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十一日目 : ここが好き、ということ
朝、春は先に起きていた。
昨日よりも、静かだった。
だが、違和感はなかった。
名前を呼ぶと、
すぐにこちらを見た。
頷いた。
それでよかった。
朝食は、いつも通りにした。
パンと、簡単なもの。
春は、今日はちゃんと食べた。
それだけで、十分だった。
午前中、外に出た。
必要なものがあった。
春のためのものだ。
店の中で、少し迷った。
子どもの物は、よく分からない。
春は、何も言わなかった。
ただ、近くにいた。
靴を見た。
今のものは、小さい。
試させた。
少しだけ大きかった。
問題ない。
そのまま、買った。
服も、いくつか選んだ。
春が、ひとつだけ手を伸ばした。
淡い色だった。
理由は聞かなかった。
それを選んだ。
午後、少しだけ遠回りして帰った。
並木道を歩いた。
風は弱かった。
春が、横を歩いていた。
前よりも、近かった。
手は繋がなかった。
だが、離れてもいなかった。
夕方、菓子を作った。
今日は、最初から笑っていた。
理由は分からない。
砂糖を、少し多く入れた。
止めなかった。
甘くなった。
悪くなかった。
夜、春が小さく言った。
「ここ、すき」
頷いた。
それでよかった。
今日は、特別なことはなかった。
だが、悪くなかった。
――理




