第14話 口コミ
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料理を作っていると、警報が鳴り始めた。
侵入者の映像を表示すると、以前来た五人の冒険者たちがそこにいた。
実は、あれ以来一人も別のお客が来ていない。
この男のダンジョンは、街から十分ほどで、上級ランクのダンジョンに向かう道にある。
中級や下級ランクのダンジョンへは別の道を通るため、あまり人が通らないのである。
「いらっしゃいませ」
「あいかわらず、客いないね」
「お久しぶりですね。席はご自由にどうぞ」
余計な一言を華麗に無視した男は、冒険者たちを席に促した。
「メニュー表はあちらに記載してあります」
そういうと、壁を見るように手で促した。
このメニュー表は、この五日間で用意したものである。
前回、冒険者たちが帰った後に、メニュー表がないことに気が付いて、急いで用意したのである。
メニューは大衆食堂に合わせた価格で統一した。
ただ、あれ以来お客が来ていないので、急いで作る必要は全くなかったのだが。
冒険者たちはメニューを眺めて発した言葉は、
「「「「料理名が知らないものばっかりだ (じぇねぇか)(っす)(だわ)」」」」
そうでしょうね、と心の中で呟き、助け船を出す。
「どのような食べ物をご所望か、言っていただければ、おすすめの料理を出しますよ」
「「「「お任せで」」」」
「(こくこく)」
男が適当に選択して出した料理に、冒険者たちはまた舌鼓を打った。
帰り際に、冒険者たちの一人がサンドイッチを持ち帰りたいと申し出た。
嫁へのお土産にするらしい。
サンドイッチがお土産でいいのか、と疑問に思ったが、口に出すことはなかった。
* * *
街に着いたパーティーは、西の門から入って解散した。
そして、ガンドロは一人冒険者ギルドに向かった。
ギルドに寄ると、久しぶりに友人、ログリッドと会った。
「久しぶりだな、ログ。いつ戻ってきたんだ?」
「よう、ガン。帰ってきたのは昨日だな。お前はダンジョンに行っていたのか?」
「ああ。お前にいい情報をやろうか?」
「なんだ?」
「あまり言いふらすなよ。《白薔薇のダンジョン》や《黒百合のダンジョン》に行くときに丘があるだろ」
「ああ」
「あの丘に行ったら、新しくダンジョンができていたんだ」
「何!?」
「ただ、そのダンジョンは料理屋なんだ」
「…… は?」
「しかも、出てくる料理が一級品なんだよ」
「…… 意味が分からん」
「一回行ってみればわかるよ」
その後、家に帰って、嫁にサンドイッチを渡した。
「ダンジョンに行く途中にある料理屋で買ってきたんだ」
ここで、ガンドロは一つミスを犯した。
ログリッドに話した時と異なり、口止めをするのを忘れたのだ。
女性に口止めを忘れるとどうなるか。
いつの時代もどこの世界も同じである。
* * *
あれから数日、少しずつお客が来るようになった。
冒険者たちの中で、この店が噂になりつつあった。
そのため、わざわざ遠回りをして、店による冒険者が出てきたのだ。
これでDPの収入を安定的に確保できることに、男は一安心した。
しかし、さらに数日経過すると、様子が一変した。
冒険者だけでなく、一般市民らしき人も来るようになった。
あらかじめ料理ができていなかったら、一人で処理できる量を超えていただろう。
何故こんなにお客が来るようになったのか男は疑問に思っていた。
しかし、近くの町では、この店は有名になりつつある。
何処からともなく流れ始めた噂を冒険者が耳にして、店に行った冒険者が仲間に話をして、多くの市民に伝わる。
口コミの効果が発揮されていたのだ。
実は、この噂はガンドロの嫁から始まったものだった。
* * *
「お姉様、あのダンジョンが面白いことをしているわ」
「そうねぇ。でも、あんなに有名になっていいのかしら」
「ふふっ、この後どうなるのか楽しみだわ」
20151005 メニューの価格について記載を追記
(追加) メニューは大衆食堂に合わせた価格で統一した。
20151005 この後の話と矛盾があるとの指摘により修正
(旧)
最初は、井戸端会議で話題になった。
そこから、冒険者に伝わり、店に行った冒険者が話をして、市民に伝わる。
口コミの効果が発揮されていたのだ。
実は、この口コミは、ガンドロの嫁から始まったものだった。
(新)
何処からともなく流れ始めた噂を冒険者が耳にして、店に行った冒険者が仲間に話をして、多くの市民に伝わる。
口コミの効果が発揮されていたのだ。
実は、この噂はガンドロの嫁から始まったものだった。




