ミケの邂逅
大陸を横断する列車が走り始めてからすでに長い時間が経過していた。
ミケは窓の外を流れる夜の景色を眺めていた。四人の魔女たちは通路を挟んで反対側のベッドが設置された部屋に移動し、すでに眠りに付いている。
左から右にゆっくりと流れる、夜の田園風景。
視線を持ち上げると、澄み切った空に星が輝き流れている。
どこに行くのだろう?
誰にも分からない、自分の未来。
気持ちはファーファルタウの外に向かったあの日の夜に似ていた。
どこに行くのか。
そのときのミケも分からなかった。
そのときのミケは、なぜか。
泣いていて。
涙が止まらなかった。
訳の分からない初めての気持ちと。
涙で滲んだ空に輝く沢山の星の輝きはとても、ドラマチックに思えた。
シンデラに向かう蒸気船が出港するのは早朝。
夜空を眺めていると、段々と空は白んでいった。
この夜が明けなければいいと、なぜか思っていた。
でも、夜は明けたし、列車は港に着いた。
朝日をバックにした巨大な蒸気船を見上げてから。
ミケは後ろを振り返った。
瞬間。
ファーファルタウで起こったあらゆることが思い出されて。
二度と戻れない世界が目の前に広がって。
弾けた。
ミケの背中に広がるのは巨大な船を修繕する、さらに巨大なドッグが並ぶ世界。
奥にはなだらかに続く、とてつもなく深い緑色をした山々。
そこにファーファルタウの景色はなく。
ミケは自分を取り囲む知らない風景にとても楽しくなって唇をぎゅっと結んだ。
チケットを握りしめ、蒸気船に乗る人達の列の最後尾に加わった。
そこへ魔女が現れた。
魔女の郵便屋さんのルーシィだった。
彼女とはその時が初対面。
「……ふわぁ、速達だよ、」ルーシィは欠伸を噛み殺しながらランドセルから封筒を取り出し、ペンと一緒にミケに差し出す。「サインを頂戴な」
そのときのルーシィも、カサブランカからの手紙を持っていた。
ルーシィが飛び立ってから、封を開き、手紙を確認した。
ミケはその手紙を見なかったことにして。
破って捨てた。
船に乗り。
その汽笛を聞いた。
船は煙を吐き、動き出す。
デッキから、離れていく大陸を見ながらミケは。
「あっ、」と声を出した。「しまったなぁ」
忘れ物をしてしまったのだ。
絶対に傍に置いておきたいものだったけれど。
でも、大したことじゃない。
ファーファルタウに帰らなくたって。
またきっと、出会えるだろう。
だから……。
「ミケ!」
「わあ!」
ミケはマロリィの声に飛び起き、周囲を見回す。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。窓の風景は、明るく、止まっていて、ホームを挟んで向かいに列車が見える。
「着いたよ!」マロリィの声は興奮している。「着いた!」
「……どこに?」ミケは目を擦りながら聞く。
「もう、寝ぼけてるの?」マロリィは顔を近づけて、声のボリュームをさらに大きくして、笑顔だ。「ボストンだよ、ハーバードと工学と独立戦争の街、ボストンさ!」




