第12話カノンの壊れ方
カノンは、前回の話に出て来た女の子の名前です。
人間の国と獣人の国の国境線に存在している村、名前はよく覚えていない。
だってこんな村、記憶にだって残したくないから。
私は今 学校のグラウンドの隅に追いやられ、6人の人間の子供たちが、私を取り囲んでいた。
そのうちの1人の男の子がバケツを持ち、バケツの中に入っている泥水を私にぶちまける。
それを見て人間の子供達は、何が面白いのかキャッキャっと笑い。
「きたねー」
「くっさぁ」
「俺らに近づくなよ、くそカノン」
「頭が良いからって調子乗んなよ」
そう言って、私の髪の毛をつかんで引っ張ったり、蹴っったり、殴ったり。
散々そんなことをすると疲れたのか家に戻っていった。
そんな子供達を後ろから涙目で睨みつけて、立ち上がる、服は泥でぐしゃぐしゃしていて気持ちが悪い、私は近くの水道で上の服だけを軽く洗うと家に帰った。
家に帰ると獣人の父親が濡れている服を見て心配そうに私に駆け寄ってくる。
「大丈夫かカノン?」
心配してくれる父親に精一杯の笑顔で
「父さん大丈夫だよ、この服は少し濡らしちゃっただけだから」
そう言って自分の部屋に逃げるように入っていった。
私は、自分の部屋に入りベッドに倒れこむ。
そして、枕に顔を押し付けながら泣き喚いた。
(どうして私が、こんな目に合わなきゃいけないの?ただ、頭が良いのと、獣人だからって、
たったそれだけの理由で..........もうこんな村から出ていきたい)
しばらく、泣いてから、これからも我慢をする為心の中で言葉を紡ぐ。
(お父さんは、人間のお母さんの事が好きなんだ。お父さんとお母さんが一緒に入るために私が我儘を言っちゃいけない。人間と獣人が一緒に住める村は、ここしかないんだ)
そう、決意を固め涙を拭った。
私が決意を固め直していると
「ご飯ができたわよ」
下からお母さんの声がした。
「はーい」
私は楽しそうな嬉しそうな偽りの仮面を身に着けると、笑顔で台所に向かった。
台所の机には、質素な食事が置いてある。
それを3人喋らず黙々と食べる、ご飯中は喋らないこれは獣人のルールだ。
人間のお母さんもそれは合わせてくれていた。
ご飯を食べ終わり、早く仮面を外したいので部屋に戻ろうとすると父親が
「学校は、たのしいか?」
「はい、楽しいです」
父親を心配させないため満面の笑みでそう答えた。
「そうか......」
少し寂しそうな声を出して父親は、部屋に行ってしまった。
私は風呂に入り、髪の毛を念入りに洗う、今日かけられた泥が髪の毛に絡みついてとても気持ちが悪いからだ。風呂から出ると髪の毛を乾かして、寝る準備を万端にして自分の部屋に向かう。
部屋に入りベッドに寝転がって、仮面を外すと、普段通りの私はまぶたを閉じた。
朝になりベッドから起き上がり、朝ごはんを食べに部屋から出てる。
朝ごはんを食べ終わり、行きたくない学校に向かう、いつも通り。
学校までの道がとても嫌で仕方がないそれでも親に心配掛けないために学校に向かう。
学校に着き、自分の席に座る。
そして授業が始まるまでひたすら待っていると、
「おはようカノンちゃん」
そう言って、嫌われ者の私に唯一話掛けてくれるのは、銀髪で狐耳の獣人の女の子ユウカちゃんだった。
この子だけは私に声をかけてくれる、他の獣人の子供たちは自分もいじめられると思って声をかけてこないのだ。
「おはようユウカちゃん」
私も挨拶をかえす。
そしてたわいもない話を2人でする。
私がなんとか、学校に来れるのは、ユウカちゃんのおかげだろう。
授業が始まった、1時間目は、算数で基本的なお金の数え方と足し算、引き算を習う。
2時間目は体育で武器の使い方や魔法の使い方を習う
3時間目は歴史で人間の歴史と獣人の歴史を学ぶ
学校最後の4時間目は今までのテストが帰ってくる。私は、全てのテストが100点満点だった。
それを見た人間の子供達が後ろで何かひそひそとしゃべっているが、
そんな事は気にせず私は帰る仕度をして、家に早足で帰って行った。
家までの帰り道の途中、6人の人間の子供達が道を塞いで立っている。
もちろん、いつも同じみのバケツも準備されていた。
どうにか逃げられないかと周りを見渡そうとすると
「おら!」
その声と同時に背中に衝撃を感じて地面に倒れこんでしまう。
誰が蹴ってきたのか、確認すると。獣人の男の子2人だった。
(え.......なんで?私が獣人だから嫌われているんじゃないの?)
その事で放心してしまい身体が固まってしまった。
その隙に人間の子供達は、私からバッグを奪い、テストの答案を私の目の前で全て破りさき、皆なで笑う、そして最後にバケツの泥水を私にぶっ掛けて笑いながら帰っていった。
私は、ショックで立ち上がれなかった。テストが破られるのは、いつもの事だから気にしていなかった、それよりも獣人の子供にも嫌われていた事がショックで仕方なかった。
(ああ、もう無理だ)
心が折れそうになる、結局私は一人なんだ、どうせなら.....もう、この村から出てしまおうか。
「大丈夫、カノンちゃん!」
だが、その時近くを通りかかったユウカちゃんが私の濡れた服をハンカチで拭いてくれる。
そんなユウカちゃんを見て、少しだけ心が立ち直った。
(そうだ!私には、まだユウカちゃんがいる)
そしてユウカちゃんは、私の唯一の心の支えになった。
必死になって服を拭いてくれるユウカちゃんを見て
「ありがとう、もう大丈夫だよ」
「え...でも、服まだ濡れてるよ?」
「大丈夫もう立ち直れたから」
そう言って地面から起き上がると、汚れた服も気にせず家に帰って行った。
こんな毎日が2年間続いた。
次の投稿は、できれば明日します。




