DAY 67 フードコートで告白されて告白した日
「じゃあ俺は高校生らしく、ハンバーガーセットにしようかな。飲み物はコーラで」
大型商業施設で服も買い終わり、三階のフードコートでお昼ご飯を食べよう、となった。
俺はなんだか無性にハンバーガーが食べたくなり、季節限定だという和風ゆずバーガーセットを注文。
「私もそれー! 彼氏ミャーマと一緒がいいー!」
「そうだな、私もそれにするぞ。彼女だし」
「ふふ、では私も。柚子、好きなんです」
俺がカウンターで注文をしていると、後ろにいた女性3人も同じものを注文してきた。
あれ? 藤浪桃世さんとかいつもお蕎麦とかだったような……
まぁ今の俺みたく、無性に食べたくなった瞬間なのかね。
「うん、うまい! 柚子が合うなぁ」
すぐに出来上がり、空いていた席に座って一口。
うん、これこれ、ファストフードはこういうのでいいんだよ。
「ポテト揚げたてだー! うまー!」
「本当だ。揚げたてを買えるとかタイミング良かったな」
「ふふ、たまにはこういうものも良いですよねぇ。美味しいです」
女性陣はあまりこういうものを食べるイメージが無かったのだが、美味しそうに食べているな。
周囲を見ると、ご家族連れや学生で友人同士、みたいなグループがたくさんいるなぁ。
俺たちは運良く座れたが、もうフードコートは満席状態で大混雑。
まぁ夏休みだし、みんな考えることは一緒か。
「ふふ、いいですねぇこういう雰囲気。私、普段あまりこういうところに来ないので、とても楽しいです」
西崎華さんが混雑するフードコートを見回し、子供のような楽しそうな笑顔になる。
まぁ『料亭西崎』のお嬢様だしな、西崎華さんは。
こういうジャンクフードを食べる機会は少ないだろう。
「私はずっといわゆるお嬢様学校にいましたから、友人と混雑するフードコートでハンバーガーを食べる、という機会には恵まれず、たまに見かける同世代の方が楽しそうにハンバーガーを食べている姿にずっと憧れていたんです。ああ、青春しているなぁって」
高校生のお小遣いで来れる外食なんて限られているからな。
「私もかなー。ずっとマジでスポーツやってたから、外食はNGだったなぁ」
藤浪桃世さんもあまり来ていないのか。まぁスポーツをやっていたら、カロリーとか栄養の計算があるだろうし、大変だったろう。
「一人で来るのもあれだし、私もあまり来ていないな。今、やっとこういう高校生らしい雰囲気を楽しめている感じだ」
伊江里クロワさんはいつもイケメンや美女に囲まれた一軍メンバーだったので、よく来ているのかと思っていた。
「そう、私たちは高校に入って、やっとこういうことを楽しめるようになったのです。本当に、この高校に入って良かった。クロワと桃世と出会えて良かった……そしてその道はあなたに繋がっていた。美山君と出会ってから私の人生は大きく変わりました。休みの日に一人で家にこもっていた私が、友人の家にお泊りをするようになりました。一緒に旅行に行くようになりました。みんなで一緒にご飯を食べ、笑い、最近起きたことを話す。ああ、楽しい……本当に今、私は毎日が最高に楽しいのです」
西崎華さんが伊江里クロワさんと藤浪桃世さんを見て、それから俺を見てくる。
そういえば西崎華さんは小中高一貫のお嬢様学校にいて、本来はそのままお嬢様高校に行くはずだった。
でも彼女はそこを蹴り、俺たちがいる普通の高校に入ってきた。
結構な人生の決断だよな。
「あのままなし崩し的に進学しなくて本当に良かった。みなさんに出会わなければ、私は笑顔の仮面をつけたまま、ただただ無感動に高校生を演じ、何も起きない、何も起こさないつまらない青春を送るところでした」
それは平穏な高校生活……とも言うが、卒業後、後悔はするかもしれないな。
「中学三年生の時、私は決心したのです。このままじゃ周りに大事にされるだけで、自分では何もできない人間になってしまう。自分から行動しよう、そしてその結果を受け入れよう。失敗したっていい、だってそれが私の選択した道なのだから。努力をして、結果を残してみたい。苦しくてもいい、努力をして……最後に笑ってみたい」
西崎華さんは確か、『努力をしなくても何でも出来てしまう』と以前言っていたな。
才能の成せることなんだろうが、努力を無しに成功させても、多分本当の笑顔にはなれないよな。
「そして高校は家の近くの男女共学の高校を選びました。最初、すごいキラキラした人たちが近寄ってきて怖かったのですが、クロワと桃世に出会えて本当に安心しました。他の人は……その、ちょっと想像以上に軽くて……失礼かもしれませんが信用出来ないといいますか、また私は『笑顔の仮面』をかぶるのか……と思っていましたから」
「あー、あいつら、悪いやつじゃあないんだけどー、かっるいんだよねー。私も苦手ー。でも華とクロワは大好きー! 出会えて良かった!」
「ああ、マジであいつら上っ面だけで好きじゃねぇ」
西崎華さんの言葉に、藤浪桃世さんと伊江里クロワさんも反応する。
あれ、クラスの華やかなキラキラした一軍メンバーに所属している3人だが、心の内は別だったのか。
「ふふ、私もです。二人と出会えて良かった。あと、私は中学の時、星に願ったのです。私と話が合う、趣味の事も隠さずに話して笑いあえる……そう、彼氏が欲しい……! って。でも高校に入ってみたら、確かに見た目は良い人が多いのですが、それだけ、と言いますか、中身が無い方ばかりで……」
うっふ、いきなり彼氏とか、乙女トーク来たぞ。
「周りにちやほやされて、なし崩しは絶対に嫌。自分の彼氏は自分で動いて、自分で決めて、自分からアクションを起こす……! そして結果を出す! でも、そう思わせてくれる男性とは出会えず、しょんぼりしていたのですが……」
西崎華さんがクルっと俺を向き、ニンマリと笑う。
え、ちょ、怖い……
「いるじゃないですか、苦しいことに文句も言わず立ち向かい、毎日のランニング、食事制限、全てをこなし、しかもその努力を継続させられる、素晴らしい男性が。ダイエット計画を努力で成功させ、最後に結果を出し、楽しそうに笑う。ああ、この人だ……! 私、運命の人を見つけてしまいました。ありがとうあの時のお星様! おめでとう私、自分で動いてよかった、自分で動いたからみつけられた……そう、あなたこそ私のエンヴィー様なのです!」
西崎華さんが後半興奮気味に立ち上がり、演劇でもしているのかって動きで俺を指してくる。
ちょ、みんな見てる……しかも俺がエンヴィー様って何……
ああ、そういえば以前好きな作品に出てくるエンヴィー様という男性キャラに憧れていた、とか言っていたか。
「あっははははは! 華おっもろー! 良い話かと思ったら、ただの告白だったー。おっと、負けてらんないぞ、私だってミャーマが運命の人なんだ! こんな私と話を合わせてくれるし、一緒に走ってくれるから大好き……だから絶対に離さないー!」
「チッ……お前ら周りが見えてねぇのかよ……。つかこいつは子供の時からずっと私の物だ。誰にも渡すわけがないだろう。私はお前に心を救われたんだ、あれだけ格好良く私を救っておいて、逃げるとか……ないよなぁ? まぁぜってぇ逃がさねぇけど。ほら、来い」
藤浪桃世さんと伊江里クロワさんも立ち上がり、俺に向かって手を差し出してくる。
え、何?
「あ、その、お、俺も皆さんのこと、好きです。太っていた俺なんかに気さくに話しかけてくれて、ダイエット計画で苦しい運動をしていても、ずっと側で応援をしてくれました。嬉しかったです。あの声が無ければ、皆さんの笑顔が無ければ俺はダイエット計画をやり遂げられなかったと思います。俺はみんなと一緒にいたい、一緒の時間を過ごして、一緒に笑いたい。俺なんかでよければ……その、俺と付き合って下さい!」
俺も立ち上がり、西崎華さん、藤浪桃世さん、伊江里クロワさんが差し出してきた手を握る。
みんなに『彼女を公言します』とか言われたが、俺だってみんなのことが好きなんだ。
こっちからも言ってやるぞ……!
「あああ……嬉しい……やっと美山君から言ってくれました……ああ、感動で涙が……」
「やったー! これで私たちは公式の彼氏彼女だー! ミャーマから告白されちゃったー、やっばい、すっごい嬉しいー!」
「……チッ……私は小学校のときからお前と付き合っている、が、お前からはっきり言ってくれたのは、その……嬉しい……これからもずっと一緒にいたい……」
……受けてくれて嬉しいが、夏休みの混雑するフードコートで告白ってのも情緒がなかったか……
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影木とふ




