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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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地図

 地図を見せてみた。


「おお……? これは……ほお……」


 しばらく興味深げに見るかと思っていたが、案外早めに切り上げてテレビをつけた。


「しかし見方が分からんことには、どうしようもないぞ」


 ちょんまげを引っ掴んで事情を尋ねたら、そんなことを言われた。


 まぁそれもそうだな。


 少し揉めたがテレビを消させ、また地図の前に座らせた。


 武士が今住んでいる所を指差し、日本はとんでもなく広いんだぞと教えてやる。いわんや外国をや。

 武士は「ほうほう」と聞いていたが、やはり録画していた『天空の城ラピュタ』が気になるようで、チラチラとテレビを見ていた。


 いや、私も好きだけどね、ラピュタ。

 この歳になっても、やっぱ見始めたら最後まで見るからね。


「大家殿」


 ラピュタを諦めて地図に専念することにした武士は、世界地図の端を指差して言った。


「この場所の先は、図の反対側のここに至るのか?」


 お、よく分かったな。


 驚いていると、武士は得意げに笑った。


「某とて、この世は丸くできておるということぐらい知っておる。それなりに書も読んできたからな」


 ちょっと感心した。

 が、なんでそれ知っててちょんまげの由来知らねぇんだよコイツ。


 彼にしてもそこを突かれると弱いのか、落語の出囃子で聞いたような鼻歌を歌ってごまかしていた。


 あんま上手くねぇな。


「しかしなぁ、船に乗り続けて同じ場所に辿り着いたから良かったものの、果てが底無しの崖になってたらどうする手筈だったのだろうな」


 饅頭を頬張りながら、武士はまたテレビをつけようとする。私ももうそれを止めようとはせず、饅頭を手に答えた。


 ――さぁなぁ。そこはやっぱり、試しに降りてみるんじゃないのかな。


 すると、武士は何故か嬉しそうにしていた。「日本男児たるもの、冒険心というのは止めがたいものよのう」と、パズーに向かって話しかけていた。


 何か共感する所でもあったのだろうか。


 だが武士よ、パズーは日本人じゃないぞ。


 今度、ワンピースを読ませてみようか。

 とても食いつくような予感がするのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 微笑ましい二人の遣り取りも良いですね(*´ェ`*)
[一言] 言われてみれば、確かに。丸かったから良かったけど、平だったらどうしたんだ?
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