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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第一章 おっぱい鳴動編
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第2話 倉庫部屋と副隊長

「なんでここ?」


 髪の色を鏡を見ずに確認できるように少し髪型を弄りながら、シビアナに追いついた。

 その後ろをとことこと付いて行ったその先は、城の一階の奥にある倉庫部屋がずらっと並んでいるところだった。


 こんなところで何をするというんだろうか。

 探し物でもあるのだろうか。でもそんなことでは私を呼んだりしないだろう。

 他の侍従官達にやってもらえばいいし。

 父様の許可をとって私が必要となるとしたら、宝物庫ぐらいだ。

 けど、宝物庫は一階にはない。

 疑問に思いながらもシビアナの後ろを付いていく。


「あれ?」


 廊下の奥の方に見えた倉庫部屋の前に、見たことのある若い騎士がひとり直立不動で立っていた。

 てゆうかシビアナの夫のイージャンだ。

 妻帯者なのに侍従官達に人気がある。強くて格好良くて頼れるんだと。

 うーん。確かに武芸の才はあるし、キリっとして端正な顔立ちなんだけど、好みではないというか。

 彼はトゥアール王国最強の近衛騎士隊の副隊長だ。騎士では一番強いだろう。

 まだ20代で経験不足ということで副隊長だそうだ。


 まあ、シビアナの夫であることはすごいとは思う。

 夫婦仲もいいんだよな。

 

 結婚の申し出はシビアナからだったらしい。

 シビアナがどういった基準で結婚しようと思ったかは知らないが。

 どういう経緯で結婚までしたのか詳しく聞いてみたいものだ。私の結婚の参考までに。


 しかしなんで副隊長に、ここで新人衛兵みたいな真似させているんだ?

 

 副隊長がわざわざ出張ってきている。


 結構大事なのかな。


「イージャン、ここで何してるんだ?」


 私達が来たことに気付いたイージャンが、敬礼をしてくれたので、直接聞いてみた。


「ああ殿下、詳細の程は聞いていないのです。ただシビアナがここで立っていろと。陛下からは御許可をいただいているみたいです。正式に通達がありましたし」


 シビアナの方に顔を二人で向けると、彼女はにっこりと笑みを湛えたままであった。


 騎士隊の副隊長にも事情説明がなしということは、政治の類でしかも結構な機密に関わることみたいだな。

 だからあえて、こんな場所を選んだのかもしれない。

 父様は事情を知っているらしいが。


 でもこれ私の執務室でもいいんじゃないか?

 内緒話をするのにも問題はないはずだ。ここにくるだけの理由はなんだ?

 

 ――執務室には呼べない人間でも来るのかもしれないな。


 やっぱり大事っぽいな。

 やれやれ、何があったんだか。


「そっか」


 そう答えて……あれ?イージャンの様子が変だな。なんで今一瞬ビクってしたんだ?


「殿下、しばらくこの部屋でお待ち下さい。」


 シビアナが倉庫部屋の扉を開けながら私に入室を促してきた。


「分かった」


 気にはなったが、とりあえず中に入った。 



 部屋の中は薄暗くて、小さな換気用の鉄格子から光が差し込んでいた。

 倉庫部屋なのに特に荷物もなく、がらんとした感じだ。

 ただ部屋の真ん中に単純なつくりの作業机とあと木の椅子がその机を挟んで手前と奥とで向かい合って置いてある。机には一本の小さな蝋燭と燭台以外何もない。

 ただ、机の脇に黒い鞄が置いてある。


 一応聞いておくか。


「シビアナ、ここで一体何をするんだ?」 

「お話は後程、とりあえずこちらにお座りください」


 駄目か。話してくれそうにないな。


「ああ」


 シビアナが手前の椅子を勧め、


「すぐに戻って参りますので、そのままお待ちください。」


 そう言ってそのまま部屋から出ていき、イージャンの前を通り過ぎる時、目配せをしてそれにイージャンも頷いていた。


 夫婦って感じがしてた気がして少し羨ましくなってしまった。


 ――よし、このままいるのもあれだ。すぐに戻ってくるというし、せっかくだからその間イージャンと話をすることにしよう。さっきの反応も気になるし。



「しかし、よくあんなのと夫婦やってるな」

「やっぱあれか第一印象はおっぱいか?」

「あれ揉んだらどうなるんだ?」

「い、いやその殿下」


 わははは。愉快愉快。真面目なやつをからかうのは面白いのう。しどろもどろになっておるわい。

 さっきのシビアナにやられた仕返しとばかりに、こいつが答えにくい質問をしてみる。

 イージャンは普段は寡黙で余計なことは話さないことは知っている。だからこの手の話は同僚にしていないだろうから、対応に困るはずだ。その証拠にほらお顔が真っ赤っ赤である。


「私の結婚の参考までに聞かせてくれると助かるな」

「は、はあ」

「あいつのどこに惚れたんだ?」

「いっ?!」


 ぐふふふ。さらに赤くなりおったわ。

 こちらの優位性を保ちながら、ちくちくとちょっかいをだす。相手は王女様だからな。強くは言ってこれまい。くくく。

 おっといかんいかん。髪の色が黄土色だ。恍惚の感情がばれてしまったかな?

 まあ今さら構わないか。


 今日はもう駄目だな。感情にすぐに反応してるし。銀髪を維持するのは無理だろう。

 シビアナもこんな状態で、私が不利になりそうな仕事をさせることはない。

 あいつの仕事に対する姿勢は国益になることを最優先で徹底しているしな。

 今回は髪の色が変わるということが分かっていても、それでも問題ないみたいだが。


 さて、気も晴れたし夫婦に関しての答えづらい質問はこのあたりにしておこう。ありがとな、イージャン。


「テレルは元気か?」


 話が自分の娘のことに変わって、あからさまにほっとした表情になったな。すまん、やり過ぎた。


「はい、毎日元気に走り回っております」


 うんうん、目に浮かぶようだ。テレルはこの夫婦の一人娘だ。歳は今年で6つになる。

 うん、元気で何よりだ。

 あの子は、両親に連れられて去年初めて王宮に来て、その時私と遊んでくれたのだ。

 あの時以来、私に懐いてくれていて癒しとなってくれている。

 今でも私が必死に頼んでシビアナが連れて来てくれるんだが、来る日が決まると楽しみで仕方がない。

 堪らないな、あの笑顔。ああ、思い出してしまった。


 


 これがシビアナに横暴な振る舞いができない理由だ。

 テレルはシビアナも大好きなのだ。

 もし、シビアナに対して酷い仕打ちをして、それがテレルに知れたら間違いなく嫌われる。会えなくなる。

 そんなのは、絶対に嫌だ。



 まあ、シビアナは基本優秀だ。テレルの事を入れなくても、私があいつに酷いことをすることは今後ともないだろうがな。

 

「また連れてきてくれ。そろそろテレルが恋しくなってしまう発作が起きそうだ」

「はっ。仰せのままに」


 こうしてイージャンとシビアナを比べてみると思うんだが、やっぱりシビアナは自由過ぎだろ。

 王族に対しての対応はだいたいこんなもんだ。

 思えば特に今日はおかしかった。いつもの3割増しはあったはずだ。


「そう言えばなんでさっきビクってなっていたんだ?」

「え!?」


 おお、挙動不審っぷりがすごいな。またビクってなったし。


「いや、さっきシビアナの顔を見たときビクって…」

「お待たせしました、殿下」


 シビアナが帰ってきてしまった。





 シビアナが帰ってきてしまったので、それ以上聞くこともできず、また部屋に入った。

 うーむ。からかう時間をかけ過ぎてしっまた。最初に聞いておくべきだったな。

 そう思いつつ私が手前の椅子に腰を掛けて、シビアナが奥の椅子に腰かけた。そして、蝋燭に火をつけた。

 机の辺りがぼうっと明るくなった。シビアナの顔が蝋燭の火に照らされてちょっと怖い。


 扉の方からガチャっと音がした。私は扉の方に目をやった。

 鍵を掛けたらしい。


 あれ?なんだこの状況。

 薄暗い部屋にシビアナと二人。

 机で向き合っている。

 そして鍵を掛けられた。

 これって。

 取り調べに似てる気がするんだが。

 シビアナの方に目を戻すと、彼女は机の脇に置いた鞄から両手に収まる程度の箱を取り出したていた。

  


 その箱を見た瞬間、汗がどっとでてきた。


「この箱に見覚えがありますよね」


 底冷えするような声で静かに問いかけられた。


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