DAY 14 一か月のダイエット計画が終了で結果が出た日
ダイエット計画。
毎日早起きして走ったり、食事制限があったりして結構大変なことが分かった。
キツイはキツイが、三百メートルも走れなかった俺が、毎日のマラソンに参加しているだけで、如実に走れる距離が増えていった。
勉強もそうだが、『コツを覚え努力をしたら、結果が出る』というのはゲームみたいでとても面白い。
それから俺は能動的にダイエット計画に参加した。
色々な人の体験記なんかをネットで読んでみたり、料理サイトでダイエットメニューを覚えたり。
そしてダイエットと同時に、筋肉のビルドアップもやろうと、動画サイトを見たり本を買ったりして自分なりに時間の許す限りやってみた。
なにせ、伊江里クロワさんに誘われたダイエット計画は、たったの一か月。
でもこの一か月で結果を出せば、俺にはとてもありがたい『ご褒美』がある。
クラスの、いや学校という単位でも三大美女に入る金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが一個だけ言うことを聞いてくれ、和風美人、西崎華さんがお出かけデートをしてくれると言ってくれたんだぞ。
それは必死にもなるだろう。
人生初の『デート』に向け、俺は頑張った。
伊江里クロワさんには何をお願いしようか……同じくデートをって言ったら、ブン殴られるんだろうか……。
あ、もちろん急激なダイエットは身体に悪いから、本気の人はキチンと医師なりに相談しような。
──そして一か月後。
「…………毎日目に見えて変化していったけど……まさかここまでやるとは……」
「ほえー、ミャーマが『別☆人』。これはモテ期が来るぞー、あははは!」
「す、すごく……変わった、ね。本気の努力って、すごいのね」
金曜日の放課後、俺が一人暮らしをしているマンションに女性三人が集まる。
みんな先月の俺の写真と見比べ、驚きの顔。
その写真の俺は懐かしいマシュマロボディなのだが、今の俺はそこそこ細身で、しかも筋肉をビルドアップした状態。
伊江里さんや藤浪さん、西崎さんのようなモデルクラスとまではいかないが、まぁまぁ女性の目を引くスタイルになれたのでは。
「ふくよかだったのに、ダイエットで顔も変わったのね……。以前のまま、かわいさは残っているけど、ちょっと大人の精悍さが加わった感じ……」
和風美人、西崎華さんが俺の顔をペタペタ触りながら顔を赤らめる。
「腕とか腹筋とか、すげぇな……あんなにフヨフヨだったのに。なんか男の身体って感じ……」
金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんも俺の腹を触り、ダイエット計画の成果に驚いている。
「ミャーマはワシが育てたー! なんつって。ずっと見てたけど、本当にミャーマは頑張っていたからね。私は努力を継続して怠らない人が大好き! 実はミャーマって私の理想に近いかもー! あははは!」
ポニーテールがとても似合うスポーツ女子、藤浪桃世さんも俺の肩をバンバン叩きながら笑う。
以前のマシュマロマンの俺なら、この衝撃で身体が震えていたが、ビルドアップをした今の俺の身体はビクともしない。
「そ、そうね……美山君、本当に頑張ったものね。横で見ていて、目を奪われるぐらい、どんどん格好良くなっていった……。あと、努力をして頑張ったのは美山君なんだけど、その、私が育てた……とまでは言えないけど、達成感というのかしら……そういう不思議な感情が渦巻いているの……」
西崎華さんはいつも冷静なのだが、珍しく興奮気味。
「写真、撮るか。一応約束の一か月だ、結果を残そう」
金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが携帯端末をテーブルに置きタイマーセット。
「美山君、ポーズ、お願い出来る?」
西崎さんが、ボディビルダーみたいな、両腕をぐっと上げているポーズを指定してきた。
こう、かな?
「そう、そういう感じ。ああ、いい……私、こういうのちょっと夢だったの……ふふ」
俺がポーズをとると、西崎さんが俺の右腕に軽くぶら下がる、みたいなポーズをとる。
「ちっ……私は左だな。私を支えられるか? 美山進太」
左腕には伊江里クロワさんがぶら下がるポーズをしてくる、もちろん大丈夫ですよ。
「私はミャーマの腹筋を記録に残しておこうー! あははは!」
スポーツ女子、藤浪桃世さんは俺の着ているTシャツをぐいっとめくり、ちょっと割れている腹筋に指さしポーズで笑顔。
なんだ、この写真。
「一か月かぁ、まさかここまで身体が変化するとは、自分でも驚いているよ」
写真を撮り終え、俺は改めて鏡越しに自分を見てみる。
すっとした細身だけど、筋肉はしっかりついているという、先月とは真逆の体形。
自分で言うのもあれだが、まぁまぁ見た目が良くなったのでは。
「一人では絶対に達成出来なかったし、みんなが付き合ってくれたから成し遂げられた。本当にそう思うよ、みんな、ありがとう」
「……あ、ああ、その、良かったな……」
「先月までのふっくらミャーマの笑顔も可愛かったけど、痩せたミャーマの可愛い笑顔って破壊力すごー! 思わずクロワが顔を赤くして目をそらすレベルー!」
「おめでとう美山君。あなたが格好良くなっていく過程を側で見られて励みになったし、毎日とても楽しかったし、一緒にダイエット計画に参加していたことを誇りに思う。ふふ」
俺が笑顔でお礼を言うと、藤浪さんと西崎さんが笑顔で応えてくれたが、伊江里さんが顔をそらす。
あれ、もしかしてダイエット計画、まだ合格じゃあないのかな。
「その、伊江里さん……俺、一か月のダイエット計画を乗り越えたけど……ど、どう、かな」
「…………え、あ、ああ……」
「あれあれー! クロワが乙女になってるよー、めっずらしー! あははは」
「ほらクロワ、美山君頑張ったんだから、ちゃんと言ってあげないと」
なんか伊江里さんに、いつもの強気な感じが見えないな。
「…………その、この一か月、文句も言わず、逃げ出すこともせず、真摯にダイエットに望む姿はこちらが見習うレベルだったし、とても良かったぞ。その、美山進太……今回のダイエット計画は……合格だ」
「……! 本当? やった……俺やったんだ! ありがとうクロワ、全部君のおかげだよ!」
伊江里クロワさんが俺の顔をあまり見ず、下を向きながらボソボソと合格宣言をだしてくれた。
俺はあまりに嬉しくて、伊江里クロワさんに抱きついてしまった。
「ひっ……! おまえ……! クロワって……」
あ……しかも興奮し過ぎて、思わず小学校のときの呼び方をしてしまった……これはマズイ!
「ご、ごめん! 嬉しくて、思わず名前で呼んでしまった……ご、ごめんね伊江里さん」
俺は慌てて伊江里さんから離れる。
「あははは、謝る必要ないよミャーマー。だってクロワ、ずっとそう呼んでほしいけど呼んでくれなくてイライラしていたしー!」
「そうだよ美山君。もうずっとクロワって呼んじゃいなって。ふふ、あの強気クロワが乙女みたいで可愛い!」
「て、てめぇら余計な事ベラベラ言うんじゃねぇ!」
ん? どういうことだ?
ま、まぁいい、とりあえずダイエット計画は合格、伊江里さんに認めてもらえたぞ!
よ、よし……つまり、これはつまり……
「じ、じゃあ、に、に、に西崎華さん……! 俺とお出かけデートをして下さい!」
「…………ぁ? てめぇ、どういうつもりだ」
やったぞ、約束通り、人生初の女性とデート……と思ったら、伊江里クロワさんがいつもの強気ヤンキー路線に戻ってすっげぇ睨んできたんですけど……
あれ?
や、約束をしたはず……なの……
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影木とふ




