DAY 35 学校祭の後片付けで美女三人を名前呼びした日
『大型のゴミなどは指定の場所までお持ちください。分別をしっかり心がけるよう、よろしくお願いします』
早朝マラソン後、昨日の学校祭片付け登校。
それぞれ担当の場所に散り、作業開始。
うちのクラスは『執事カフェ』をやったのだが、俺はそれとは別に『出店ランキング戦』にも出たので、クラスのほうは皆さんにお任せしてグラウンドへ。
「食材の片付けは昨日終わらせているので、今日は看板とかそういうのですね」
俺たちが『天使たちの溜まり場チーム』として使用した屋台の片付け開始。
さすがに食材は昨日処分しているので、今日は残りの外観とかに使った物の片付けだな。
看板っても、ベニヤ板にペンキで描いた簡易的なものだが。
「この看板、みんなで描いたんですよね……処分するのもったいないですね……。思い出もありますし、持って帰っちゃおうかしら、ふふ」
和風美人、西崎華さんが店舗横に置いてあった看板を眺め、物惜しそうに言う。
「そうですね。この看板だけ持って帰りましょう。みんなで描いた大事な看板ですし」
確かにこの看板、結構良い出来で、処分するのはもったいないな。
今後の動画配信のときに、後ろに置いて小物として使おうか。
「ふふ、ありがとうございます美山君。私、努力をして結果を残した経験というのが無かったので、今回の出店ランキング戦の優勝、とても嬉しかったんです。なので、少しでも思い出に残しておきたくて」
西崎華さんが大事そうに看板を抱え、嬉しそうにしている。
「おー、看板ー! こいつすっごい宣伝頑張ってくれた戦友ー! 写真撮ろー!」
ポニーテールがとても似合うスポーツ女子、藤浪桃世さんが西崎華さんに抱きつきピースサインをする。
「片付けも撮るのか? まぁいいけどよ」
藤浪さんに引っ張られ、金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんもフレームイン。
片付け中なので学校ジャージなのだが、やはりこの三人が揃うと絵になるなぁ。
ダイエット計画開始以降、気が付いたら俺の携帯端末は彼女たちの写真でいっぱいになっている。
今や動画配信で人気の三人、その三人のプライベートショット満載の俺の携帯端末って、地味にすごい貴重な物になっているような……。
他にも俺の家でのほぼ裸、みたいな写真もあるし……。
この携帯端末、絶対に失くせないぞ、マジで。
「おー、波多野ー、クラスのほうはどうだー」
「美山か。グラウンドの店舗の片付けは終わったのか。こっちは掃除、だな」
午前中で店舗の片付けは完了。
まぁ昨日もイベントが終わったあとに片付けやってたしね。
昼食後、クラスの片付けに合流する。
親友の波多野悠一によると、レンタルしていた食器やテーブルなどは、もう運び出して返却手続き済み。
残るは自分たちで用意した物、飾り付けとかの撤去と、掃除ってところらしい。
「あ、藤浪さんに西崎さんに伊江里さん、おかえりー! 昨日はおめでとー!」
「動画あれから全部見たよー! とんでもない人気になっててビックリしたー」
俺より少し遅れて伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんがクラスに戻ると、みんなから一気に祝福の声が響く。
「フハハ! 見たのか我の勇姿を……! 午後からは天使ナース1号2号3号の参戦だ! 一気に片付けるぞ、さぁ我に続けー!」
藤浪さんが色んなポーズを決めながら、顔にペンで『2』と描き、雑巾で拭き掃除を始める。
「えー、そういうのは男子にやらせようよー。手が荒れちゃうってー」
クラスの一軍の女性のみなさんが、波多野とか俺たちのグループを指してくる。
「ふふ、私もやりますし、みなさんも頑張りましょう」
和風美人、西崎華さんが俺への視線を遮るように立ち、自ら拭き掃除を始める。
「……掃除出来るヤツって、かっけぇ。逃げるやつは、だっせぇ」
「俺窓拭きするわ」
「バケツに水汲んでくる」
西崎華さんと伊江里クロワさんが掃除を始めると、一軍の、特にイケメンの皆さんが急に動き始める。
やっぱこの三人の影響力ってすげぇのな。
「俺たちは机と椅子でも拭くか」
「だな。分担分担っと」
さて、三軍以下の俺たちは、明日から授業で使う机と椅子でも綺麗にしますかね。
「机かー、こいつは手強い相手だ……なにせ数が多い。どうする弟子、一勝負と行くかー!」
「え、あれ、勝負……? 藤浪さん、なんでこっちに……」
俺が机を拭き始めると、真横に藤浪桃世さんが現れ、俺を見てくる。
あれれ、クラスの一軍のみなさんと掃除をしていたのでは……。
「フハハ、弟子よ……今朝決まった血の掟を忘れたのかー! これを守らねば、血の雨が降るぞ……!」
藤浪さんがニヤと笑い、俺の頬にペンで『弟子』と描いてくる。
ちょ、なんで俺の頬に……って、血の掟……?
あ、名前ですか……午前中はなんとか名前を呼ばないように誤魔化してたのに……。
よりによって、クラスでそれを求めてこないで下さいよ……。
「……藤浪さ……も、もも……桃世……じゃあこの列の机、どちらが早く丁寧に拭けるか勝負と行きましょうか。波多野、ジャッジを頼む。手抜きをしたら減点、手抜きの判断は波多野次第。これでどうでしょう」
「……フハハ! やっと名前を呼んだな? 昨日のように後ろから抱きつきながら囁いてくれてもいいんだぞ! いいだろう、ではジャッジ波多野、合図を!」
俺が渋々名前を呼ぶ。
ぐ、クラスではなるべく呼びたくなかったんだが……もう無理か。
もう割り切るしかなさそうだ。
「ん? お前、今藤浪さんを名前呼び……昨日のように背後から……? って、え、俺ジャッジっすか? じ、じゃあスタート!」
いきなりクラスの一軍、藤浪さんが真横に来て親友の波多野悠一が状況をつかめず慌てるが、名前呼びは今はスルーで頼む。
「ふふ、頑張れー二人ともー。クロワ、じゃあ私たちは椅子を拭いていきましょうか」
「……分かった。私は美山進太の列の椅子を拭く」
「あ、ずるいクロワ。私も美山君のチームがいいなぁ」
なぜか急に始まった俺と藤浪さんとの机拭き対決。
波多野悠一や、近くにいた三軍仲間の男子連中が、クラスの三大美女がグループに入ってきて驚いている。
西崎華さんと伊江里クロワさんが何か揉めているが、別にチームとかそういう区分は無いですって。
「必殺、残像ヤマタノオロチ拭きぃぃ! フハハ……どうだ、まだまだ弟子には負けないっつーの! あははは!」
藤浪桃世さんが腕が八本の残像のように見える速度で、次々と机を綺麗に拭き上げていく。
「し、勝者、藤浪桃世さん!」
波多野悠一のジャッジが決まる。
くっ……強い、さすが藤浪桃世さん。
パワーではもう負けないと思うが、素早さでは到底敵わないか……。
「ちっ、負けてんじゃねぇよ美山進太。じゃあ負けたこっちのチームは、二人でゆっくり雑巾洗ってくる」
「あ、ちょ、伊江里さ……えっと、ク……クロワ待って……」
金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんがガッカリした顔になり、俺の右腕を引っ張ってくる。
「み、美山……今伊江里さんも名前で……」
俺が伊江里さんもクロワ呼びしたことに、波多野が口あんぐり。
「やっぱりクロワ、それ狙いで美山君のチームに入ったんだ。ずっるーい、美山君、私も誘ってくれたら、洗うの手伝うよ?」
西崎華さんが、不満そうに右手を挙手。
「別にチームとかないって。まぁ手伝ってくれるなら、早く洗えるし……頼むよ、えーと、は、華」
「はい! 時間をかけてゆっくり洗ってきましょうか」
俺が名前で呼ぶと、西崎華さんが良い笑顔で返事をしてくる。
「おい待てーい! 勝者はこのももよーん様だぞ! ミャーマとの独占契約権を手にしたのは私だぞー!」
その様子を見ていた藤浪桃世さんが、汚れた雑巾をかき集めて焦ったようにダッシュ。
クラスのみんなが、その様子を驚いた顔で見ている……。
「おい、今のはなんだ……?」
「美山が三人を名前で呼んでいたような……」
「う、羨ましい……」
特にイケメン君たちが驚愕の顔。
ああああ……そりゃそうだって、クラスの三軍以下である俺が、一軍のメインメンバーである伊江里さんと西崎さん、藤浪さんを名前呼びしているんだから。
しかも呼ばれた三人が笑顔という。
まぁ、藤浪さん曰く、そう呼ばなければいけない血の掟もあるみたいだし……今後は普通に呼んでいくしかないのか。
クラスのみんなも、いつか……慣れるだろ。
頼むから、何で? とかの説明は求めないでね。
端折っても説明できないぐらい、すんごい複雑で面倒なので。
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影木とふ




