悪魔的な、彼ら。
水滸伝の好漢たちは、伏魔殿から飛び出した百八の妖魔なわけですが、べつに化けもののような見てくれをしているわけではありません。それどころか役人だった人物もいるし、人々から慕われている人もいました。彼らは一見普通の人間と変わらないのです。
でもお話を読んでいると、確かに普通の感覚じゃないよな。と思ってしまうところが多々あります。……何度も書いておりますけども。
今の所彼らの中に最も悪魔的な雰囲気を感じたのは
「四五、雷横と朱仝、迫られて梁山泊に登ること」
でしょうか。
*~*~*~*~*~*~*~*~ちょいとあらすじ。
朱仝は罪人である雷横を逃したために、滄州の牢城に流刑となった。朱仝は母のために人を殺してしまった雷横の友人だったのだ。
滄州府の知事は、朱仝の卑しからぬ外見をいたく気に入り、首枷を外して、役所で使うことにした。
知事には四つになる息子がいたが、その子も朱仝のことをひと目で気に入り「このひげのおじちゃん大好き!」というと朱仝の膝に乗ってしまう。
「これこれ、いたずらしちゃいかん」
父親である知事が叱るが「やだやだ、このおじちゃんに抱っこしてもらうんだ!」ときかない。
朱仝の方でも恩のある知事の坊っちゃんだということもあるし、こうしてなつかれればかわいい。
毎日のように町に連れて行って遊んであげたり、飴を買ってあげたりしていたのだった。
そこへ逃してやったはずの雷横がやってくる。
梁山泊へ登った雷横は、朱仝も仲間に引き入れるために、梁山泊の軍師である呉用と、梁山泊一の暴れん坊黒旋風李逵と共に、朱仝の前に現れたのだ。
しかし、朱仝はもともと真面目な男。そして梁山泊に集まる好漢は山賊である。
仲間になってほしいとの申し出を断るのだが、気がつくと、坊っちゃんの姿が見えない。
「坊っちゃんをどうした!」
詰め寄る朱仝に
「まあまあ、李逵のやつが抱いていったに違いありませんよ、一緒に探しましょうか」
と、ゆったりと答える呉用。
あわてて走り出した朱仝だったが、探すまでもなく、向こうから李逵が「おうい! ここだよ!」と手招きをする。
「坊っちゃんは?」
駆けてきた朱仝を前に、李逵はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「坊っちゃんは……そこで寝てるよ。行ってみな」
李逵が指さした先にはこんもりとした森があった。
夜の森。
暗闇の中で坊っちゃんを探す朱仝。
そして……月明かりの中、朱仝は小さな体が下草の中に倒れているのを見つけた。
「坊っちゃん!」
助け起こし、胸に抱いたが頭は半分に割られ、すでに坊っちゃんは絶命していた……。
*~*~*~*~*~*~*~*~
うわー、悪者。殺人鬼。しかも李逵はバリバリ人を殺しますから。純真無垢なシリアルキラー! そんな感じ。
そんでこの後朱仝がどうしたか、気になりますよね。
もちろん、怒髪天を衝きましたとも。
しかしここでも懐柔されてしまいます。
「あなたにどうしても仲間になってほしかったのです。そのために帰心を断つため、坊っちゃんを李逵に殺させたのです」
というわけです。
このセリフは私の脳内変換では
『いつまで人間のふりをしているのです。あなたは私どもの仲間ではありませんか。あなたの覚醒を助けるために、人間界とのつながりを断ち切って差し上げたのですよ』
みたいな感じですね。
魔界水滸伝チック!(いや、栗本薫さんがそんな小説を書いてましたよ。好きだったけど、途中から訳わかんなくなっていった。そして最後まで読んでない……)
ちなみにこの朱仝。どんな外見だったかというと、赤ら顔に、下腹あたりまで垂れ下がった美しいひげを持っていたそう。美髯公などと呼ばれております。ううん。こういうのがナイスミドルだったんですかね……。




