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リリシーナ王女殿下おっぱい爆発事件  作者: 粟生木 志伸
第一章 おっぱい鳴動編
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第3話 侍従官の手のひらの上

「いや、知らないな。初めて見たぞ」


 しれっと嘘をついた。

 だくだくと汗をかいてはいたが、この薄暗い部屋で蝋燭の火ぐらいの明るさでは、分からないだろう。

 でも胸の鼓動がすごいことになってる。ばっくん、ばっくんいってる。


 何でシビアナがあの箱を持っているんだ。きちんと元に戻したはずだぞ。

 ていうかどうしよう。どうやってこの場を切り抜けよう。

 このままだと確実にばれる気がする。勝てる気がしない。


 シビアナが燭台を滑らせて、こちらに近づけてきた。


「殿下、髪の毛が青緑になってますね」


 あ!


「動揺でしたか。その色は」


 シビアナが肘を机の上に置き、指を組んで口に当てる。

 しまった。そうだった。今は簡単に髪の色が変化するんだっだ。

 いきなり、痛い一撃をもらってしまった。


「一体何に動揺されてるんでしょうか?」


 シビアナが淡々と問い詰めてくる。


 いや、諦めるのはまだ早い。私は諦めない。次は私の攻撃だ!


「何言ってるんだ? 青緑じゃないだろう、これ。蝋燭の火に照らされてるから、そちらからだとそう見えるんじゃないか?」


 私は髪の毛を持ち、目線をそちらに移しながらそう口にした。

 そう蝋燭の火は薄い黄色が光ってるように見えるのだ。

 シビアナには、それに私の髪の色が混ざって見えている筈だ。

 蝋燭の火をこれ以上近づけようとしたら、危ないとか無礼だとでも言えばいい。


 髪の色の微妙な違いは、日の光であればシビアナも難なく判断できると思うけど、今のこの状態では、そうはいかない筈だ。

 つまりこの部屋にいる限り、髪の色を利用して言質を取るというのは難しいとみた!

 時間を稼げ。とにかく動揺の色を変えるんだ。青緑に近い色で一番いいのは何だ!?


 あ、でも今の考えを一気に無効化する致命的な答え速攻で見つけちゃった。



 シビアナの攻撃。


「……蝋燭の火。そうですか」


 怖い、怖いよ。何その声。どうやってそんな声出してるんだよ。


「……」


 何だよその沈黙は。

 ていうか瞬きをしてくれ。どうしてさっきからずっと目を見開いてんだよ。じっと私を見つめるな。

 顔も、もう少し上げておくれ。頼むから。

 蝋燭の火のおかげで顔に影ができて怖さが増しているんだよ。お前美人だからさらに怖いわ。


「……」


 何を考えてる。気付くなよ。


「……」


 生きた心地がしないんですけど。さっきから超逃げたいんですけど。

 ああでもこの部屋鍵かけてた。しかもここの倉庫部屋外からしか鍵開けられないんじゃなかったけ。

 防犯上の理由で。

 まあ、私だったらここの壁ぶっ壊せるから関係ないけど。

 イージャンとシビアナが邪魔しようとしても二人じゃ私の相手にならないし、確実に逃げられる。

 でも今それやったら、この箱のことを知ってるから逃げ出したことになるからできないね。

 父様にもばれるし、後で捕まって尋問再開するだけだよ。もう逃げ道ないよ。残念だよ。


 いや、そんなこと考えてる場合ではない。

 ああ、どうしてこういう時に限って思考が変な方向に行くんだろう。

 急げ。いや落ち着け。想像しろ。青緑に近い色ですぐに出る感情は何だ?



 ふいにシビアナが後ろを向いた。駄目だやばい。気付いた。

 シビアナの攻撃はまだまだ続く。


「殿下、申し訳ありませんが、後ろの鉄格子から漏れる光の中に入って頂けませんか?」


 終了。日の光はすぐ後ろにありました。さっきから分かってました。

 これで、髪の色の判断は完全にできてしまいます。


「……ん?何でだ?」


 それでもと、時間を稼ぐために、もがく。あがく。


「いえ、殿下の髪の色を正確に確認させていただきたいのです。」


 ですよね。


「分かったよ。まったく」


 そう言って、ゆっくりと椅子を引き立ち上がる。

 不自然にならない程度にゆっくりとシビアナの後ろまで歩いていく。


 シビアナはさっきとは違い笑顔になっていた。どつきたいよその笑顔。


「ありがとうございます」

「ああ」


 光が差し込んでいるあたりで、髪に日の光が当たるのを確認して止まった。

 そして、シビアナの方に体を向きなおした。




 髪の色は悲嘆を表す深い青色に変わっていた。

 


 会心の一撃!! よしっ勝った!私の勝利だ。ひゃっほう!

 おっといかん。あまり興奮すると、髪の色が変わってしまう。


 テレルにこの嘘がばれたら一生会えなくなるって考えたら、すぐに変わった。

 ありがとう、テレル。お前のお蔭だ。

 

 今度来た時に沢山ぎゅってしてやるからな!

 

 とりあえず、山場を乗り越えることができたので心の中で安堵した。

 いける。これで髪の色に関しては、判断しづらくなったはずだ。

 疑念が生じたはずだ。動揺の色と悲嘆の色を見間違えたのかもしれないと。

 

 あとは私が知らぬ存ぜぬを貫き通せば、この件は逃げ切れるかもしれない。

 頑張るぞ。どんとこい。

 よし、じゃあ席に戻ろうか。





「そこに立たれる前に色が青に変わりましたね」


 ばれてた。ずっとこっち見てたもんな。

 青緑と青でも変わったら分かるんだな。流石はシビアナだよ。


「まあ、この箱を見た瞬間髪の色変わってましたし、何か知っているのは明白でした。」

「は?」


 私の全ての努力を全否定する発言がきた。今までのやり取りはなんだったのか。

 ああそうだ、思い出した。動揺してきれいさっぱり忘れていた。

 確かにイージャンと話して黄土色になっていたよ。それが箱を見た瞬間、青だろうが青緑だろうが黄色系以外の色に変われば誰だって違和感を覚えるわ。


「それを早く言え!あれだけ考えて頑張ったのに、私が一人で空回りか!」

 

 悔しい。なんなのこいつ。

 今日は私を随分と翻弄してくれるな。私が動揺した姿は見ていて楽しかったかね。

 そういう気分なのかね。そうか、そうか。


「嘘なんてつくから」


 痛恨の一撃。

 どっと疲れた。もういい私が悪かった。降参です。嘘をついて申し訳ございませんでした。

 でも、悔しいから口に出して謝らないからな。



「さて」


 なんだよ。


「何があったか洗いざらい吐いて頂きましょうか、殿下?」 


 彼女は、笑みを浮かべた。

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