ケルト神話より「クーフリン」
水滸伝も血みどろでしたが、クーフリンの物語も間違いなく血みどろです。
今回私が読んだのはサトクリフのクーフリンでした。
ケルト神話には多分いろいろなバリエーションがあるんだと思います。サトクリフが創作した部分もあると思います。私が知っていた物語とちょっと違うところもあったので。
で、サトクリフのクーフリン(クーフーリンと表記されることも多いです)は、もう、ものすごく好みでした。萌が……すごすぎる。
クーフリンは太陽神と人間の間に生まれた半神でありながら、どこか影を感じさせるダークヒーローです。
まず、彼の登場シーンが衝撃的です。
宴に遅れたために締め出しを喰ったセタンタ(クーフリンの幼いころの名前)。しかも屋敷の周囲には獰猛な番犬が放たれています。
王や館の主である刀鍛冶のクランはセタンタはもう来ないだろうと宴の真っ最中です。と、外から恐ろしい犬の唸り声と人の叫び声が聞こえてきました。
人々が駆け付けると、閉じていたはずの門には血しぶきが飛び、ぽっかりと口を開けています。そしてそこに、浅黒い美貌の少年が一人、息を弾ませ濡れたような月を背に立っています。足元に転がっているのは、骸となった巨大な猟犬です。
このことから少年はクランの猛犬と呼ばれるようになります。
クーフリンの今後の生き方を象徴するかのような、血みどろな登場シーンです。
彼の結婚も、恐ろしいほど血にまみれたものとなります。
彼が自分の妻にしようと決めた女性はルスカの領主フォルガルの娘、エウェルでした。エウェルもクーフーリンを好いていましたが、エウェルの父は彼女をマンスターの王に嫁がせようとします。
フォルガルの屋敷へなだれ込んだクーフーリンと仲間たちは、戦いの末館の戦士とフォルガルを殺し、エウェルを手に入れます。戦車を従え、エウェルを肩に担ぎ上げ屋敷を後にするクーフリン。
しかし、戦闘はこれで終わりではありませんでした。
フォルガルの姉がミースで兵を挙げ、クーフリンの後を追ったのです。
少数精鋭のクーフリンの部隊は幾度となく敵に立ち向かい、大地は赤い泥となり、グロンダートの浅瀬は赤く染まったといいます。
血なまぐさい激戦=クーフリンの結婚と、後々まで言われることになってしまうのです。
エウェルはクーフリンの最後まで彼を愛しました。
クーフリンが戦闘のために壮絶な最期を遂げると、彼の後を追うようにこの世から旅立っていきます。
水滸伝に負けず劣らずな血みどろなお話ですが、水滸伝の登場人物が悪党であることに比べると、クーフリンは何人殺そうとも、どれほど血にまみれようとも、神であり英雄であった。そんな描かれ方をしています。
他にも萌えポイントはたくさんあるので、気が向いたら書き残すかもしれません。