第16.5話ドルトンの死追求
今回は番外編です。
ずっと投稿しようとしていたのにすっかり忘れてました
これはユウキが国を去った少し後の話。
ホープ、この世界に存在している国の中では権力、武力、財力、全てにおいてトップといっても過言ではないこの国。
そしてその国の武術総軍隊の3番隊隊長タツルはイスに深く腰を下ろすと報告書に目を通していた。
『報告:昨晩領主ドルトン様の家にて発見された炭のような死体は、専門家によるとドルトン様ご自身である可能性が高いとのことです。死の原因ですが高火力による魔法、もしくは身動きの取れない状態でじっくりと火葬されたとのことです。犯人については全く見当がついておりません。報告は以上です』
「全くまた面倒なことが起こりましたね」
やれやれとばかりに小さく嘆息して、コーヒーをすする。
ほのかに甘い香りが口に広がった。
「まあ問題ないでしょう、あのお二方が現場に赴いてくれたようですし」
とても安心したような声でそう、息を吐いた。
国の少しはずれにあるドルトン宅、そこには大量の検問官が押しかけ隅々まで調べていた、そして、関係者以外立ち入り禁止の文字。
そこに、無断で入って行く二人の男女。
その二人を見た一人の検問官が止めに入った。
「駄目だよ、勝手に入っちゃ」
一人の検問間が仕事を全うするため、少年に優しく諭す。
すると、少年が疑問を顔で表していた。
「へ?いやいや、俺達タツルに頼まれて来たんだけど?」
「タツルさんに?あの、お名前を.......」
教えてください、そういう前に声を遮られた。
「何を揉めている?」
奥から出てきたのはとても高そうなマントを羽織った渋い顔をしたおじさん。
だが、顔には修羅場を何度も乗り越えてきたあかしである古傷がついていた。
「は!巡査この方達が勝手に入ろうと.....」
「馬鹿者!!」
巡査の大声に検問官の体がビクッと震える。
「この方達は我々を応援に来てくださった勇者様御一行だぞ!!」
勇者様と聞いて体が震える。
勇者といえば、この世界における絶対的な権力者、特殊なスキルを持ち、国から多額な金を貰うことなども、そして勇者は救世主としてあがめられている下手に関われば、勇者の信者たちに殺される可能性だってある。
「ゆ、勇者様!?わ、私がとんだご無礼を....どうかお許しください!」
検問官は深く深く頭を下げた。
「私からも頼む、こいつは見張りの仕事を全うしようとしただけなのだ」
二人の検問官に頭を下げられ、勇者こと海斗は頭をかいた。
「いや、別にいいよ、無断で押し入ろうとした俺たちも悪い」
「あ...ありがとうございます!」
さらにさらにこうべを深く垂れさせた。
「よかったな見張りよ、では勇者様現場へお連れいたしますので、私の後ろについて来てください」
「分かった、ありがとう」
海斗は軽く答えて、巡査の後ろについて歩いて行く。
「似合わない事しますね」
隣にいるマーリンに小声で話しかけられた。
似合わないこと、さっきの検問官の事だろう。
「いいだろ別に、たまには勇者様らしい事がしたかったのさ、それに、死人が出た現場で新しく死人を出すわけにいかないだろ?」
「それもそうですね、ただ調査の邪魔になるだけでしょうし、殺さなくて正解でした」
「だろ?」
「何を話していらっしゃるのですか勇者様?」
内容までは分からなかったようだが声が聞こえたらしい。
「いや別に」
「そうですか?あ、ここです、ここが現場です」
そこはドルトンの家の隣にある、古びた古屋が建っていた場所だ。
だが今は黒色の炭だけが残っている。
「ふむ?」
マーリンが気になったようで地面を触る。
「特に地面に荒れた様子はないですね、という事は高火力による『爆炎魔法』などで殺されたわけでわなさそうです、だとしてもこんなに持続させられる炎系魔法なんてあったかしら?」
「やはり高火力魔法ではありませんでしたか」
「犯人の特定は出来てるのか?」
「いえ、まだ特定には程遠いかと、今有力な線は野党、もしくは親戚ではないかとのことです」
「どうしてそうだと?」
「家の中のドルトン様の部屋が何者かに漁られておりました」
(って事はやはり金目的なのか?だがそれにしては不自然な事が多すぎる)
一つ目はドルトンの死に方。
金目的ならばこのような酷い殺しかたしないだろう、それにわざわざ火葬して目立つような真似をする馬鹿なはずもあるまい。
二つ目は荒らしたと悟らせた事だ。
普通荒らしても、荒らしていないと思わせるため片付ける物だろう。
三つ目はドルトンの抵抗した痕跡が見られなかった事だ。
ここに来る前に死体を見て来たが抵抗したそぶりが全くない状態で殺されていた、抵抗できない状態にあったのか、はたまたあえて抵抗しなかったのか。
「誰か目撃者がいれば.......」
そう、目撃者がいれば全てが解決するのだ。
「目撃者?.....あっ!そうだ、キリアはどこにいるのよ!!」
マーリンが感極まって叫んだ。
そこで海斗も思い出した、そうだあの子供はどこに消えたんだ?
「キリア?さん、ですか?その方は?」
「ドルトンの息子だよ」
「ドルトン様の息子様ですか?私は見ていませんね、少し掛け合って見ます」
軽く一礼をして、検問官は後ろに下がっていく。
「何か分かったか?」
「さあ?これだけじゃ、なんとも言えないわ」
「そうか.....」
すると、慌てた様子の検問官が話しを割って入って来た。
「すいません勇者様、確認を取って見たのですが、キリアという人物を誰も見たことも聞いたこともないそうです」
その言葉に歓喜で顔を歪める。
「と言う事は、だ!キリアは野党に連れ去られたと考えるとすると、城下町でキリアを目撃した情報を募れば.............」
「やがて、犯人にたどり着くと!ですがそれには問題が.......」
あります、誰もキリアさんの顔を見たことが無い、そう言う前に考えを先読みされた。
「マーリン!」
「分かったわ」
その二つ返事でマーリンは紙とペンを取り出し、さらさらさらとキリアの似顔絵を紙に書き、検問官に手渡した。
「この方がキリアさんですか」
「相変わらず絵が上手いな」
「女の隠された秘技ってやつよ」
「隠されてないけどな........」
そんなやりとりをしている間、検問官はキリアの似顔絵を事細かく見渡し。
「この絵少しお借りいたします、この絵を複製して城下町で目撃者を募って見ます」
「あ、待ってくれ、目撃者を見つけたらまず俺達に教えてくれ無いか?」
検問官の肩をつかみ引き留めそんなことを言った。
「別にいいですが、何故ですか?勇者様がたにやらせるような仕事ではありませんよ?」
「知り合いとしてはほっとけないんだ、頼むよ」
「そう言うことでしたら、真っ先に報告させていただきましょう」
そう言ってそそくさと立ち去った。
「なんでそんなめんどくさい事を?」
「なんでってそりゃあ、本来の目的の為だろ?」
「?」
「キリアが稼いだお金の何割かをもらえる予定だったがドルトンが死んだんだ全部俺達が貰えるってわけだろ?この手を逃す馬鹿はいねぇ」
その言葉にハッとしたようにマーリンは目を細めた。
「そうでした、忘れてましたよ、これは早く見つけたいですね、私達のキリアを」
そう言って密かに口角を釣り上げた。




