サブリナ(セクション・オーバ・シー)
クァンドは閉店間近。
閉店間際を知らせるミケのピクニックは始まっていた。
カウンタ席には、ミッキィとドナルドが離れて座っている。
カウンタの奥ではマスタが立ち、グラスを磨いている。
マスタの磨くグラスはまだ新しい。それからクァンドのあらゆる食器が、そのグレードを上げていた。その資金はソフィアが支払わされた。大陸横断鉄道の一等車でのババ抜きに勝利し、それによって得た金貨は全て食器とグラスになったのだった。
中央のテーブル席にはウェイトレス姿のソフィアと、黒頭巾のサブリナと、そしてどこからかアレキサンダが手に入れてきた巨大なファンシィ・キディ・ラビットのぬいぐるみが座っている。
ソフィアは椅子に斜めに座っていた。サブリナはきちんと前に向いている。
話題はスピーカについて。
サブリナが発見した、魔法を司る、脳ミソのセクション。
通称、サブリナ・セクションを停止させることの出来る魔法、スピーカについて。
何度も互いの愛情を確かめ合った二人だが。
このテーブルの雰囲気は、悪い。
「もう、ラボにはいかない、」ソフィアはヒステリックの色濃い声を出す。「サブリナの前じゃ歌いたくない」
「なぜ?」サブリナはまるで理解不能意味不明な不思議な生物を見ている表情で言う。「どうして、もう少しで、研究の成果がハッキリ見えそうなのに、なぜ、そんなことを言うの? 私、ソフィアの気持ちが分からないの、色を付けて、説明してくれる?」
「もう歌いたくないって言ってるの!?」ソフィアは声を荒げた。「私、もう、疲れたの!」
「もしかして、」サブリナは一度目を閉じて考えて、パチッと目を開く。「甘えているの? 私に?」
「あ、甘えてなんて!」ソフィアは表情を変えて、声のボリュームを絞った。「な、ないんだから」
「そういえば最近ずっと、私、華の研究ばかりで、あまり、ソフィアに構ってあげられていなかったわ、一緒に眠ってもいないし、キスもしていないし、二人の未来のことについて話しながら、猥褻なこともしていないし、愛している、っていう台詞も言ってなかった」
「も、もう!」ソフィアは顔をピンク色にする。「声が大きいよ!」
ミケがピアノを奏でながら、クスリと笑ったのが聞こえた。
「ああ、やっぱり、そうだったのね、」サブリナは胸の前で手を合わせて、合点がいったという表情で微笑む。「なんだ、素直に言葉にしてくれれば、いつでも、私はソフィアのために何でもしてあげるのに、ソフィア、愛しているわ、私、あなたのことを愛してる」
「そうじゃないんだって、」そう言いながら、ソフィアから笑みが溢れる。「なんか、違うんだって」
「そんなことより、ソフィアにプレゼントしたいものがあるの」
「プレゼント?」
サブリナはコップくらいの円筒形のガラスをテーブルの上に置いた。
サブリナはソフィアの方に向かって、ガラスを指で押した。
すると、ガラスの中が金色に光った。
そしてどういう理屈か、星や三角形など、様々な模様が内部で産まれ、上下に動いたり、消えたりしている。
ソフィアは顔を近づけて、それに見入る。「とっても綺麗」
「私の光をここに閉じ込めて、模様が浮かび上がるように操作させているのよ、」サブリナもソフィアと同じように照明を覗き込んだ。「どう、気に入ってくれた?」
「でも、どうして、急に、プレゼントなんて」
「理由がなくちゃいけない? 私はソフィアのことを愛しているのよ」
「どうしてそんな恥ずかしいこと、」ソフィアは風を起こし、自分の顔を冷やした。「平気で言えるの?」
「恥ずかしい?」サブリナは首を傾げる。「何が?」
「ああ、もう、」ソフィアはガラスの照明をじっと睨み、聞く。「コレ、どうやって消すの?」
「ああ、コレはね、こうするの」
サブリナは人差し指でガラスをソフィアの方にずらした。
すると光が消えた。
ミケの奏でるピクニックも。
終わり。




