暴走
また遅れてすいません!!
「『強化』!!」
『強化』。本来、そんな魔法はこの世界には存在しない。これは、ラテュロスのアドバイスのもと、自分の固有能力で産み出したオリジナル魔法だ
その効果は単純明快、消費した魔力と比例して、ありとあらゆる能力を上昇させるのだ
横薙ぎに振るった槍がラプティスの体に触れる
「──────────!?」
だがその一撃は軽々と受け止められ、さらに
ピシッ
嫌な音ともに、自身の愛槍が砕けた
「・・・・・・・・なんだ、この程度か?」
槍が砕けたことで、一瞬対応が遅れた。ラプティスは持ち武器である大剣をすでに振りかぶっている。
回避が、間に合わない
死────────
「─────なせてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!」
瞬間、目の前が紅蓮に染まる。爆撃が私とラプティスの間に炸裂したのだ
「がっ・・・・・・・・!!」
「大丈夫か!?」
その威力に吹っ飛ばされたことで、なんとかラプティスの間合いから逃げること成功した、いや正確には
「・・・・・・・・姉御、逃がしてくてありがとうございます」
「いや、今のは私のミス。まさかあそこ強くなるなんて予想外だった・・・・・・・」
爆発の土煙が晴れる。そして、そこに佇む影がひとつ
骨のような見た目ながら重厚な金属の輝きを放つ鎧に血に浸けたような赤いマント、そして先程まではなかったはずの盾
だがそんな見た目の変化など気にならないほど上昇した、圧倒的なまでの魔力量
だが、それでも・・・・・
「・・・・・ここは──────」
「駄目だ。私がやる」
「──────────時間稼ぎくらいはできます」
「時間稼ぎこそ私の得意分野だ。それに、なにをしてくるかわからない以上、ここは対応力に優れた私がやるべきなんだ」
「・・・・・・・・・死んだら私も死にますからね」
納得は、正直全くしていないが、これ以上話す気はないという姉御の態度が、私の足を動かした
こういうときの姉御はテコでも動かない。話すだけ無駄というやつだ
「・・・・・・・・いつか絶対認めさせる」
今思うことではないのもしれない。けれど、頼ってくれないもどかしさが、意識せず漏れだしていた
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「行ったな・・・・・・・・・さて、待たせたかな?」
「構わんさ、むしろありがたい。最も厄介そうな貴様が自分から一人になってくれるとは」
「悪いけど私しぶといよ? 何せ妹分の命が懸かってるからね!!」
そう啖呵をきり、刀剣状の“クビカリ“を構える
相手の手の内がわからない以上様子見がセオリーだが、ここはあえて
「────────向かってくるか、この局面で」
防御の構えをフェイントに、片方のクビカリを投擲し、怯んだところを追撃する
魔力量的には圧倒的にこちらが不利。ちんたら構えてたら質量攻撃で即座に消し飛ばされる可能性もある
ならばこそのこの距離。これならそこまで大規模な技は・・・・・・・・
「───────出せない。とは、少し浅はかだぞ?」
瞬間ラプティスの手の中で閃光が走る。驚愕する私を尻目に、その閃光は徐々に縮まり、球の形を成して────────弾ける
「パワー・ボム」
その瞬間、周囲一体が閃光に包まれた
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「──────なん、と・・・・・・・・」
ラプティスは驚愕を隠せないでいた。いや、もはや畏怖すらも感じる。それほどまでに、目の前の状況は衝撃的だった
「・・・・・あ・・・・・ぐあ・・・・・」
生きている、どころではない。立っている、それもこちらへの敵意を一切衰えさせずに
「・・・・・・・浅はかだったのは私だったな。まさか貴様が、いや、貴殿がそこまでの実力者だったとは」
「・・・・・・・・煽り、なら・・・なかなかのセンスしてるよ・・・・・技を読みきれ、なかった小娘に向かってさ・・・・・・」
「いや、いいやそれは違う。この不意打ちを初見で避けたものはいない。ましてや耐えるなど、人間では初めてだ」
「・・・・・・・・クソっ・・・・たれ」
そのまま目の前の英雄が膝をつく。よく見れば腕は焼け焦げ。その前には盾にしたであろうさまざまな武器が灰となって散らばっている
「・・・・・・本当に見事だった。貴殿の名を聞き忘れたことは、我が生涯の恥として、魂に刻み付けるとしよう」
自らの大剣。魔剣“クラデマ“を構える
「さらばだ・・・・・・・せめてこの一刀で、苦しむことなく逝くがよい」
魔剣が迫る。ラテュロスの命を刈り取るために、全霊を持って振るわれた剣が吸い込まれるようにその体へと・・・・・・・
「・・・・・・・・!?」
──────たどり着こうとした時、その剣筋が大幅に外れた
いや、剣筋だけではない。体全体が、まるで横に落ちているような
迎撃体勢をとろうとする、が、全力で剣を振るったのが災いして、身体はその思考についてこない
数秒、ラプティスは無防備な姿をさらす。そして、その隙を逃さぬ、獣が一匹
「─────ァァァァアアアア!!」
自らの自慢の鎧に拳が突き刺さる。そして───────吹き飛ばされる
「・・・・・・・・なん、と」
私は今日何度驚かされるのだろうな。とこぼし、ラプティスは腹部に大きく空いた穴を見やる
本来、人間の拳など、この鎧に傷ひとつつけることはかなわない。ましてや壊し、ダメージを与えるなど不可能だ──────だが、目の前の鮫の獣人の姿を見て、思い出す。
「・・・・・・・なるほど、『獣化』か」
自分と同レベルにまで魔力を跳ね上げた秘術の名を呼び、ラプティスは再び剣を構えるのだった




