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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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武士のアルバイト

前回のあらすじ・武士が草むしりのアルバイトに行くことになった



 武士がいない部屋は、いつもと違ってなんだか広くて、少しだけ寂しい気が――


 ぶら下げられた百均おもちゃ、大切に手入れされたシルバニアなファミリー、武士の紙工作で足の踏み場がない床、ひしめき合うぬいぐるみ達、「目が覚めた、餌をよこせ」とドアペロアピールするハムスター。


 1ミリとて寂しくないな。視界がやかましすぎる。


 とりあえずハムちゃんには、ちぎったキャベツとひまわりの種をあげた。そろそろ掃除の時期かな。


 そうやってのんびりすること三時間……。


「ただいま帰ったぞ」


 武士帰宅!!

 おかえり!! 大丈夫だった!?


「否」


 ウオオオオオオオオ泥まみれ!! 大丈夫な点がまるで見当たらねぇ!!!!

 何があった!?


「転んだ」


 なるほど。


「十四度」


 十四回も!!?


「なにぶん草むしりをしたのが久々でな。常では使わぬ筋肉を使うたぞ」


 ああ、わかる気がする。普段から鍛えていても、いざ動くと思いもよらない部分を使って変なとこ筋肉痛になったりする。

 いや、それにしたって転びすぎだろ。罠でも仕掛けられてた?


「そうかもしれぬ」


 そんなわけないだろ。仕事先普通に畑って聞いたけど。


「思うに、某の命を狙っておる者が潜んでおったのだ」


 そんなわけないだろ(二度目)。


「ゆえに某はしばし身を潜めねばならぬ。大家殿、おやすみ」


 おう、お疲れさん。労働ありがとうな。

 いや待て! 風呂入れ! 玄関で服脱いで風呂行け!


「今すぐ布団に倒れ込みたい」


 十五度目の転倒をここでやるな!!


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