試験になるか、皆の心中はそんな所だろう。
「それでね思ったのよ折角だし勝負させてあげようってね、しかも入学試験で」
「入学試験で、ですか!?」
「安心してちょうだい、勝った負けたで入学を拒否するなんて事はしないわよ、けどはっきりするでしょう?誰が一番強いのか、ってね」
その発言に実力を見せてやる、とミキを含めた過半数が不敵に笑っていたが、エミリー達は全く別のことが気がかりでしょうがなかった。
♯
「さあ!約束を守ってお兄ちゃん!!」
今俺は小さい子に言い寄られています、しかも魔法の障壁の中に逃げ出せないように監禁.....捕らえられています。
誰か助けてください。
「いや、あのな、俺はユウキじゃないって言ってるだろ!?」
「往生際が悪いぞ~」
「そうよそうよ~」
そんな俺に案外イケメンな父親と黒スーツたちがあおるような言葉を投げかけてくる。
「あんたらフィリアナの父親とボディーガードでしょうが!?怪しい男を近づけていいのかよ!?」
「娘の幸せが僕の幸せさ☆」
「旦那様と同じく」
父親はキラーんと光り輝く歯を見せ、黒スーツは当たり前のように嘆息していた。
そしてそのユウキが食い気味で言ったことに、フィリアナは目を光らせた。
「あれあれ?おかしいですね、私一度も名前の紹介も、父親だってことも教えていませんけど?」
「それは、その....この国では有名だろ!ワムルス家っていたら!一度くらいは見たこともあるさ!」
実際その通りワムルス家はニス=グリモアの四代貴族に数えられているほど有名だ。
「ええい!往生際が悪いですね!」
歯噛みしながらムムムとうなりながら、ユウキ?を睨みつけている。
(はぁ...なんでこんなことに.....)
こんな事になってしまったのは数十分前の俺がこいつの存在を......妹の存在を忘れ、油断しきっていたからなのだ。
この妹がどれほど危険で、俺に依存しているのかを。
今からに2〜30分前の事。
俺は城に行く12時頃まで時間を潰す為、適当に道具屋などを歩き回っていた。
「ふう〜、これだけあればしばらくは大丈夫そうだな......」
目一杯に詰め込まれた、材料を見て満足気に頷き、顔を上げると、目の前には工事の看板があり、奥には機械が並べられていた。
「すいません、ここは地盤が緩んでいるとの事が分かり、少し工事を行います、この先お通りの方は左の道から抜けて下さい!」
深く工事用の安全帽を目元まで隠した、老人?は右手で道を示した。
そこにはとても大掛かりな装置に見える、抜け道。
赤いランプが不気味に照らしている。
(これ.....なんかの機械じゃないのか?.....)
そう疑ってみるも、前の人達は何事も無いように通り抜けて行く。
(考え過ぎか......うん、なんともないな)
この時ユウキは気づかなかった、ユウキが通った時だけ外のランプが緑色に光ったことを。
ユウキは気づく様子もなく、機械からでて道を歩こうとしたその時、地面が発光、ユウキの体をまるっと包み込む魔法障壁が発生した。
「なっ!?.....魔法が撃てない!?クソやられた.......」
これはユウキの正体を隣国の王だと知った者が殺そうとしているのだ、すぐのそう理解した俺は拳で障壁を殴るがビクともしない。
焦りながらステータスを開き、下までスライド、真下にある『霊鬼』のボタンを押すも.......
全くの無反応。
(最悪だ.....これは...死んだか?)
もうだめだ、苦虫を噛み潰したように、顔を歪めると。
「ふふふ、ははは!!やっと捕まえたよ!ユウキ君!」
その聞き覚えのある声音に、心臓が跳ね上がり、嫌な思い出も、いい思い出も全てが呼び起こされた。
「あんた....まさか....」
驚きながら指を向けると、バッと帽子を脱ぎ捨てる老人、周りの工事の人達も服をバッと翻すと、そこには.....
「何してるんですか、ラマーさん!?」
「久しぶりだねぇ、ユウキ君!」
黒スーツの人達の前に立つ、最高位の貴族ワムルス家現当主は、ニヤリと口元を不敵に歪めた。
―という事があり、そのまま北側の一等領地、ど真中に建てられているワムルス邸まで拉致された。
「ねぇ!男に二言はないんでしょ!?約束通り結婚してよ!」
そうなのだ、それが問題なのだ、絶対にありえないと思って実は昔そんな約束をしてしまったような気がする。
そのことを話す前にフィリアナとの関係性から話さなくてはいけないだろう。
実はフィリアナは父の隠し子で第3女に当たる。
まあ、当然世間一般には公開されていないのだが、実を言うとフィリアナは強過ぎるために、隠された子供だ。
国ホープでは昔から平等と正義を掲げた国、人々は平等である、正義とは誰しもが心に抱いている。
そんな中魔力が常人の3〜40倍の子が生まれ平等などと言えるだろうか?いいや、個体差などでは表せない程かけ離れた力。
それだけなら隠せばいいが、それより問題だったのはフィリアナの体質だ、フィリアナは魔力が多すぎて、体から漏れ出た魔力が近くの魔導具を使用不可にしてしまうのだ。
それだけで王の娘関係なしに殺す理由にはなる。
最初は処刑も考えられていたそうだが母が、当時同盟国だったニス=グリモア、そこに家を構えていたワムルス家に頼み込み実の子として住ませたらしい。
その話を俺だけが母に教えてもらっていた。
『実はねユウキ、貴方には妹がいるのよ?その子はね、とても可哀想な理由で一緒に暮らせないの』
『そうなの?』
『ユウキは仲良くできる?』
『うん!』
そんな微笑ましい7歳の頃、母に連れられ初めてフィリアナと出会ったのだ。
『僕はユウキ!フィリアナのお兄ちゃんだ、よろしくな!』
『は、初めましてフィリアナです、よろしくお願いします、お、お兄ちゃん!』
そんな風に出会ってから何年もフィリアナの所に遊びに行った。
その時だ、その時に魔女に出会った。
「男にだって二言はあるんだよ!そもそもお前男だろうが!?」
そうなのだ、こいつは自分の事を男だと言ったのだ。
最初はそんな訳ない、こんな可愛い見た目で、と思ったのだが、
『そうだもん.....』
泣きそうな顔で言われて、そうなんだと信じてしまった。
痛い所を突かれたのか、フィリアナは少し後ずさる。
「ち、違うの!それは.....その.....」
「なんだよ....」
ジト目で睨むユウキにグッと意を決したように頬を染めながら言った。
「だって、お兄ちゃん男じゃないと一緒にお風呂入ってくれなかったもん!!」
その発言に一同の視線がユウキに集まり、恥ずかしさからか頬を染める。
あまりにくだらない理由にユウキはこめかみを抑えると、口からため息が漏れた。
「あ、あのなぁ.....」
「そんなに信じられないなら、分かった......ここで服を脱ぎます!」
いや信じられないなんて言ってないだろ!?フィリアナは少し恥ずかしそうにしながらも服を持ちあげ始める。
やばい、こいつ本気だ....
「ちょっと待て!それは待て!!まだユウキかどうかも分かってない男に見せていいのかよ!?」
まだ自分がユウキではないと無理な弁解をすると、フィリアナはムスッとほほを膨らませる。
「今の会話で本物だって分かるもん......パパ少し出てて」
「ほいほ〜い」
「ちょっ!?や、やめろぬぐなぁぁぁあ!?」
既に、魔法障壁に捕まっている時点で俺は無力なのだと、止める力は無いと改めて思い知った。
♯
フィリアナをどうにか抑え込み、魔法障壁を解除してもらったユウキは今ワムルス家のダイニングで甘味と紅茶をふるまわれていた。
そのダイニングテーブル、ユウキの正面に座るのはラマーさん、そして隣で俺にくっついているのがフィリアナだ。
これじゃあまるで俺がフィリアナを妻にもらいに来たみたいな、許可を取りに来たみたいな感じだ。
勘弁してほしい。
「まあ、積もる話も結婚の話も婚姻届をいつ出すのかなど、まあいろいろあるだろうが、まずはお互いの話をしないかい?」
「結婚の話はないですよ!?婚姻届も出しませんよ!?」
あまりに必死に言い訳をするユウキを見て苦笑いをすると
「軽いジョークさ、二割程ね」
「八割本気じゃないですか!?」
「まあまあ、それよりお兄ちゃん聞きたいこととかないの?」
「まあ、ありすぎて困るけど.....質問していいのか?」
「当然さ、まあ僕達もするけどね」
「そうか......じゃあまずどうして俺がユウキだと分かった?」
その質問を待っていたとばかりに、嬉しそうに指を鳴らした。
すると、ダイニングの扉が開き、黒スーツの人達がボードを持ってきた。
そこには大量の魔法計算式の数々、その後ろには先ほど通ったトンネルのような機械。
「ふっふっふ、これは君が死んでしまってから何年もかけて作り上げたその名もユウキ識別器!この中を通った者がユウキがどうかを判断することができる!!」
どれほど時間をかけたことだろう、そこまでして作り上げた機械、そこまでして俺を見つけようという執念。
ユウキは口を開けて言った。
「バカなんですか!?そこまでして見つける必要ありませんよ!?そもそも名前が酷い!」
「仕方ないじゃないか、娘の結婚のためだ」
「だから結婚しませんよ!?」
先ほどから必死に結婚しないというユウキに、フィリアナは少し涙目で見つめる。
「約束....覚えてないんですか?」
「約束........?」
「生まれ変わったら結婚してくれるって!言ってくれたじゃないですか!?」
「.......あ...」
そうだった......血が繋がってるのを理由に結婚を断ったんだ。
それで確か、絶対にあり得ないと思って生まれ変わってもし俺を見つけられたら結婚してやるよ、って言ったんだ。
(最悪だ!何言ってくれてんだ昔の俺!?)
完全に自業自得だが、ユウキは認められなかった。
「まあ、その話を置いておこうよ、じゃあ今度はこちらから質問してもいいかな?ユウキ君」
「どうぞ.....答えられるかどうか分かりませんが....」
そんな風に冗談めかして言いながら頬をかくと、穏やかな笑みを浮かべながらラマーは言った。
「今の君の名前は?」
その発言に空気が明らかに変わったのを感じる。
ラマーから先程のお調子者な雰囲気は感じられない。
「..........」
「答えられないかい?じゃあ僕が当てよう......君の名前はキリア=オーガスト違うかい?」
「え!?それって近々戦争をする隣国の王の名前......まさか....」
フィリアナの目線がユウキの目を見る。
その眼は既に私が知っていた優しい頃のユウキの目では無かった。
先程の会話から、昔とは変わっていない、そう思ってホッとしていたけど.........
(やっぱり....お兄ちゃん......あなたは.....)
「......ああ、その通りだ」
眉一つ動かさない肯定、つまり敵対している事がバレても問題が無いということ。
「すまないがもう一つだけいいかな?」
「いいですよ」
「今から僕は失礼な事を言うが、気を悪くしないでくれ......どんな手を使ったのか知らないが、どうして君は生き返ったんだい?生き返ろうだなんて思ったんだい?」
「パパそんな言い方!......」
「僕は知っているよ、君がどれだけ辛い目にあったのか、フィリアナも君を守りたかったと、君が死んでから一時期閉じこもってしまったしねぇ.......だからこそ、君は何のために生き返ったんだい?こうやって皆に会うことが目的なのかい?」
「........」
何を言われようとも何も返そうとしないユウキを見てラマーは何故か軽くうなずくと、一枚の記事を取り出した。
「....この記事見た事があるかな?」
広げて見せるのは崩壊した城跡、そしてその瓦礫の山の上に立っているのは黒い黒い化け物の姿。
「愛の国がたった少数によって崩壊させられたらしい、まだ犯人は分かって無いが、一人はこんな黒い化け物だそうだ.......国の見解はネームドの魔物による襲撃という線が濃厚だが、僕は君がこの事件に関与していると思っている」
へぇ、気づいたやつがいたんだ。
どうすれば俺たちのが犯人だという発想に至るのかぜひ聞いてみたい。
「どうしてそう思いますか?」
「まず、僕が知った事件はドルトン=ミラー灰殺事件、この記事を見たとき娘と魔女さんは大喜びしていたよ、なにせ君の仇だ、そして次に知ったのが獣人の国の姫アセロラ殺害事件、これもまた喜んでいた、そして最後が愛の国壊滅......あまりにおかしいと思はないかい?あまりにも出来すぎている」
全く持ってその通りだ、この事件の死人の共通点はユウキを苦しめたそれ以外に全くと言っていい程関係性がない。
俺のことをよく知っている人間ならすぐに思いつく発想だ。
「さあ、もう一度だけ聞くよ?何のために生き返ったんだい?」
疑り深く聞くラマー、隣では固まってしまったユウキを心配そうに見るフィリアナの姿。
固まっているわけじゃない、その質問に答えられないわけじゃない、ただそこまで知っていて答えが分からないわけないだろう?お前はわざわざ俺の口からそんな当たり前の事を言わせるのか?.....
そんな目でラマーを見てもただ無表情で俺の回答を待つだけ。
「はははっ!」
つい笑い声が口から洩れてしまった。
ラマーの訝しむような視線を受けながら言った。
「復讐のため以外何がある?」
その瞳は黒く黒く、普段とは違う色付きに染まっていた。
見たこともない凶悪な顔にフィリアナは少し恐怖を抱き、きづいた。
もう私の知っている優しい兄はいなくなってしまったのだと。




