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カミサマはカミサマでカミサマ以外のナニモノでもない話


 


 空が落ちて来たあの日、世界は一度崩壊した――


 


 *****




 どこまでも、どこまでも――

 そこは真っ白な、何もない空間だった。

 そこで私はゆらゆら、ゆらゆら、海月のように漂っている。

 

 ここは何処? 私は誰? なんてベタな質問が頭に浮かんだ。ここが何処かはわからないが、私は……そうだ、私の名前は三宅小夜(みやけさよ)、だ。地方出身の大学三年生で、東京で一人暮らしで、趣味のためにバイト三昧で……そんなことを思い出していれば

 

「キミ、頭の中煩いね」


突然、男性とも、女性ともとれる声が聴こえてきた。


「え!? 誰!?」


 周囲を見渡しても、誰の姿も……というか、居ないと言うより、何もない。

 そんなことをしていれば、ふふふっ、と楽しそうな笑い声が響く。


「探してるところ悪いけど、ボクは形を持たない――言わば、不定形の思念体のようなものだから、探しても無駄だよ」

「不定形の思念体……?」

「ボクは箱庭の創造者。そしてキミはその箱庭の住人だった」

「箱庭、の……住人?」

「ボクは定期的に箱庭を作り直す。ああ、何故って? 長く続けるほど歪みは大きくなるし、何より同じ箱庭を見続けるのは飽きるからね」

「何が何だか全然理解できないけど、とりあえず、あなたは神様?」

「うん? 神様? ボクはキミ達の神様と違って、救済も断罪もしない。言うなれば、キミ達が唱えたシミュレーション仮説や世界五分前仮説での高次存在さ」

「……じゃあ、なんて呼べばいいの?」

「カミサマでいいよ」

「え? 神様じゃないんでしょ?」

「そうだよ。カミサマだ。神様じゃなくて、カミサマ。……さて、こんな無意味な問答はやめて、目を閉じてごらん?」


 次に開けた時には、新しい箱庭が出来上がってるからさ――



 目を閉じて、そして開けたらそこは、セピア色の世界だった。

 空には飛行船が飛び、陸には蒸気を上げる汽車と車が走っている。何故か懐かしさを感じる街並みを歩く人々の装いは、洋装も和装も混じっていた。

 

「ねえ、カミサマ。この世界ってもしかして……」

「大正ロマン×スチームパンクだよ。キミの頭の中を覗いて、キミの好きなジャンルを組み合わせてみたんだ。嬉しいだろう?」


 見えた景色に、ポツリと呟いた私の頭の中に、その返答が響いた。

 

 ――というか。


「ねえカミサマ、一応訊くけど、プライバシーの侵害って知ってる!?」

「逆に訊くけど、カミサマにプライバシーの概念ってあると思う?」


 どうやら私は、元居た令和の世界に飽きたカミサマが壊した箱庭から、唯一壊された世界の記憶を持ったまま、この新しい箱庭に作り直されたらしい。

 

 ――何のために?


「ただの、ヒマツブシ、だよ」


 キミという個だったのは、ただの偶然だよ、と答えるカミサマは、ヒトの気持ちを理解しない。

 



 *****




「思ったんだけど、カミサマもカミサマより高次元の存在に作られたって可能性もあるよね?」

「確かにそうだね。でも、それなら那由多の時の中で箱庭を作って眺めているボクも、不可思議の時を独りで過ごしていたボクも、そういう設定なだけで、本当はそんなボクはいなかったってことになるから、むしろいいんじゃない?」

「……カミサマはやっぱりカミサマだね」

「そうだね、ボクはカミサマだ。だから、キミが想像したボクの感情は、カミサマのボクには到底ありえない感情だ。ただの空想だよ」

「……頭の中覗かないでよ」

「カミサマには無理なお願いかな。ごめんね」

「ごめんとか言いつつ、カミサマ絶対悪いと思ってないよね」 

「うん、勿論」

「うっわ、やっぱりカミサマってカミサマだわ」




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