30 やれること、すべきこと
───チュンチュン…チュン……─
「…朝……」
勇気は鳥の声に目を覚ました。時計を見ると目覚ましアラームの一分前、万全の目覚めだ。そのまま鳴る直前のアラームを止め、起き上がった。
今日は大きく特別な日と言える、音楽によってこの学校の生徒に、過去の生徒会から虐げられた者たちに自由を示すのだ。もう圧政はないのだと。
即ち、軽音部による校内劇場完成記念ライブ、その当日である。例え圧政というものが遥か縁遠いものでも、生徒会副会長代理として果たすべき責任だ。
「…しっかりやらないとな」
勇気は一通りの身だしなみを整え、キッチンに向かう。
「おはよう、義兄さん」
そこにはやはり結愛が居る、彼女もまた気合を入れて一日を始めんとしていた。
「おはよう、結愛」
勇気は挨拶を返し、やることを見付けてそのままキッチンに入った。初めこそ自分で全てやろうとしていた二人だが、今の姿は共同生活の到達点が如き完璧なものだ。
「義兄さん、今日は本番頑張ってね。私応援してる」
「ああ。結愛も裏方で参加してくれるんだよな、一緒に頑張ろう」
「うんっ、目指せ最高のステージ! …2年の先輩たちが持ってる不満、全部解いてあげないとね」
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朝食を終え、二人は覚悟を決めて鞄を持った。
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───ガチャッ!─
意気揚々と扉を開いて朝日を浴びる。暖かな日差しは眩しく、一瞬視界を塞いだ。
──「おう! 来たな副会長!」
陽光に目が慣れた頃、勇気は玄関先の人影に気がつく。
「美麗、鶴城! 来てたのか」
軽音部ギターボーカル 中藤美麗は、生徒会 宇宮鶴城と共に太陽にも負けない笑顔を見せ、勇気に手を振った。
「私たちだけじゃないぜ、軽音部みーんな居る」
美麗は自分の背後を指さした。
「──やっほー! 勇気さーん! 今日もよろしくねー!」
「ああ、桜。お互い全力で行こう」
軽音部ドラム 橘桜は、眠そうな目をそのままに飛び跳ねてはしゃいでいる。
「──ぉ、おはようございますっ勇気先輩! 結愛ちゃんも、おはようっ…! 今日はよろしくお願いします…!」
「うん、おはよう莉乃ちゃん! 頑張ろうねっ!」
軽音部ベース 相山梨乃は緊張に身を強張らせるが、しかし怖気付いてはいないらしい。
「皆もしかして…、俺達を待ってたのか?」
「──うん勇気くん、今日は全員の晴れ舞台でしょ? 皆で気合入れようと思って」
勇気の問いに、軽音部部長 宮田茜が応えた。
「登校から助走つけといたほうがアガるってね。ぜーんぶ美麗の提案、良いでしょ」
茜は言いながら美麗の頭を撫で回す。
「ぉわっ、ちょっと茜姉さん…!」
「ほら今の内、勇気くんも褒めなー?」
「素敵な考えだと思うよ美麗、仲間を大事に思ってくれてるんだな」
「ノるのかよ副会長!? ったく無駄に照れさすなよな…。──つーかそれより! 揃ったんなら行こうぜ! 向こうで最終調整もしなきゃだしさ」
一行は力強く呼応し、学校へ…否、決戦の地へと向かった。
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そして、劇場控室。
「──うっひゃー、客席凄いよみんなー、もういーっぱい。1年から3年までみーんな来てる!」
「えっ、も、もうそんなに!? …う……うぅ……」
「大丈夫だって梨乃、練習通りで最高だぜ。ミスしても私達がフォローするし、裏方の茜姉さんも、鶴城達だって居る。私達は一人じゃない」
「は……はいっ…!!」
梨乃は何とか応じるが、拳を震わせ、汗が頬を伝っている。
「大丈夫……私は大丈夫……きっと成功する……大丈夫…大丈夫……」
そして、心を失ったように平たく呟き始めた。
「…なぁ美麗、梨乃は…本当に平気なのか? 体調が悪そうとすら思うんだけど……」
「あぁー…、副会長は初めてだもんな梨乃とのライブ。梨乃は大丈夫だぜ、むしろいつもより調子良く見える」
「マジか」
「マジマジ。まっ、見てりゃ分かるって」
美麗は笑って、近くの椅子に腰掛けてくつろぎ始めた。
本番前、30分。控室は異様な空気に包まれている。緊張はするが、観客の居ないこの時間。ゆったりとした空間だが決してリラックスすることはなく、謎の浮遊感が漂うこの瞬間。
この日は特別な日だ。たった一時間程度、けれども全てがまるきり変わる。この世界で、星野勇気として果たすべき最後の仕事だ。
(これが終われば、俺は元の世界へ帰る。長い様で短かった……。──全てを乗せよう、俺の思い出も、記憶も、全て)
───カタッ……!─
そして、静かに、しかし力強く美麗が立ち上がる。
「──そろそろ時間だ」
呼応して、全員が地を踏みしめた。
「行こうぜ…皆ァ!」
「「応ッ!!」」
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舞台下、一行は最終確認を行う。上階では生徒たちのざわめきが微かに聞こえてくる。劇場は大きく観客も多い、その視線を一斉に向けられると考えれば、この緊張は恐怖と言っても大袈裟ではない。
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「──よし、皆オッケーかな? スタンバイ!」
茜の号令に従い。メンバーは昇降機に立つ。
(──フゥー……消灯後、まもなく……)
劇場の電気が消え、上階から漏れる生徒たちのざわめきも徐々に収まっていく。
…訪れたのは、完全な静寂。勇気の胸には鼓動音のみが響き、それはどんどん大きくなっていった。音は波のように空間を包み、酷い緊張をもたらす。
ただし、悪い緊張ではない。足音のように近付いてくるのだ、徐々に大きく、そしてはっきりと。勇気はその正体を突き止められないでいたが──
───グォン……─
昇降機が動き、メンバーを舞台上まで押し上げる。その音で、振動で、勇気は鼓動の意味を理解した。
これは、高揚だ!
───ズギャアアアァンッ!!─
炎とともに、鋭い音色が爆発する。美麗が奏でた一閃は、この場に居る全てを鷲掴んだ。
「聞こえているかよ、この音がッ!!」
美麗は叫んだ、心を乗せて。さらに…
「──見えているかよ、"オレ達"がァッ!!」
──続いて、梨乃が叫んだ。
相山 梨乃は目を見開いて、まるで別人のように豹変したのだ。しかし不思議なことでもないだろう、音楽とは、やはり昂るものだから。言う通り、梨乃は大丈夫なのだ。
「「さぁ、全身で聴きなァーッ!!」」
二人の咆哮と共に、軽音部は"走り出した"。
歌は自由だ、音も自由だ。音楽は生徒の意識を、学校の歴史さえ塗り替えようとしていた。
勢い強く、鋭く響く。それは圧倒し、けれど優しく包み込む。もう一人じゃない、寂しいのなら傍に居る。
皆の傍に、自由は燃えているのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・
音楽と炎、その芸術は劇場全てを駆け巡った。熱気は外まで届くだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・
「──これが…美麗の"音楽"……」
観客席、その最後列。生徒会長 天上美咲はその輝きに圧倒されていた。
全く知らない、心揺さぶられる感覚。これは彼女の…中藤美麗の"意志"だ。彼女は意志そのものを曲に込めてぶつけているのだ。
刺々しい、乱暴な曲。聞いていると頭が痛む、熱い曲。…美咲はこの曲が嫌いだ、今でもこれが良いものだとは到底思えない。けれど生徒たちは笑い、歓声を上げて楽しんでいる。
自分の感覚が、感情がどうであれ、皆は楽しんでいるのだ。"人々が高揚する姿"とは──それは確かに尊い姿ではないか。
そう思い、そして感じたとき。美咲の目から、一筋の涙が零れ落ちた。
「──私は…この光景を奪っていたのか……」
美咲は、拳を握り込む。己の無知を恨みながら、強く、強く──
───ぎゅっ─
無言で、誰かが美咲の拳に手を重ねた。
「恵……?」
生徒会 木崎恵は前を向いたまま、そして何も喋らずに美咲の手を握ったのだ。
その後悔は、一人で背負わせない。そう言いたげに。
「……ごめんなさい」
美咲は、その手を静かに握り返した。
・・・・・・・・・・・・・・・
ライブは炎とともに、更に盛り上がってみせる。歓声と熱気、覚悟と意志、その混沌は実に心地よいものだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・
「──行くぜッ、クライマックスだッ!! 『雨天の太陽』ッ!!」
ついに、最後の曲が始まった。
(……ははっ、困った頑張りすぎたか、指も身体もへとへとだ…。──だがやってやる、全力よりも全力だ! しっかりと奏できるッ!!)
勇気は心の中で叫んだ、それはきっと軽音部の皆と同じ思いだ。
この演奏は激励である、生徒皆の意志をこの音でまとめて引っ張り上げるのだ。
消えかけた炎は風によって燃え上がり、やがて嵐となる。皆、聞こえているか。その意志を、その炎を、どうか燃え上がらせてくれ!
───ズギャアアアァンッ!!─
……最後の音が、鳴らされた。
長いようで、一瞬の爆発だった。けれど、それこそが最も美しい姿なのだろう。
軽音部は息を切らしながら、永遠とも呼べる余韻に浸った。
──自由を、示せただろうか?
─パンッ…! パンッ…!─
やがて、一人の拍手が鳴り響く。
生徒会長 天上美咲は、微笑んで、軽音部を称えていた。
それを皮切りに、拍手と大歓声が劇場を包んだ。辺りは声で震え、地面は揺れる。
生徒達は、笑っていた。何か、とても大きなものから開放されたように。
「──皆、ありがとう。私達はもうどこへだって行ける」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
雨のような称賛が止んだ後、美麗は静かに語り始めた。
「本当に…この日を迎えられて良かったと思うぜ。皆のお陰だ」
美麗は深呼吸をして、言葉の準備をする。
「──で…あのさ。伝えたいことがあるんだ。…今日は全てに決着をつける日だからな、もう少し皆の時間をくれ」
美麗は目を閉じて再び深呼吸する。そして、その名を呼ぶのだ。
「生徒会長 天上美咲、そして木崎恵。そこに居るな? こっちに来て欲しい」
美麗は、美咲と恵を鋭く指さした。受けた二人は戸惑いながら舞台上へ上がる。
「…1年前は覚えてるか、皆。あの時生徒会は、私達から青春と…幸せを奪った。特に今の二年生は…その全てを失ったと言っていい。私は腕を折られたし、同じようなことをされた人の中には、まだ治ってなかったりもする」
美麗はマイクをスタンドから抜き、歩き始める。ゆっくりと足音を響かせながら、美咲に近付いていった。
「──もちろん許しはしねえ、私はお前が嫌いだ、殺したいほど憎んでる。…けど、話を聞きたい。…ここ最近お前が何を考えて何をしたいのか、私らは何も分かってねえんだ。さぁ、全部言ってみせろ。お前が抱えてるものを」
美麗は美咲にマイクを押し付ける。美咲は戸惑いながら受け取るが、やがて口を開く。
「…私は……」
観客たちの視線が美咲へ向いた。静かに、冷たく彼女を見つめ、言葉を待つ。
「……いいえ、今ここで何を言おうとも、…どう謝ろうとも、皆様を納得させられるとは思えません。……私達は、どうしようもなく私達のままなのですから」
美咲は顔を上げ、観客を、生徒たちを見る。生徒会として、守るべきだった者の姿を。
「──だから、まずは形を示します」
美咲はマイクを持つ腕を下げ、もう片方の腕を横に広げた。
──そしてその腕を、恵が掴む。
「……お願い、恵」
「ッ、待て!! 美咲さ──」
勇気は美咲の考えを悟り駆け出すが、間に合わない。
───メキッ…!! ゴキィッ…!!─
美咲の片腕と、そして恵は自らの片腕を強く折ったのだ。
「ぐッ…ぅ……!」
美咲はよろけ、顔を歪める。息を乱し、顔には汗が伝う。
「はぁ…っ……はぁ…っ……。くっ…ふふ……あぁ…私達はこんな痛みを…与えていたというのですか……? …なんて……愚かな……」
二人の姿に、生徒たちはざわめく。どう物事を捉えていたとしても、眼の前で行われたことにきっと思考を巡らせることだろう。
「お、おい何してんだ!?」
「美麗……私達は知りたかったのです。私達が、あなた達に何をしてしまったのか」
「だからって…! ここは裏社会とかじゃねえんだぞッ!! 未成年が見てんの考えろテメーは!!」
「ふふ…貴女も未成年でしょうに、優しすぎるわ美麗、これでも"足りない"って分かっているでしょう」
「…っ……」
美咲は痛みを踏み越えて、マイクを口元に寄せる。そして、生徒たちの姿を両の目で捉えた。
「お聞きください、皆さん。…私の本質は、今もなお何一つ変わっておりません。やはり心のどこかで、私の手で"善い場所へ導きたい"などと──汚れた支配欲が燻っています。これはどうしようもなく、真実なのです」
美咲は震える脚を前に踏み出して、舞台の中心に立つ。
「──ですが、今の生徒会は私達だけではありません、彼らはこんな私達を諌め、しかして信じ、別の道を示してくれました…」
美咲は、観客席に居る新藤小百合と、妹の天上真白を見る。そして、この場に居ない"星野勇気"に思いを馳せた。
「──私のことは許さないで下さい。……けれど、こんな私を救おうとしてくれた彼らは誠実で、特別心優しい方ばかりです。私はその恩に報い、そして皆様から奪った多くを、私自身の手で返したい。……もし皆様が、この償いを厭わないでいてくれるのなら、…私は生徒会長として、最後まで責任を全うしたいと思っています」
美咲はそこまで言うと一歩下がり、そして頭を深く下げる。
「……今まで本当にごめんなさい、みんな。私達は…大きな間違いを犯しました」
それと同時に、後ろの恵も頭を下げた。
会場には沈黙が走る。美咲と恵は、長く長くそうしていた。その姿を見て、生徒たちは何を思うだろうか。
「……以上です」
やがて二人は顔を上げ、後ろに下がった。その様子を静かに見ていた美麗は、軽く呼び止める。
「──待ちな。……せっかく呼んだんだ、お前も話すべきだぜ"親衛隊長"サマ?」
親衛隊長、そう呼ばれるのは一人しか居ない。木崎恵は足を止め、しかし不意を突かれたように視線をすべらせる。
美麗の意図を汲んでか、美咲は彼女にマイクを差し出した。
受け取った恵は、言葉の整理もできぬまま、舞台の中心へ歩く。生徒からの視線に突き刺されながら、ゆっくりと。
「その…、あー……、私は…」
そして取り敢えず話してみたが、言葉が出てこない様子だ。恵は頭を押さえてしばし考えると、やがて語り始める。
「──私はつくづく、自分のことを"悪人"だと思うわ、ここ最近それに気付かされてばかりよ。美咲と違って私は…迷っていなかったの、あの時の生徒会は「これも秩序のためだ」と葛藤を飲み込んでいたのに…私だけは違った。私だけは、ただ人を痛めつけるのを楽しんでいたの。……そう、楽しんでいた」
恵は折れた片腕を恨めしそうに見つめる。
「…まるで"化物"よね。気に入らないものを簡単に殴れる、誰かの大切なものを簡単に傷付けられる……、そしてそれが"楽しい"だなんて。そのせいで、生徒会に…美咲に一線を越えさせてしまった。──今でさえ、私はこの痛みに何も感じない。私は私自身の所業をあまり覚えていないし…あれだけ聞いた皆の悲鳴も怒りも、頭の中に残ってない。過ちも、償いも、私は頭で理解しているだけ。本心は…きっと違うの」
恵は、見つめた片腕を無理矢理握り込んだ。それは腕だけでなく全身に激痛が広がるだろうが、恵はそれでも心に何も響かないのだろう。
「許すとか許さないとか…そういう立場にも居ないわね。──だから、私はその裁きから逃げないわ。何が起きようと…受け入れる。それまでは、生徒会に粉骨砕身捧げるわ……以上よ」
言った後、恵は目を伏せて踵を返す。足早に舞台の中心から離れ、美咲の背後へ戻った。
「……お言葉ありがとう、生徒会」
美麗は静かに、ゆっくりと話し出す。
「今の話をどう受け止めるかは、皆次第だ。…私は迷ってる。奴らには夢を壊されたが、今ここに立てているのはある意味生徒会のおかげだからな。……だが確かなのは、天上美咲と木崎恵は、生徒会である前に一人の人間ってことだ。──お互いもう一度だけ考えてみようぜ? 生徒会じゃなく、女王と親衛隊長じゃなく、"天上美咲"と"木崎恵"を見た上でさ」
一連の言葉が生徒たちに届いたか、それは分からない。しかしどう思われようと、生徒会の姿は昔と少しだけ違う。今はそれだけで良いのだろう。
「……さて、話はこれで終わりだけど……。──これでエンディングってのもちょっと重いよな? 最後に一曲お届けしよう!」
───カッ!!─
美麗が指した先、ステージライトが一角を照らす。
「──どうもー、軽音部部長 宮田茜です。私今回裏方でさ、だからもう派手な演出とかは出ないんだけど…」
茜は前に歩きながら、慣れた手つきでギターを構える。
「──ま、聴いてってよ」
茜の姿を合図に、桜がスティックを構える。茜に着いて行けるドラマーは彼女だけだ。
「『朝焼け』」
最高のステージは、最高の演奏に彩られ、ここに閉幕した。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーー
演奏を終えた軽音部は舞台を後にし、控室へと戻る。
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「──ふぅ…皆お疲れ様!」
第一声、美麗は明るく笑った。
「ああ、最高だったな」
「へへっ、そっちこそ副会長。…ほんとにありがとな。正直、全部お前のお陰だよ。このステージも、生徒会長のことも」
「…美咲さんのことは俺じゃない、全部──」
「"全部この世界の星野勇気のおかげ"…って?」
「えっ、…まさか美麗も気付いてくれてたのか?」
「まあな、鶴城から聞いたってのもあるけど…昨日だったか一昨日だったか、突然色々なことを感じられるようになったんだ。今の私なら、お前の言う事全部分かるぜ」
「そうか…、あの時の調査は思ったより広く影響があったみたいだな。本当に良かった」
「ああ。……まあでもよ…、お前がこの世界の"星野勇気"とは別人っつっても、どっちにしろ私にとっての副会長ってのはお前なんだよな。正直言って元の副会長は噂だけしか印象ないし。ともかく称賛は素直に受け取ってくれよ、仲間からの思いってことでさ」
「……分かった。ありがとう美麗」
──「…ちょっと待ってごめんね二人共ー? 今しれっととんでもないこと喋ってなかった?」
ここで、会話を聞いていた桜が困惑した様子で突っ込む。
「勇気さんが別人……? って、そういえばこの前の勇気さん確かにそんなこと言ってたようなー…──って、なにこれ…! 私なんで今まで気付かなかったのー!? なんかすーっごい勢いで違和感が湧いて出てきたんだけどー!?」
「はは…何と言うか……、そうだな、この際全部説明しようか。話も伝わるようになったことだし」
・・・・・・・・・・・・・・・
勇気は、自分の置かれている状況全てを説明した。並行世界と、そして"星野勇気"のことを。
・・・・・・・・・・・・・・・
「──ふーん…だから勇気くんキーボード弾ける訳か。単純に別人だったって訳ね」
「えっ、茜ちゃんなんでそんな冷静なのー!? 梨乃もー!」
「そりゃあ私達は桜と違って今ここに居る勇気くんしかよく知らない訳だし…、まぁ並行世界云々はだいぶ驚いてるけど」
「そ、そっかー、確かに私、皆に勇気さんの話あんまりしてないじゃん…勇気さん生徒会だったしなぁ。──でもそれじゃあさー、勇気さん…あー、今此処に居る星野さん帰れなくて困ってるんじゃないのー?」
「ああ、それについては安心してくれ桜。元の世界に戻れる扉が見つかってな、週末にはもう帰る予定だ」
「えっ──週末!? そ、そんなに早く行っちまうのかよ副会長…!」
「ああ、そうだけど…」
「じゃあ、もう…会えなくなっちまうのか? …なんだよちょっと早すぎだぜ……私達一ヶ月も一緒に居られなかったじゃねえか、お前をお前だって認識出来たのも昨日今日の話だろ…! 尊康兄さんのことだって!」
「それは良いことだよ美麗、俺は元々この世界に居てはいけないんだ。…だから皆も俺のことは、ちょっとした夢だと思って忘れ──」
「ストップ。ごめん勇気くん、それは無理だよ」
「…茜?」
「勇気くんは美麗たちと一緒にステージに立ってくれた恩人だよ? たった一回でも忘れるわけないし、忘れたくもない」
「わ、私も…! そう、思います…勇気先輩との演奏……す、凄く楽しかったです…から……」
「……そうだねー、私も欲張りだからさー、私は星野さんとの思い出だって大事にしたいよー?」
「皆……」
「…そうだぜ副会長、そんな寂しいこと言うな。お前と過ごした思い出は消えねえ、だから……だからその時になったら、ちゃんと見送らせてくれよ。別れの言葉を言わせてくれ」
仲間たちは真剣な眼差しを勇気に向ける。
「……そうだな、ごめん。…ありがとう皆」
軽音部とのステージは、これで本当に終わった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ステージの熱気が冷めぬまま、生徒たちは朝を過ごした。その間様々なことを思案し、そしてあるいは結論付けただろう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
しばらく経って、昼休み。生徒会室。
生徒会の面々は集まって、雑多な業務をこなしている。勇気は"星野勇気"に引き継ぐ仕事をまとめていた。
「──そういえば小百合センパイ、女王サマ達は?」
「病院だよ。…しばらくは来られないんじゃないかな」
「そっか…全くあのヒト達、この大変なときになんてことしたんだか」
「あれもお二人の覚悟だったんだと思うよ」
「そう? …私には分かんないよ、あんなことしたってなんにも生まれないじゃん、女王サマの償いが遅くなるだけじゃないの?」
「私も、鶴城ちゃんにさんせいです。あんなにいたいことしなくても、みんなだったらきっと、分かってくれたとおもいます……」
「…でも二人とも、あの時2年の先輩方すっごく考え込んでたよ。会長達がどういう気持ちだったかは分からないけど…少なくとも2年の先輩方が二人の言葉に耳を傾けるきっかけにはなったと思う」
「……ふーん。まぁ確かに皆美麗みたいにブチギレてた訳だもんなぁ…、あの痛そうなのを見たかった人も居るかもね。──そうだ輝姉さん、輝姉さんは圧政の時大丈夫だったの?」
「えっ? …あぁ……えっとあんまり覚えてないや、興味なかったし。でもそうだな…たしかにあの時期は縛りが一気に増えて今までやってた写真部の活動はほとんど出来なくなったかな、部員みんな辞めちゃって私一人になったんだよね」
「うわぁ…圧政ってそんなとこまで……。──ん? でも去年って輝姉さん金賞取ってなかった?」
「? 別に"縛りが増えた"ってだけだったし、そこクリアすれば賞には出せるよ」
「さ、さすが輝姉さん…。2年でありながら特に不満持ってなかった訳だ……」
───こんこんっ!─
会話の途中、誰かが生徒会の扉を叩いた。来客だ。
「どうぞー」
勇気は少し声を張ってその人を招き入れる。間もなく、二人の女子生徒が入室してきた。
「し、失礼します副会長! 3-F 佐藤 在愛ですっ!」
「同じく…立川 颯」
二人の女子生徒は姿勢良く、勇気の前に立った。
「在愛に…颯か、どうしたんだ?」
「えっ、えっと私達! 生徒会に…入らさせて頂きたく、ま、参りましてございます! うす…!」
在愛と名乗った生徒は、緊張からか妙な言葉遣いでそう告げた。
「生徒会に?」
「あ、え、えーと、私たち元生徒会なんです。圧政の時に居て…、副会長が抜けさせてくれた、元生徒会。──それで、その……今日美咲と恵の姿を見て、ええと、も、戻ってきちゃったっていうか…」
在愛はばつが悪そうに口ごもった。そんな彼女を、颯と名乗った女子生徒が肘で小突く。
「こら在愛、しっかりする。つまり私達、手のひら返しに来たってわけ」
「ちょっと颯、言い方! ……えっとさ副会長、私達思ったんだよ。美咲に期待するばっかりで支えてもいなかったのに、勝手に失望して怖がって抜けたなんてそれも無責任だな…って。美咲が生徒会長の責任として色々なことを償おうとしているなら、私達もそれを背負うべきって…そんな感じ。私達は3年で、殆どが昔の美咲に助けられて、そして好きだったから」
「それに、恵のやつもね。あいつがまたなにかやらかしそうになったら、私達が殴ってでも殴られてでも止めるべきだと思った。…昔はそう出来なかったからさ、リベンジ…かなって」
二人の生徒は、それぞれの思いを勇気にぶつけてくれた。
「……そうか。在愛、颯、ありがとう。美咲さんと恵が帰って来たときは、ぜひ迎えてあげて欲しい。二人もきっと喜んでくれる筈だ」
在愛と颯は強く頷いた。
これは、美咲と恵の歩んできた道がもたらした結果なのだろう。過去の善は、いま悪に染まったとて消えることはない。きっとその筈なのだ。…逆もまた然りというものだが、少なくとも今はその時ではない。
「よし、じゃあ待っててくれ。入会届を──」
「──それならここにご用意しています、星野先輩」
「えっ、おぉ…ありがとう輝、流石だな。──それじゃあこれ、受け取ったら必須事項を記入して…昼頃にそこのポストか…生徒会の誰かに渡してくれ、美咲さんが戻ってくるまでに通しておくから」
「はい! ありがとうございます副会長!」
・・・・・・・・・・・・・・・
勇気は入会届を在愛と颯に手渡す。二人は揃って頭を下げ、共に去っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・
その後、生徒会室。
「──はぁ、びっくりした。女王サマにまだあんな人望があったとはね……」
「はは…鶴城ちゃんは1年だから、そう思うのも仕方ないかもね。昔の会長と恵先輩はまるでヒーローだったって聞いたことがあります、在愛先輩も颯先輩も、その時期に助けられた内の一人だったのかと…。ともすれば生徒会も、昔のような賑わいを取り戻せるかも知れませんね」
「ふーん。能力よし、人望よし…なおさら圧政ってのは不幸な暴走だったわけ? …美麗の親友的には結構フクザツな感じだけど……。あ゛ー、人間ってめんどくさーい」
鶴城は大きなため息を吐いて、机にへたり込む。
「──まぁどちらにせよ……これでやっと本当に、全部終わったのかな…。美麗は…安心して演奏できて……少しでも幸せで居てくれる…かな……」
鶴城は机に突っ伏したまま呟いた、いつもと違うその姿に一同は顔を見合わす。
「……うん、鶴城ちゃん。もうだいじょうぶだよ、きっとぜんぶ…だいじょうぶ」
真白は、慈しむように鶴城の頭を撫でた。
「──へへ、そっか…良かったね……美…麗………」
───とすっ─
そしてそのまま、鶴城は脱力した。
「……鶴城? 寝たのか……この昼時に、まさか昨日寝てなかったんじゃ──」
「──いえ星野先輩、寝たにしては妙です…。これ……鶴城ちゃん"倒れて"ますッ!」
「何ッ!?」
勇気は急いで立ち上がり、鶴城に駆け寄る。
「ッ……──酷い熱だ。鶴城起きろ! 聞こえてるか? 返事は出来るか!? 鶴城ッ!!」
返事は、なかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
「──ん……ぅあ…?」
「っ! 気が付いたか鶴城…良かったよ、本当に」
夕方、町中。鶴城は勇気の背で目を覚ました。
「──勇気…先輩……? そっか、私……」
「輝と病院には行ったが…命に別状なかったよ、自宅療養でいいらしい。…けどこうなるまで気付けなかったとは……不甲斐なかった、すまない」
「…いえ。こっちこそごめんなさい勇気先輩…。今まで隠してて……その、色々と」
「それについては別に良い、事情があるんだろ? 俺が気にするのは体調までだ、「ちゃんと休んでくれ」…それだけ」
「ははっ…なんですかその無理矢理な優しさ……、変ですよ」
「それはどうも」
……
「──あの、聞かないんですか? …なんで私を家まで送る羽目になってるのかって」
「それなら輝から聞いたよ、輝に手紙を渡してたんだってな。「もし自分が倒れた時は、必ず副会長と二人きりにして欲しい」って。──倒れることを想定出来るくらいなら休んで欲しいって小言が一つ。……後は、それが鶴城にとって必要なら協力するだけだ。それ以上を聞く必要はない」
「…口を開けばそんなのばっかり、甘えてる身で言うのもアレですけど先輩いつか騙されますよ?」
「はは……そうだな、気を付けないと」
「──あっ、そこです星野先輩。私の家……」
宇宮家に到着して、勇気は輝から受け取った鍵で玄関を開ける。そして背中に気を遣いながら、そこに足を踏み入れた。
勇気は声を張って住人に呼びかけるが返事はない。薄暗い廊下はひっそりとした孤独に満ちていた。
「ごめん鶴城、これだけは聞かせてくれ。…両親は?」
「……いま、宇宙です。私達が「行って大丈夫」だって勧めたんです。だから家だと姉さんと二人きり……いや姉さんがアレだからほぼ一人ですね」
「そうか……。──鶴城、部屋の前までは運ぶけど、ベッドへは自分で行けそうか?」
鶴城は問いを聞き、しばらく考えた後……。
「…無理です。寝かせてくれますか?」
「分かった」
勇気は鶴城の案内を受け、彼女の部屋に到達する。
「ん…? …っと、鍵がかかってるな。鍵はどこに?」
「あれ…えーと、鞄に入ってます。チェーンで繋がってるから多分分かるはず……」
「鞄──あった、これだな」
─カシャンッ─
勇気は鶴城の鞄から質素な鍵を見付け、扉を開けた。
「入るぞ、本当に良いか?」
「……どうぞ」
勇気は取っ手を掴み、ドアを引き開ける。
─ガチャッ……─
「──…これは……」
目に飛び込んできたのは、本と参考書の山だった。付箋まみれのそれらは本棚にぎっしり並んでおり、床にすら多く積まれている。そして机の上にはPCとタブレット端末が数機、様々な筆記用具と開きっぱなしのノート……。
それは、過剰なまでの"勉強机"だった。
「……寝かせるぞ」
勇気は部屋の内装には触れず、鶴城を優しくベッドに寝かせた。
「…ありがとうございます、先輩」
「じゃあ、俺は少し買い物に行ってくる。何か消化に良いものを作らないと…」
「あ──待ってください…!」
部屋を出ようとした勇気は、呼び止められて止まった。
「全く…本当にそっちから聞いてくれないんですね星野先輩。……まず話、聞いてくれますか。あなたをここに招いたのも…全部、この為なんです。それと途中で気になったことがあったら…"絶対に"質問して欲しいです」
「…分かった」
勇気は静かに頷いて、勧められた椅子に座った。
そして、鶴城は覚悟のもとに息を吐き、天井を見る。
「──先輩。私……、私って、天才なんかじゃないんです」
「……ああ」
「知ってた…って顔ですね」
「自力じゃない。恵が鶴城との試合で感づいていたよ、あなたの拳は"努力"の拳だって」
「はは……凄いなあの人。──ええ、私はずっと、努力と勉強だけです。…そうしていないと、輝姉さんに追い付けやしませんから。輝姉さんの隣に立つために、……輝姉さんの妹として自分自身に胸を張って生きるために…ひたすら勉強するしかないんです」
愛と、執念。それが宇宮鶴城なのだろう。
「……けど…」
鶴城は目を閉じて、冷たく息を吐く。
「──やっぱり…辛いだけですよこんなの、……もう…やめたい……」
それは、一直線の弱音だった。
2人はしばらく沈黙を感じて、そのままじっとしていた。言葉を頭の中で反響させ、じっくりと答えのない答えを考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「──星野先輩」
後に、鶴城が静かに息を漏らした。
「この世界に来てくれて、ありがとうございます。……全部あなたのおかげです。──本当に、全部」
勇気は静かに、微笑んで頷く。そして懐から、鶴城に一枚の写真を差し出した。それは鶴城から預かっていた、思い出の写真。
「これ、返すよ」
「…写真……ありがとうございます、今なら…受け取れます」
鶴城は写真を手にし、そして胸に抱いた。
「鶴城、大事な秘密を話してくれてありがとう」
「はい…私こそ、聞いてくれてありがとうございます。凄くすっきりした気分です、──これでまた、勉強に励めそうです」
「…続けるんだな、"天才"を」
「もちろんそうします、これも私ですから。…でも、人への態度はそろそろ改めないとかな……。美麗が前を向けたんだから、これ以上悪者やる必要もない」
「…そこもわざとだったんだな」
「はは…ええまぁ。問題児として生徒会の目を集めて他の人が動きやすくなるように…っていうのが狙いでした、元々は美麗一人の為でしたけど。……正直キツかったです、続けてる内に本当に行儀悪くなる感じがするんですよあれ。演技とは言え、口から酷い言葉が出てるのは変わらないし…」
「生徒会に入ったのは?」
「あー…そこは私情ですね。輝姉さんの変化に"星野勇気"が関わってると知ったとき、私は"星野勇気"を探らなきゃいけなくなりました。この時すでに"星野勇気"は入れ替わってましたけどね。──で、私はあなたを観察して決めました。"この人になら賭けても良い"って。私はあなたに美麗を託すことにして、私自身は美麗を拒絶してその土壌を整えようとしました。あの時は…自分がどうなっても美麗が幸せならそれでいいと思ってたんです。…でも間違ってましたね、今は違います」
「……頭動かしっぱなしじゃないか。今までよく頑張ってきたな…凄いことだと思う」
「そうでもないですよ、…後半はほとんどを星野先輩に頼った杜撰な計画です。色んな人に迷惑かけたし……美麗にもしっかり怒られました。最終的に悪くない結果で終われたのは奇跡みたいな幸運でしたね……──ともかく、これで私の抱えてたもの全部を話せたかな…。聞いてくれてありがとうございます星野先輩、そして私達の前に現れてくれたのがあなたで良かった」
「こちらこそ鶴城。話してくれてありがとう」
鶴城がこうして話すのも、今の彼だからこそだろう。もうすぐ別れを告げる存在だからこそ、鶴城は全てをさらけ出せたのだ。それは確かに友情と言える。
「──そういえば星野先輩って知ってるんですよね? 輝姉さんがストーカーだって」
「そうだな、知ってる。…でも、この世界の"星野勇気"は知らないはずだ」
「お゛っと…、難しい状況だな……。まぁでも、それに関しては任せてください。輝姉さんが卒業するまでには、何とか改心させますから」
「ああ、そう願ってる」
「ふふ…──まぁ今は、体が全然動きませんけどね。全く、美麗のライブが終わってちょっと安心したらこれですよ」
鶴城は始末が悪そうに微笑んだ。
「はは…本当にお疲れ様鶴城、──じゃあ少し寝ててくれ、俺は買い物に行ってくる。あぁそれと、キッチン借りるぞ」
「はい、いってらっしゃい星野先輩」
「もう一度言うけど、ゆっくり休んでくれよ。安静にな」
勇気はそう言い残して退室した。
……
「全く過保護なんだからあの人は…。──ちゃんと話せたよ、姉さん」
鶴城は思い出の写真を目に、感傷に浸る。なにかとてつもない大仕事を終えた気分だった。
写真に映るのは、幼い頃の自分と最愛の姉。ついこの間まで消えてしまったと思っていた姉。だが今は、清々しい気持ちでその姿を見られるだろう。
「ふふ…懐かしいなあ……。──そういえば、輝姉さんが"星野勇気"と出会ったのも、時期的にはこれくらいって言ってたっけ……、はぁ…覚えてないよ、あの時の男の子なん──て……」
そこまで言葉を溢して、鶴城は硬直した。
「──ちょっと待って、これ何年前だ? 私たちが何歳の時だ…!?」
鶴城は部屋の中で、誰もいないのに叫んだ。気付いてしまったのだろう、もっとも深刻な可能性に。勇気の知らない真実を知っているものだけが辿り着ける真相に。
「──……可能性はある、"あってしまう"…!! ……も、もしそうなら姉さんは…私は……ど、どうしよう…──姉さん、私はどうしたら良い……? あ…嗚呼……ッ!」
鶴城は、部屋の中で一人。渦巻く葛藤に囚われた。




