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創作の種記録  作者: 観月
12/12

ケルト神話より「クーフリン」その3

 クーフリンについての投稿は本日で最終回にしようと思います。


 最後のテーマはやはり友情でしょうか。……と言いつつ、最初からテーマを考えて投稿していたわけではないのですけれどね。


 クーフリンの親友としてまず第一に思い浮かぶのは、コナハトのフェルディアです。

 共に影の国のスカハサのもとで修業をした仲間であり、純粋な友と言える存在は、クーフリンにとっては彼だけだったのではないかと思います。


 しかし、クーフリンはアルスターの赤枝騎士団の一員であり、フェルディアはメーブ女王が治めるコナハトの戦士でした。


 メーブ女王は戦が大好き。アルスターに攻め入りたくて、うずうずしています。自分に失礼な態度をとったクーフリンのことを憎んでもいます。

 いよいよ戦だという時のメーブのうれし気なこと。


『クルアハン城の板張りの大広間に座っていたメーブは、炎を見つめてニヤリと笑った。』


 さすがドン! です。しかも……


「まっとうな手段であの雄牛が手に入るとは思っていなかった。そうとなったら、汚い手を使うまで」と、堂々と汚い手を使うぞ宣言です。いやあ、大好き。そして、壁から大剣をおろし「古の血の招集をせよ!」と言い放つのです。かっこいいー。


 あ、違った。友情だった。


 メーブの発した古の血の招集により、コナハトの戦士であったフェルディアは戦に向かいます。コナハトの戦士ですからね。

 メーブもフェルディアとクーフリンの間柄は知っていたので、最後の最後までフェルディアをクーフリンの決闘の相手に指名することはありませんでした。しかし、クーフリンによって力のある戦士がすべて殺されてしまうと、とうとうフェルディアを呼び出します。


 こうして友人でありながら命を懸けて戦わなければならなくなるのです。

 二人の戦いは、静かです。昼の間戦い続け夕方になると互いにひしと抱きしめあい、傷の手当てをしてともに眠りにつきます。そしてまた日が昇ると静かに死闘を繰り広げます。

 けれども最後の日はやってきます。

 この時、クーフリンは初めてスカハサから授けられた魔槍『ゲイボルグ』を振るうことになるのです。


 この友との別れは、もともと破壊的、自滅的な雰囲気を纏うクーフリンに、さらに濃い影を落とすこととなります。


 ――はあ。萌える。


 このあたりのバランスのとり方と崩れて破滅に向かっていくという設定に、私は『銀河英雄伝説』のラインハルトとキルヒアイスを思い起こしましたよ。


 さて、フェルディア以外にも、縁の下の力持ち的にクーフリンを支え続けた健気な友もいます。

 クーフリンが乗る戦車を操るロイグです。ロイグは貴族であり、クーフリンより一つ年上です。本来なら御者などになるはずはなかったのです。

 ですがクーフリンが「俺の戦車を御してくれ! そうすれば一緒に戦えるぞ!」と叫んだとき、ロイグは瞳を輝かせ、そばかすの浮いた頬を赤らめてクーフリンに首を垂れたのです。

 ロイグはそれ以来、決してクーフリンから離れることなく、最後まで彼に仕えます。

 

 ◇


 クーフリンとの戦いに敗れたフェルディアは、最後に言いました。

「俺の死はお前のものだ。クーフリン。俺の弟。立て! 立ってくれ! 最後の勇者フェルディアですねが死んだからには、連合軍が攻め込んでくる!」

 そうしてフェルディアは息を引き取りました。

 しかし、暗闇に沈んだクーフリンは動くことが出来ません。ロイグがクーフリンを引きずり戦車に乗せたことも、ひた走りにクーフリンを連れて避難したことも、クーフリンはわからなかったのです。


 クーフリンが死んだとき、妻のエウェルは言いました。夫の前では一度も見せたことのなかった涙を流しながら

「こんな仲間のいるところは二度と見つからないでしょう」と。その仲間とは、クーフリンと二匹の馬と、ロイグとエウェルのことでした。


 そして、クーフリン亡き後、彼の仇を取るのは彼の乳兄弟である勝利のコナルでした。

 コナルもまた、クーフリンの現世での兄弟であり、友人でした。なにしろクーフリンは半分神様でしたからね。


 昔々、クーフリンの祖父にあたるドルイド僧が占いました。

「今日、槍と盾を手にする少年こそ、アイルランド全ての戦士の中で、もっとも偉大で、もっとも誉れ高き戦士となるだろう。だが、こめかみに白髪の一本すら数えることなくく、命を終える定め……」

 それを聞いていたクーフリンは、その日のうちに「武者立ちの儀をして欲しい」とコノール王に申し出るのです。


 彼は選び取りました。英雄としての生涯を。短くも、熱い生を。

 そうしてロイグとともに、戦場を駆け抜けました。

 自分の宿命を知っている彼には、影が付きまといました。


 ああ、この英雄を救えるような作品をいつか生み出したい。

 

 生きるということの意味と重さを、考えさせられるような作品でした。


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