DAY 29 執事カフェと『天使たちの溜まり場』学校祭編が始まった日
「よく来たね、姫。さぁ、素敵な時間をあなたに」
「君には紅茶が似合うと思うんだ。おいで、美味しいスイーツも用意してあるよ」
学校祭、当日──
うちのクラスの出し物『執事カフェ』オープン。
クラスのイケメンたちによる「おもてなし」がスタート。
「うっへぇ、よくあんな歯が浮いたようなセリフを真顔で言えるもんだよなぁ。あれが出来るのがイケメンって生き物なのか」
親友の波多野悠一が、執事服を纏ったイケメンの接客を見て苦い顔をする。
「彼等も割り切っているんじゃないのか? クラスの為に頑張ってくれているんだから、見守ってやれよ。あと、ああいうのは歯が浮いたようなセリフじゃなくて、『甘いセリフ』って言うらしいぞ」
クラスの三軍所属の俺たちのお仕事は洗い物。
まぁ家で毎日やっているから、慣れたものだ。
「……何にするんだ。コーヒー三つか。ちょっと待ってろ」
イケメンだけではなく、クラスの美女たちも執事の格好で接客をしているのだが、その中でも一際目立つのは、やはり伊江里クロワさん。
スタイル良いし美人だしで、まぁ注目度が高い。
……態度はちょっとぶっきらぼうだけど、そこが逆に人気になっている。
「紅茶にスコーンですね、ハチミツはどうしますか?」
「来たか客ー! こっちだこっち、ここ空いてるからドカーンと座っとけー!」
和風美人、西崎華さんに、ポニーテールがとても似合うスポーツ女子、藤浪桃世さんの接客も人気。
西崎華さんが丁寧で、藤浪桃世さんが雑に大雑把……だろうか。
あれ、今来た男性四人組が、携帯端末で伊江里クロワさんを撮ろうとしているな……カフェは撮影禁止なのだが……。
「あ、申し訳ありませんお客様、メニューを忘れていました。追加がありましたら、こちらをご覧ください」
俺は伊江里クロワさんが映らないように立ち、メニューを広げてテーブルに置いてくる。
「ひひ、ナイスだ美山。ルールは守らないと、だしな」
「……見てたのか。ま、全部は防げないかもだけどな」
持ち場の洗い物に戻ると、親友の波多野がニヤっと笑い俺を見てくる。
午後から始まる『出店ランキング戦』に参加する人は、クラスの出し物はお昼までで抜けることになる。
「混んでるところ悪いが、ランキング戦に出るからここは任せるぞ」
「おお、行ってこい。俺も交代したら見に行くからよ」
うちのクラスの出し物、執事カフェが大好評。
今や廊下に行列が出来るほどの混雑っぷりで、洗い物担当から抜けるのは心苦しいが仕方ない。あとは任せたぞ親友。
「……時間だ。あとは任せた」
「あ、私たちランキング戦に出るからここで上がるね。みんな後はよろしくね」
「ウチのボスが動いた……悲しいが私は行かねばならぬ、ええい止めるな、今生の別れだ……じゃない、いっときの別れだ。フハハハ!」
俺が立ち上がると、伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんが反応し、みんなに挨拶を始める。
「…………おい、さっき……助かった。格好……良かった」
女性三人が、執事カフェの服を着たまま俺に付いてくる。
金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが何かボソボソと言ってきたが……え? さっき?
「ふふ、クロワを守ろうと、颯爽と駆けつけ盾がごとくメニューを広げる。まるでナイトみたいで素敵でしたよ、美山君」
「さすが我が弟子、良い動きだったぞー! そう、クロワ姫のハートが鷲掴まれた瞬間だった──って、あはははは!」
西崎華さんと藤浪桃世さんが俺にくっついてくるが……え、ちょ、あなたたち、すっごい目立つんですから、そういうのはやめて下さいって。
あと藤浪さん、俺は弟子なのかボスなのか……って藤浪さんのワードチョイスはその場の閃きと感覚だから、深く考えるだけ無駄か……。
「……じゃあ着替えてくる。ここにいろ。いや、中に来てもいいぞ」
「ふふ、美山君となら着替え部屋に一緒に入ってもいいですけど、どうします? ふふ」
「おー、姫を守るナイトはいつも側にいるもんだしなー。つか、ミャーマって私たちの下着姿とか、家でもう飽きるほど見てるでしょー。側にいてくれたほうが安心だし……来るか? あははは」
女性三人が着替え部屋の前で俺の手を引っ張ってくるが、無理無理……! 他の女性も中にいるんですってば!
ああもう、そういう冗談はやめてくださいって。
あと、皆さんの下着姿を見て飽きるなんて永遠にないです。
さぁ、お昼、この学校の伝統行事『出店ランキング戦』のスタートだ。
学年関係なく誰とでもチームを組めるから、一年生だけで組んだ俺たちがどこまで善戦出来るか……。
優勝商品は『アザ丸君トロフィー』なのだが、今年はそれに加え、どこかのスポンサーさんが高価な『アクションカメラ』を提供してくれたらしい。
それを目当てに、今まで以上の参加数になっているみたいだが……
「……待たせたな美山進太。さぁ行こうぜ」
「お待たせ美山君。食材の準備も万端ですし、あとはやるだけですね。ふふ」
「行くぞ、ミャーマ! 我が戦隊のチームワークの見せどころ……つかミャーマ、着替えはいいのかー?」
伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんが着替えを終え、例の天使ナースコスプレ衣装で部屋から出てきた。
そう、このメンバーと一緒なら、負ける気がしない。
俺の衣装?
そんなの、その場で大きな黒い布かぶって首元で結んで、サングラスに黒マスクで完了です。
「行こうかみんな、『天使たちの溜まり場』学校祭編のスタートだ!」
「……おう、行こうぜ」
「ふふ、ああ、すっごい楽しみです。胸がドキドキしています」
「フハハ、聞こえるぞ……民たちがカレーを求めている声が……!」
着替え部屋の前で円陣を組み、手を合わせる。
「あれ……? あれって動画で人気のカレー天使たちじゃない?」
「うそー、本物ー? うわすごーい! みんなに知らせないと」
学校祭期間は一般の人も中に入れるのだが、大学生っぽい女性二人が俺たちを見て携帯端末を操作し始める。
やっば、ここで騒ぎになるのはまずいか。
「グラウンドのお店までダッシュだ! 行こうみんな!」
「……ちょ、この服、走りにくいんだっての!」
「お昼からカレーを販売しますので、よろしくお願いしますね、ふふ」
「フハハハ! この2号に走りで勝てると思っているのか幹部! 天使アトミックブースト、オン!」
三人の女性が天使ナースコスプレ衣装を着ているからな、それは目立つか。
俺たちはダッシュで持ち場のお店まで移動開始。
さぁ始まるぞ、出店ランキング戦──
++++++++++++++
【以下定型文】
作品を読んで興味を持ってくれた読者様! よろしければ下にある
『☆☆☆☆☆』のポイントをよろしくお願いいたします。
応援する意味でブックマーク登録やご感想、レビュー等いただけたらとても嬉しいです!
影木とふ




