DAY 36 高校一年生の夏休みはスケジュール過多っぽかった日
学校祭も無事終わり、数日が経った。
十六歳の高校一年生の今後の展望としては、そうだな……夏休みが待ち遠しい、ってとこだろうか。
その前にテストなんてのもあるが、まぁ何とかなるだろう。
俺の目標は学年50位以内。
勉強は好きなほうなので、多分達成出来るだろう。
さて、中学時代、俺が夏休みに何をしていたかというと……勉強、ゲーム、勉強、ゲーム……だな。
これが高校に入ったからって変わるわけもなく、多分いつものごとくダラダラ過ごすのだろう。
──と、先月までは思っていた。
「というわけで、今後来るビックイベント、夏休みの計画を立てようと思います。もちろん各家庭でのイベントは、そちらを優先して下さって構いません。ですが、せっかく私たちはチームになったのですから、この短い十六歳の夏をぜひともみなさんと一緒に満喫したいのです。この四人は家も近いですし、今まで通り気軽に集まって、季節限定イベントなどを楽しみ、夏休みが終わるころには抱えきれないぐらいの思い出を朝まで語り尽くす……なんて実に高校生らしい、キラキラした夏を体験しましょう。お祭り、花火、海、スイカ割り、プール、アザ丸君、キャンプ、ショッピング、肝試し、コスプレイベント、勉強合宿、旅行……そして初デート……ああああああ、もう全部、全部やりたいのです! 実は私、今まで一度もこういうワクワクドキドキな経験をしたことがなくて、それを今年ついに出来るんだと、夢が叶うんだと、想像するだけで頭が沸騰するぐらい嬉しくて、もうそれに合わせて着る服等も事前に用意してしまいまして、恥ずかしながらプール用水着に海用水着も新調してしまったりと、期待と、これから起こる楽しい出来事に興奮が押さえられない状況でして、実はうちのお店『料亭西崎』の保養施設なんてものがありまして、そこの予約もすでに四人部屋を取ってしまったりと、少しフライング気味ですが、この四人で共に夏を過ごせるのでしたら、この西崎華、全力で全てのコネとお金を使ってでも達成したい──」
お昼休み、いつもの中庭に集まり、四人でお弁当をいただく。
和風美人、西崎華さんが突如立ち上がり、とんでもねぇ早口と熱量で夏休みの計画をブチ上げ始めたが、みんな……理解出来ましたでしょうか。
俺は……半分も聞き取れませんでした。
聞き取れたのは、途中、夏の定番イベントとして疑問が湧く、謎の海の生き物のキャラクターがいたな……ってぐらいだろうか。
「なっっげぇよ、華。とんだけ楽しみにしてんだよ、夏休み。たかがちょっと長い大型連休、みたいなもんだろ? そして途中にしれっと挟まってた初デートってなんだよ」
金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが引き気味に突っ込む。
初デート? そんなワード言ってました?
今の西崎さんの音声データ、リプレイとか出来ないですかね。
「なっがーー! 華がこんなに興奮してるの初めて見たー! おっもろー。今の全部やるのー? それすっごい過密スケジュールにならない? 休みなのに、ほぼ毎日この四人で会う、みたいになるけどー、まぁ私も夏休みはやりたいことがあるから、ちょうどいいかーって、……初デート、だ、と……? それってイベントで確定で起きるってことー? やった! それは楽しみだー!」
スポーツ女子、藤浪桃世さんも西崎さんに突っ込むが、藤浪さんも夏休みにやりたいことがあるのか。
そうだな、とりあえず各自の「この夏休みにやりたいこと」の希望を書き出してもらおうか。
「──ええっと、西崎さ、華のが長い……」
「ふふ、せっかくなのでたくさん書き込んじゃいました」
各自の携帯端末で書き込んでもらい、メッセージを送ってもらう。
案の定、西崎華さんの文章が長すぎる。
いくらスクロールしても終わりが見えない……。
こういうとき、AIでまとめてもらうと楽なんだろうか。
「クロワは……お泊り初デート……? これはいつも俺の家で似たようなこと、やってない?」
「アホかてめぇ。全然違うっつーの。もっとロマンチックなやつだよ」
伊江里クロワさんが送って来た文面に「お泊りデート」ってのがあるのだが、状況として、似たようなことを結構な回数、俺の家でやってない?
ああ、相手が俺だと成り立たないってことか。
「ええと桃世は……初デート……なんか三人ともデートって希望が多いんだけど……」
「フハハハ! だって確定イベントなんでしょー? だったらやりたい! こういうチャンスは絶対に逃がしたくない! ね、ミャーマ、この夏、私とデートしよう!」
藤浪桃世さんが爆笑しながら俺の肩をバンバン叩いてきたが、え、デートの相手って俺なんすか。
ああ、お試しってやつか?
「えっと、俺とデートなんてしても何の練習にもならないと思いますけど……俺としましては、みなさんとデート出来るのならば、絶対にしたい、ってことですね」
これは当たり前だろう。
冴えないクラスの三軍である俺が、一軍のメインメンバーである、伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんとデートが出来るのならば、今後の為の参考に俺とかいうミジンコを使った踏み台デートだろうが関係ない。
とりあえず俺の夏の記憶に、あの三人とデートっぽいのが出来たっていう、一生モノの自慢コンテンツ爆誕だろう。
「え、い、いいんですか……! 美山君、今私とデートしてくれるって言いましたよね! 絶対ですよ、じゃあ夏休みは毎日私とデートを……!」
「落ち着け、華。お前さっきから頭おかしいぞ。美山進太は私とするって言ったんだよ」
「はーー? クロワー、耳が遠くなったってやつー? ミャーマはこのももよーん様とお泊りデートするって言ったのー!」
あれ、女性三人がすっごい揉め始めた……。
よく分からんが……とりあえず、これだけは言っておこう。
「あの、せっかくの夏休みなので、普段できない場所での動画撮影なんかを計画していまして、海やキャンプ場での野外料理風景とか、そういうのを一回は撮ろうと思っていますので、スケジュールを開けておいていただけるとありがたいです」
俺たちが作っている『天使たちの溜まり場』チャンネル。
これがとんでもない人気になっていまして、早く次の動画を出して欲しいっていう希望がすごい来ているんですよ。
夏休みなら、ちょっと遠出したりとか出来るだろうし、夏っぽい動画、欲しいじゃないですか。
「海やキャンプ場での野外プレイ……それは……わ、分かった……お前がそこまで覚悟決めてるとか思いもしなかった。いいぞ、お前の熱い想いなら、私は絶対に応える」
「う、海での初体験、ですか……わ、分かりました、この西崎華、あなたのその想いに全力でお応えします! さぁ、さぁ……いつですか? 明日ですか? 分かりました、準備を……」
「屋外でヤんのかー。しかも撮影もされると……ミャーマって結構エッグイ趣味してんのなー。まぁミャーマが個人で楽しむのならいいけどさー」
俺が夏休みに天使たちの溜まり場動画を撮りませんか、と言ったら、全員真っ赤な顔になったのですが……あれ?
俺、誤解されるようなこと言ってないですよね?
えっと、夏休みはまだ先だけど、何が起こるのだろう……期待より不安が上回る……
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影木とふ




